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空栗鼠
『火星からの来訪者』スタニスワフ・レム
特に印象に残った二作の感想。
『火星からの来訪者』
粗削りながらも、すでに後の『ソラリス』に通じるテーマ──人間にとって“他者”とは何か──が浮かび上がっていたのが印象的だった。作中、謎めいた異星生命体と人類の科学者たちが接触を試みるが、そこに成立したのは「対話」ではなく、どこまでも一方的な「観測」だったように思う。特に、教授が体験する“火星のヴィジョン”の場面は、人間側の希望的観測の象徴に感じられた。リオンが何かを伝えようとしたのではなく、教授自身が「意味を見出したい」という欲望から幻を見たのではないか。この作品を通じて、レムは早くも「知性とは、他者と本当に理解し合えるのか?」という問いを投げかけている。その問いは、今なお新しく、静かな余韻を残す。
『異質』
スタニスワフ・レムの短編『異質』は、少年が「永久機関を発明した」と物理学者の家を訪ねるという、ユーモラスな導入から始まる。しかし、物語は思いがけない方向へ進み、ラストは唖然とさせられる。
作中では「プランク定数」や「シュレーディンガー方程式」などが語られ、科学の理論がいかに不確実性と隣り合わせであるかが示唆される。確率的に“ありえない”はずの出来事が、ほんの僅かな可能性のもとで起こり得る——その問いかけが、後の『ソラリス』や『無敵』に通じる「人間には理解できない存在」や「科学の限界」というレムの核心的テーマに直結している。短くも鋭いこの作品は、知性への皮肉と想像力への畏怖が詰まった、まさに“プロト・レム”的一編。

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