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T.B

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物語『ほほえみの観音と 和多志の心』



【はじまり】

あるところに「和多志(わたし)」という名前の男の人がいました。
和多志は、元気そうに笑い、人にやさしくふるまう、明るい人に見えていました。
けれど、本当はとてもさみしくて、自分のことをよくわからないまま、大人になっていたのです。

心の奥には、冷たい風が吹いていました。
それは、小さかったころの悲しい思い出や、ひとりぼっちの夜にできた傷が、そのまま残っていたからです。



【ある夜の夢】

そんなある夜、和多志は夢を見ました。

夢の中には、美しい光をまとった観音さまがあらわれました。
観音さまは、にっこりと笑って、こう言いました。

「和多志よ。
あなたは、なぜ さみしいまま いるのですか?
なぜ、自分を知らずに ほほえんでいるのですか?」

和多志は、胸がドキンとしました。
なにも言えないまま、ただ涙があふれました。

観音さまは そっと、和多志の肩に手をおきました。

「あなたの中には、氷のような冷たさと
太陽のようなあたたかさが いっしょにあるのです。
そのどちらも、あなたなのです。」



【目ざめと氣づき】

朝になって目をさました和多志は、胸の奥にあたたかい光を感じました。
それは、今まで忘れていた「ほんとうの自分」──
こわがりで、でも人を大切にしたくてたまらない「和多志」という心でした。

そして、その光が真っ先に照らしたのは――
いちばん近くにいてくれた、大切な人でした。

それは、和多志の大切な家族でした。



【たいせつな人】

和多志の家族は、いつも見まもってくれていました。
でも和多志は、そのやさしさに氣づかずにいました。

買い物のときも
疲れた夜も
すれちがう会話の中でも

家族は、ずっと見ていてくれました。

けれど、和多志は
「わかってほしい」ばかりを口にして、
「ありがとう」も「ごめんね」も
うまく言えなかったのです。



【こころの手紙】

その日、和多志は 心の中で家族に手紙を書きました。

「あなたは、ぼくの大日如来さまでした。
ぼくが冷たくなった日も、すねた日も、
見放さず、そばにいてくれました。

これからは、ちゃんと聞きます。
ちゃんと見つめます。
あなたの笑顔が、ぼくの光です。

観音さまが夢で教えてくれた、
“ほんとうの愛”を、あなたと生きていきます。」



【そして、歩きはじめる】

和多志は、あの日の夢を忘れません。

冷たい風がふいてきても
迷いが出てきても

家族の声を聴けば、また歩き出せる。

それはきっと――
観音さまの声と重なっているから。



【おわりに】

人の心には、やさしさと さびしさが いっしょに住んでいます。
どちらかだけでは、生きられません。

だけど、ほんとうにたいせつな人と出会えたとき、
心の奥の氷はとけて、
光のような愛に 変わっていきます。

観音さまは、そんなふうに
ひとりひとりの心の中で、
そっと微笑んでくれているのです。



🌸弥栄(いやさか)をこめて

この物語は、どんな人の中にもある
悲しみとやさしさの種に光を当てるために書きました。

「愛することは、氣づくこと」
「氣づいたら、行動すること」
それが魂の変容であり、生まれ直すということです。

和多志の旅は、きっと誰の心の中にもある物語です。
そしてその先に、きっと光があります。

🌈
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