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遁世

遁世

#読了
完全版 ブラック・マシン・ミュージック
ディスコ、ハウス、デトロイト・テクノ 上巻
野田努/河出文庫

ニューヨークのゲイ(クィア)カルチャーから生まれたディスコミュージックを起点として
アンダーグラウンドダンスミュージックの歴史を当時のクラブカルチャーの空気感や擾乱、当事者アーティストの証言などをたっぷりと踏まえて一望していきます

ディスコミュージックの先進性は非言語的であり政治性を排し無心に音楽と戯れる快楽主義的なスタンスにあった
ディスコはやがて黒人文化とも密接に結びつきマイノリティを包摂しアンダーグラウンドにおいて勢力を大きく拡大していくこととなります

そうしたスタンスは反体制的なロックやパンクスだけでなく黒人の政治団体などからも「キルディスコ」などと強い非難を浴びることとなります

読んでいて発見があったのはタイトルにも示されている通り本作のアンダーグラウンドカルチャーの歴史にヒップホップが含まれていないということ

ここには黒人文化あるいはマイノリティのコインの表裏(優劣ではなく)がある様です
最近はその限りではない様ですがヒップホップの精神にはマチズモ的、男根主義的な思想が強く流れております

ディスコやその歴史に連なるハウスやテクノはそうしたアイデンティティや帰属意識に拘束されず、より平等で開かれた自由への希求を精神に宿しているのです

シカゴ・ハウスの洗礼を受けたデリック・メイはこう語ります

「おれがアンダーグラウンドに未来をかんじたのは、ヒップホップのような生存競争ではない、何か別の可能性をそこに見たからなんだ(268)」

「スマートなひととゲスなひと。金持ちと貧乏。白人と有色人種。弱者と強者。そこにはつねに嫉妬や足の引っ張り合いがある…
多くの黒人の向上心は髪の毛をストレートにしたり、白人社会に迎合することでしか果たせないものとなっていたし、あるいはまったくその逆で白人と敵対することでしか自分を保てなくなってしまうひともいた。
それでは、つねに誰かが悲しむことになるんだ。おれはそんな世界は望まない(280)」

彼の創ったStrings of Lifeは荒廃したデトロイトやシカゴを超えてイギリスの白人層だけでなくラテン系の移民たちの心にまで届いていきます
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