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ヴェス

ヴェス

#お話 #創作小説#慰めの言葉 #励ましの言葉
枯れシダの横たわるその人を見て、私は少し苛ついているんだ。
人々は固定された概念、もとい彼らにとっての常識を「疑うことなかれ」「考えるな」と当たり前のように……。
ふざけた常識だ。
常識外のことをするだけで、オマエたちはあの人を既知外と認識し蔑むのだ?
心や体が壊れているから「使い物にならないな」と蔑むのか?
……だろうな。
オマエたちの一般常識のままでは良くなるわけがない。
はぁ。
枯れシダのように横たわるそこの人。
これは捻じ曲げられた事実であるが、捻じ曲げ過ぎて真実が露呈された、一般常識という認知だ。
ある賢者が人の為にしたことを悪だと言ったように。
ある研究者の作品を剽窃だと言い、その存在ごと消してしまったように。

オマエたちにまだ知恵はあるか。
オマエたちにまだ思慮はあるか。
オマエたちにまだヒトはあるか?

そこの人。私は逃げないし、オマエを追うものもここには来れない。大丈夫だ。
私はただの一般人だ、大した力もなく、人の目に怯えながらも、彼のようにとはいかないが、言葉を繋げられるようになってるはずだ。
こういったことはあまりしっかりと言えないが。
オマエを慰めるために、励ますために言葉を繋げてみせよう。

まだここはオマエの分岐。
オマエはまだ成功の確率下にいる。
慌てるな。
今見えているものは幻影だ。
そこから自らの意思で分岐を選ぶといい。
私は答えることはできないからな。
他人の答えは、また再びここに戻してしまうからだ。
オマエがここの、失敗の確率下に戻らないように、オマエの意思を確立し、進め。
数多の分岐を選び、進み、成功の確率下へ。

オマエの頭上に降る雨は、清廉の雨だ。
枷となるものを打ち、開放する力をもつ。
私ができるのはここまで。

枷は解かれた。
自らの足で、自らの意思で。
分岐を進んでいくといい。
オマエが心から信頼できる人と出会えることを祈っておこう。


どうかオマエの先が晴れやかであることを。
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