共感で繋がるSNS
GRAVITY(グラビティ) SNS

投稿

わんわん

わんわん

連載小説です。1話からどうぞ。
ーーーーーーーーーーーーーー

第9話

「悪いが、一週間アルバイトは休んでくれ」

マスターは再びパソコンを触りながら言った。

「 豊島組の事務所だけどな、門は防犯カメラだらけだ。おそらくお前はバッチリ写ってる。この店に豊島組の誰かが来るかもしれないし、あの奥さんが来るかもしれない。……何かあった時にお前を守りきれん」

「 で、でも店は開けるんですか? マスターは大丈夫なんですか…?」

マスターはニヤリと笑うと、丸いお腹を叩いた。

「こう見えて、色々修羅場はくぐってるんだぞ?」

俺はこうして謹慎をくらった。
紅血龍の死骸は俺が引き取った。
マスターに聞いたら、可燃ごみに出すと答えたからだ。

店を出た。
日は傾き、街はオレンジ色に染まっていた。
俺は自転車にまたがると、カゴに紅血龍の入った袋を入れ、この辺りで一番大きい河へ向かった。
もし紅血龍が自由な河を望んで水槽を飛び出したのだとしたら、最後くらいはそこで眠らせてあげたい、と思ったのだ。

空が紫色になった頃、俺は広い川辺に降りた。
カエルが数匹、競い合うように鳴いていた。
俺は静かに流れる水に近づくと、笹舟のようにゆっくりと紅血龍の亡き骸を放った。
水面に浮かんだまま流れていく紅血龍は、一度だけ夕日を反射して輝いた。
それは、紅血龍のエラから吐き出された金魚のウロコの輝きと同じ光だった。

その日から俺は昼は大学に通い、夜は家で暇を持て余す事になった。
マスターに「あまり出歩くな」と言われたからだ。
毎日、BARが閉店する時間を見計らってマスターに電話をした。
豊島組の連中も、あの人もまだ店に来ていないようだった……。

ーーアルバイトを休んで5日目の朝。

俺は部屋でパンをかじりながらネットニュースを見ていた。
そのニュースを始めて読んだ時、まあ良くある話だ、と思った。
しかし引っかかるものを感じて、もう一度読み返した。
身体中にぞわぞわと鳥肌が立った。

『港の倉庫で暴力団組長の射殺遺体が発見される。暴力団同士の抗争か。
遺体で発見されたのは山崎会系豊島組の組長、豊島信雄……』

#紅血龍と香水
#連載小説
GRAVITY

グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 - 第1楽章 Allegro molto moderato

グリーク,Nobuyuki Tsujii

GRAVITY
GRAVITY21
話題の投稿をみつける
関連検索ワード

連載小説です。1話からどうぞ。