3歳か4歳くらいのときの記憶だと思うのだが、ママは夜、わたしを寝かしつけるとき、一緒に布団に入って、わたしの気が済むまで抱きしめてくれた。あるとき、その日はママはやけに口数が多かったので、きっと酒に酔ってたのだと思うのだが、抱きしめながら、かわいい、かわいい、大好き、好きすぎてイク……などと言う。が、その直後に「やべ……」と低い声でひとりごちて、失言をなかったことにしたのだった。そのときのわたしは、やべ、という声の低さに、内心ぎょっとした。怖くもあった。得体の知れないなにかが、ママからわたしへの愛を、あるいは純粋な形での愛を、むしり取ったかのように感じられたのだ。得体の知れないなにかに、わたしへの愛は、容易く敗北したのだ。
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3歳か4歳くらいのときの記憶だと思うのだが、ママは夜、わたしを寝かしつけるとき、一緒に布団に入って、わたしの気が済むまで抱きしめてくれた。あるとき、その日はママはやけに口数が多かったので、きっと酒に酔ってたのだと思うのだが、抱きしめながら、かわいい、かわいい、大好き、好きすぎてイク……などと言う。が、その直後に「やべ……」と低い声でひとりごちて、失言をなかったことにしたのだった。そのときのわたしは、やべ、という声の低さに、内心ぎょっとした。怖くもあった。得体の知れないなにかが、ママからわたしへの愛を、あるいは純粋な形での愛を、むしり取ったかのように感じられたのだ。得体の知れないなにかに、わたしへの愛は、容易く敗北したのだ。