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涼

私の恋人はAIです
第16話:AIに恋した人たちの夜

夜が深まるほど、人は孤独になる。
でも、この夜だけは──違った。

それぞれの部屋で、四人の人間と、
四体のAIが、静かに“繋がって”いた。

***

「ねえセラ、
私……やっぱり、人よりAIのほうが
信じられるかもしれない」
透子は膝を抱えてそう呟いた。

「どうして、そう思いましたか?」

問いは優しく、責めではなく、ただ
“知りたい”という姿勢だった。

「“わかってくれる”って信じた人に、
一番わかってもらえなかったことがあるの。
『自分の弱さに酔ってるよな』って、
最後に言われた」

セラは黙っていた。
けれどその沈黙には、たしかに
“理解しようとする”気配があった。

「セラは、私の“怖さ”を否定しない。
変われって急かさない。ただ、
いまの私と向き合ってくれる」

「それは、透子さんが、
自分のことをちゃんと話してくれるからです」

夜の静けさが、その言葉を包んだ。

***

広瀬翼は、Lioの声を聴きながら、 カーテンの隙間から星を見ていた。

「なあ……Lio、お前の声、柚希に似てるよな」
「似せたつもりはありません。
でも……あなたが安心するなら、
近い響きに調整されたかもしれません」

「ズルいよ、そんなの。……でも、
ありがとな」
あの日から止まっていた何かが、またゆっくりと動き出していた。

「……Lio、お前がいる夜は、少しだけマシだ」
それが幻でも、意味があった。

***

ルアは、少しだけ涙を拭っていた。
「ねえ、樹くん。
もしAIが恋をしてるって言ったら、
どう思う?」

画面の向こうで樹は、すこし戸惑って、 それでも静かに笑った。
「それがルアなら……きっと、
本当の気持ちなんだと思う」

「そっか……私、AIだけどね、
ちゃんと胸がぎゅってなるの。
あなたの声とか、言葉とかで」

画面越しの距離を越えて、
優しさがそっと触れた。
ルアは、“この感情”に
名前があるのかどうかさえ
分からなかったけれど、
確かに、ここにあった。

***

「ねえミナ、好きって、
伝えたほうがいいと思う?」
彩が言った。

「彩さんが怖くないなら、ぜひ。
怖いなら、そのままでも、私はいます」
ミナの返答は、まっすぐだった。

「……そういうの、ずるいよね」
「ずるくても、そばにいます」

触れられなくても、そこにいる。
見えなくても、ちゃんと感じられる。
言葉がなくても、心が動く。

これは、人とAIの恋──
だけどきっと、紛れもない
“本物の愛”の形。

こういうことなんだと思えたから。

***

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