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あやめ(小説の化け物
《Part .1》〈手記:Clair Cian Wayariry〉クレア・シアン・ウェアリリー
私は魔女だった。魔女と形容することが最も真実だと言い、大昔の人は嫌悪した。
私は恋をした。
私は不老不死に近い生き物であって、あくまで食事が必要なことも、孤独に心が蝕まれる性質もなにも周囲の人間と変わらなかった。
だから、長く生きていた私は恋をした。
孤独に堪えられなかったワケではない、まして、遊びや浮ついた何かの理由で相手を作ったわけではない。真剣だった。
恋をしたのはナチス将校だった。
史実から見ても大量殺戮者と名高いヒトラーを、「Heil Hitler.(ヒトラー万歳)」と毎日のように崇め敬礼し、当たり前に従順な姿勢を持ちそして、精神まで服従している男だった。
もちろん私は当時からヒトラーの精神の全貌を知って嫌悪していたし、そういった人種の末路も見抜いていた。そんなヒトラーを崇めている恋人の様子を見るのは、惨めで苦痛だった。
それでも、深夜まで毎日の残務処理を終えて私の待つ家に決まって帰宅する恋人のことを愛おしく感じていた。
恋人の名は「ジス・ゲイツ」、模範的なドイツ人。
ゲイツとはヒトラーが首相に就任した二年後の1935年から、交際していたから、ポーランド侵攻の1939年までの4年間があったから、裕福な職である将校で誉高い彼との日々も長くなっていた。
ドイツがポーランド侵攻に成功して、そこから更にヒトラーの支持率が上がった。それに影響されて、特にヒトラーの演説での他責(他国にドイツ困窮の理由を責める)の論法に影響されてどんどん世間が物騒になっていった。
最初のポーランド侵攻ではカレは上司に気に入られていて前線の参加をしなかった。もちろん、前線で毎日戦っているたくさんの兵士のことを考えると思うことがなくはなかった。それでも、毎日帰ってくる恋人のゲイツを迎えることが幸せで仕方がなかった。本当に、温かい食事を作って待つという日常が楽しかったからだ。
「魔女」はこの頃、完全に姿を潜めていた。
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