『ロリータ』幼少期の初恋を忘れられない男を描いた、全編キモいのに、なぜか読まずにいられないという謎のキモキモ文学作品。この作品を“ただのキモい話”で終わらせず、偉大な文学へと昇華させたのは、著者ウラジミール・ナボコフ氏の繊細な観察力と語彙からなる、詩のように美しい語彙の連なりである。1ページごとに現れる美しい比喩とリズム。目の前に情景が立ち上がるような描写。それが、“読者の倫理感を揺さぶる主人公”の告白に、なぜか没入させてしまう。不快なのに、読まずにはいられない。反感と賛美がせめぎ合う、文学作品界の魔物。