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大介

大介

#詩的散文
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『風と光による変奏曲』


第一章 〜遠い水面〜

彼女の眠りは、遠い水面のようだった。
そこへは、誰の声も届かぬまま、日々が静かに過ぎていった。
夜ごと、
彼女の奥深くにひそむ裂け目が、
音もなく、痛みを育てていた。

私は、それを傍らで、ただ見守っていた。


第二章 〜光のなかの彼女〜

初秋の風は、まだ遠くにあった。
窓の外には、風ひとつない夕暮れがひろがっていた。
薄紅の光が、彼女の頬に、そっと触れていた。
その光のなかで、彼女は、何か遠いものを見ていた。

それは、私には触れえぬ場所であった。


第三章 〜無音の譜面〜

私は、
彼女の横顔を見つめながら、
その痛みのかたちを、思い描こうとしていた。
けれど、それは誰にも読めぬ譜面であり、
彼女の中にだけ響く、無音の旋律だった。


第四章 〜残された部屋〜

やがて、
その痛みは、彼女を越えて、
静かに、空へと昇っていった。
私は、残された部屋のなかで、
夕映えの雲の切れ間に、
彼女の歌声を探していた。


第五章 〜季節の巡りと忘却〜

そして季節は、
彼女の淡い気配を抱えながら、静かに巡っていった。  
いまはもう、風も光も、
彼女の名を知らなかった。


第六章 〜風のなかの旋律〜

彼女の、
見えない痛みも、
すでに、ここにはない。

けれど、
初秋の草むらに立つと、
痛みを孕んだ風が、私のなかを通りすぎてゆく。

風が通りすぎるたび、
私のなかで、彼女の旋律が音もなく揺れていた。

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最早、すっかり堀辰雄だな…(-ω-)
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