その日の勝ち負けは、集まったギャラリーの反応によって決まることになっていました。旅人は、風にも光にもよく似合う、可憐な装いの人物でした。北風は、ほんの一瞬、いたずらを思いついた子どものように風向きを変え、太陽は、まっすぐに、誠実に、世界を照らしました。北風がしたのは、ただひとつ。視線がふと迷い込み、思わず追いかけてしまうような、小さな“余白”を残しただけ。太陽は、旅人の上着を脱がせることに成功しました。それは確かな出来事であり、誰の目にも、はっきりと見える結果でした。けれど――その日の勝敗を決めたのは、目に映るものではありませんでした。見えなかったもの。胸の奥に、そっと芽吹いた想像力。それが、北風に一票を投じたのです。その風は、北風と呼ばれていました。けれど、人々の胸に残ったのは、春の気配だったのだ。