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わんわん
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第8話
俺の後に出勤したマスターは、床で乾燥している紅血龍を見て固まった。
俺は椅子に上がり、水槽のフタを確認した。
重りの乗ったフタは、ずれて水に落ちかかっている。
紅血龍の顎の先には、深いキズがついていた。
おそらく誰もいない店内で、何回も何回もジャンプして、傷つきながら重いフタをずらしていったのだろう。
……紅血龍は、この水槽の外に自由に泳ぎ回れる河が広がっている夢を見たのだろうか?
それとも、あの暗い水槽に帰りたかったのだろうか……?
マスターがぽつりと言った。
「 この事をあの人が知ったら……」
俺の頭にその人の顔が浮かんだ。
少し寂しげな表情で『この子を大切にしてね……』と言った小さな声も。
俺は、両手を強く握りしめた。
「どれだけ悲しむか……!」
しかしマスターは、珍しく声を荒げた。
「違う! 俺が言ってるのは豊島組長の事だ! 相手は暴力団だぞ……! もし本当にいらない魚だったとしても、脅しの材料にする、そういう連中だ! ……金だけでは済まないかもしれない!」
マスターはバックヤードへ飛び込み、パソコンを起動させた。
「俺な、この4日間で紅血龍の事をずいぶん色んな人に話してしまった。それにHPのトップにデカデカと写真まで載せてしまったんだ!」
急いでHPを編集するマスターの背中を見ながら、俺はようやく自分のしたことの重大さに気がついた。
俺はマスターの背中に深々と頭を下げた。
「俺、本当に自分の事しか考えていませんでした! あの人の家に誘われたときも、あの人の事より、自分の欲望の事しか考えてなかった! そして、勝手に貰ってきた紅血龍は死んでしまった! 店にも迷惑をかけて……、ごめんなさい!」
俺は本当に子供だ。誰に謝るべきなのかも分からない。
……そんな自分が情けなくて、目に涙が浮かんだ。
マスターは体ごと振り向くと、優しい声を出した。
「まず、紅血龍が死んだのは俺の責任だ。ずっとフタに鍵をつけないままにしていたのは俺だからな」
マスターは俺の顔を上げさせた。
そこには柔らかい微笑みがあった。
「そして、今、お前が苦しいのは、若さが原因だ。お前のせいじゃない」
#紅血龍と香水
#連載小説

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