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ゆま
「光紫くんあそぼー」
「光紫くんこっちおいで」
「光紫くんだいすき」
俺の友人だったはずのクラスメイトは2つ年下の光紫にすっかり夢中になった。
「恋紫くんは行かない?」
確かに声を掛けてくれる者はいたが、ずっと光紫と比べられていた俺は、素直になれなかった。
「行かない。それより俺と教室で遊ぼうよ」
今思えば立派な嫉妬だ。きっと嫌な言い方もしていただろう。
当然の事ながら友人は、そんな俺に首をかしげて、遊びたいなら一緒に来ればいいと告げ、いそいそと光紫のもとへ駆けていく。光紫を囲む友人の笑顔。手を振りながらいかにも楽しそうに息を弾ませるその後ろ姿。
こどもたちが集まるところには必ず先生もいて、共に遊びに興じている。
俺はひとりぼっち取り残された気分だった。
その頃だった。
光紫なんかいなくなればいい。
どす黒い感情が強く芽吹きはじめたのは。
そして、その日はやってきた。
両親から買ってもらったつみき。
俺がずっと大切にしてきた宝物で光紫は当たり前のように遊ぶ。
「俺のだぞ」
そう告げても光紫はつみきで車を作ることに夢中で、俺の話など聞こえていなかった。おもちゃ箱の側には母が買い与えた光紫のつみきがあるというのに。
俺はしぶしぶ、自分の宝物を光紫にあずけ、光紫のつみきで遊び始める。するとそのことに気づいた母が金切り声をあげ、俺がもっていたつみきを取り上げた。
「これは光紫の!」
「だって俺のつみき…光紫が」
「お兄ちゃんでしょ。どうして恋紫は貸してあげられないの、どうしてそんな子なの」
母の言葉の凄まじい圧で、何かが音を立てて崩れていくのがわかった。立ち尽くしたまま、涙を零す俺を、母は抱き締めてくれない。
呆れたように息をつくと、光紫の方へ目を向け笑顔を作った。
「車作ったの?光紫はすごいねえ」
「このブーでねお兄ちゃんとママとパパとおでかけする」
「あらそうなの?嬉しいなぁ、光紫は優しいね」
子どもながらに光紫との差に惨めさを感じた。
光紫と恋紫。ひらがなひとつしか変わらないのに、先に生まれたからという理由でどうしてこんな差別を受けなければならないのだろう。
怒り。悲しみ。寂しさ。悔しさ。朽ち果てていく寸での心。それさえ手放してしまったら俺に何が残るだろう。#いぬびと #兄弟差 #小説 #独り言 #小さな幸せ

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