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夏実
#リバイバル #ナツの映画レビュー
2000年公開『リトルダンサー』
大人の都合に翻弄されながらも夢を貫く
少年の姿を描いたヒューマンドラマ。
80年代半ば、舞台はイギリスの炭鉱町。
炭鉱で働く父と兄を持つ少年ビリーは
家事や祖母の介護の合間にボクシングを
習っているが身が入らずにいる。
あるときバレエ教室がジムの一角を使う。
その練習の様子に目をとめるビリー。
ふとしたきっかけでレッスンに参加し…。
男の子がバレエを習うことへの偏見は
いまだ根強いと思われるが、80年代半ばは
いわんやと言えるだろう。今でも米国では
『フィギュアスケートをしていると、
ゲイなのかと言われる』と五輪金を得た
男子シングル選手が以前発言し、その後に
ゲイ差別意識はないと謝罪する騒動すら
あったほど。その時代にバレリーナの夢を
貫く強さはどれほどの思いとなったか。
実際に劇中にはゲイの友人も登場するが
最後まで暖かい友情を育んでいる。
この映画はラストシーンで見事な舞を見せる
アダム・クーパーの伝記ではないが、
きっと彼も差別や偏見と闘いながら研鑽を
積んできたのだろう。
さらに主人公は炭鉱労働者といういわゆる
“ガテン系”の社会に身を置く家族に囲まれ、
女性的とされる趣味や価値観を受け入れる
ハードルがさらに高くなっている。
中盤、ボクシングもバレエもせずに家で
大人しくしていろと言われるビリー。
ヤングケアラーの問題も絡み合って、
その夢が潰えるかのように見えてしまう。
しかしついに息子のためにストライキを
脱退しようとする父。俺たちに未来はない、
でも息子には可能性があるかもしれない…
夢を叶えてやりたいと男泣きする。
何度も壁にぶつかりながら細い手を伸ばし
遂に夢のチケットを掴み取るビリー。
ピュアに人生を切り開く様は、いくつに
なっても心を揺さぶる。
アダム・クーパーが魅せる『白鳥の湖』は
マシュー・ボーン演出により大胆な新解釈を
加え、男性同士の悲恋として再構築された
物語となっている。ゲイの友人と変わらぬ
友情関係にあるビリーからの“答え”に見え、
この絶妙な配役は心憎い。
2024年夏にエルトン・ジョン作曲による
ミュージカルが来日公演し、本作も再上映。
ファンはぜひどちらもチェックしたい。

コメント
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りり
みました!こーゆー系すきです!
ラクティ
このレビューを読んでいるだけで既になにかこみ上げるものがありますよ[大泣き]… 愚かな偏見により無駄に虐げられたり足を引っ張られたり、そんな逆境に立ち向かい見事に打ち勝つ様も、それを為す上で重要な誰かが誰かを想う行動の美しさと強さも、人生をやっていくための指標になりますね。
aima
映画のストーリーの深さも興味深いですが、夏実さんの文章力にまず敬服しますm(_ _)m