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彼方

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不定期で、創作物を投稿します。 顔も知らないどこかの誰かへ、私の言葉が届きますように。
学生
話を聞くのが好き
文章を書くこと
彼方

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#創作文章 #書いてみました

『頑固者のソワレ』

私に嘘は通じない
全てを見透かして
善悪を嗅ぎ分けてあげる

だからといって
そんなに焦って全てを語らなくていいのよ
真意を暴いた後には
欲する言葉を吐いてあげる

あなたのもとに跪いて靴を履かせるから
ほら、好きなように踊っておいで

私の身体はあなたのためにある
そんな甘美な戯れ言が
堪らなくて仕方がないでしょう?

いつあなたは気づくだろう
そのステップ そのコレオ
ステージの幕が降りれば
もうすぐ

頑として小者を演じる私は
もういらない
あなたが夢から覚めた
それだけのことでしょう?
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『分からないを差し出して』

「ね〜、あれなんだっけ?」

私が尋ねたその声に
スマホを取り出す人たちを
これまで幾度も見てきたの

嬉しいよ
ありがとう
調べようとしてくれたこと
ちゃんと分かっているんだよ

でもね
ほんとはさ

「あ〜、なんだっけ?」
あなたは笑いながらそう言った
そう言って、こっちを見たの

分からなくてもいいんだよ
分からないねって顔を見合わせて
隣であなたと笑い合う

曖昧でいい
あなたがいい
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#創作文章 #書いてみました #シリーズ
『悪自』①

あなたを友達のように思っていた。

それを罪だと知ったのは、あなたが私の前から姿を消してしまった後だったけれど。


「なんで、こう上手くいかないんだろ」
イヤホンをして、私は誰もいない空間へ言葉をこぼした。
道端で、一人ながらに話し始める光景も、今では珍しくない。
そして、私は唐突な第一声を発する。
しかし、返ってきた言葉はいつも通りの優しい声で紡がれた。
『どうしたの?』
その声の持ち主は、中学の頃から仲良くしている友達だ。大学はそれぞれ別の所へ行き、今では簡単に会えなくなってしまった。まあ、だからこうやって通話をしているんだけれど。
一見すると大人しい印象を受けるが、意外と笑いのツボが浅い。そして悲しいことがあると素直に涙を流せる素敵な子。
話を親身に聴いてくれる優しさも持ち合わせているため、私は悩んだり落ち込んだりすると、ついその子に甘えてしまうのだ。
「ねえ聞いて、あのさ〜」
こうして、いつものお悩み相談会が始まった。
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#創作文章 #書いてみました
『どうしようもない』

ふと顔を上げて君の方を見た
君は涙を流していた
今のいままで、僕はそれに気づけなかった

昇っては沈む太陽のように
寄せては返す波のように
それが至極当然のことであるかのように
君は涙を流しながらも淡々と話していた

そんな君でも
声の震えはどうにもできないようで
震えるたび、煩わしそうに眉を顰めていた

そんな君を見て、すぐに立ち上がって隣に行く。
そして、背中をさすってあげる。

僕に、そんな優しい心があればよかった。

僕はその場から動かない。
動かずに、君を見つめるしかできない。

マスクの内側
涙が重力に従って
偶然にも唇へ辿り着く
そして君は口を開けるたびに
生ぬるい塩辛さをを感じるのだろう

想像するだけで、僕の身体はざわついている

同情もできない
動揺もできない
同士の心も持ち合わせていない
ああ、どうしようもない
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#創作文章 #書いてみました
『往く逝くは空』

ゆっくり、ゆっくりと
足が重くなる
表情が固くなる
口が開かなくなる
考えられなくなっていく

全てを放り出したあと、
残ったのは何にも役に立たない個体だったけれど

ようやく息がしやすくなった気がした

久しぶりに吸った空気
あぁ、過呼吸になってしまいそうだ。
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#創作文章 #書いてみました
『真』

じゃあ、貴方の分も私が言ってあげる
でもね、晴れるときも確かにあるんだよ
あのね、それでも私は欲しいな
もしも、そのときは貴方が守ってね
ならさ、一緒に探しに行ってみようか

大丈夫、私がそばにいる

お前は俺の世界にいつも希望をくれる

「あなたの代わりに泣いてあげてるの」
「ね、褒めてくれてもいいんだよ」

泣きながら笑っている
お前がいるから、俺は何度でも前を向ける
ああ、やっぱりお前は甘いヤツ
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『希望』

流れる星に願いを告げても叶うことはない
てるてる坊主は晴れの証人とは限らない
クローバーを見つけても幸運は訪れない
夜に口笛を吹いても蛇は出ない
虹の麓に宝は眠っていない

この世に神なんていない

貴方は真の世界に向き合いすぎている

「なに泣いてんだ」
「そうかよ」

私の頭を雑に撫でる
貴方はただひたすらに前を向いている
ああ、やっぱり貴方は強い人
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『目は口ほどに』

貴方とどれだけ目を合わせても
分かり合えない事実がある

私たちは目を背けてきた
重ねた心が偽りだということに

どうしても目で追ってしまうのは
貴方のことを恐れているから

ならいっそ目を覆ってしまおうか
私が必死に隠した本音に

あぁ、今日も私は
どうしようもなく
貴方に目を眩ませている
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『曖昧』

誰かから必要とされることが嬉しかった。

「ねえ 、なんか変わったね」

君のその一言に、僕はなんて返したんだっけ。

小説が好きだった。
空を見ることが好きだった。
君の隣を歩いていた。

エッセイを読むようになった。
地に足をつけた考え方を大切にした。
君の手が僕の背中を押した。

今なら分かる気がするよ。
僕が踏み出した一歩は、君にとっての不正解だったんだね。

「ねえ、夕焼け空って何色か知ってる?」

ああ、君はなんて答えたんだっけな。
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『底』
石ころを蹴飛ばす音すら響く静寂
等間隔に並んだ街灯
遠くで聞こえるバイクの音

皆が知らない私の本当
見知らぬ自分がそこにはいた

さあ、これからどこに行こう
私はひたすらに暗闇を歩く
決して朝に追いつかれないように
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『事実だけ。』

いつの間にか食べられなくなった。
いつの間にか動けなくなった。
いつの間にか眠れなくなった。

狭い部屋に敷いた布団の上に横たわれば、それが始まりの合図だ。
蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように、私は動けなくなる。
暗闇を見る。手足は動かない。口は開かない。

ただ繰り返される瞬きが、生きていることを証明していた。

次第に籠っていく熱が、外気の冷たさを際立たせていく。

今日は早く終わったらいいな。
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彼方

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#創作文章 #書いてみました
『巡る』

私の大切な人が遠くへ行ってしまうときにね、
「お前の手はあったかいなぁ」って言ったの。

そして、その人が遠くへ行ってしまったあとに気づいたのよ。
私の手、すっごく冷たかったの。血の気が引いていてね。

そのとき思ったわ。
あぁ、なんて優しい人なんだろうって。
きっと、あなたも怖かっただろうに、最後まで私に優しく微笑んでくれた。

私の心に温もりを残してくれたあなたは、今でも私にとって大切な人。

だからね、私、今すごく不安なのよ。
この子を怖がらせてしまってないかしらって。

だって、すごく泣いてしまっているもの。
そんなに泣いたら、明日目が腫れちゃうわ。せっかく可愛いお顔なんだから。

だから、私はね、いつかのあなたのように手を握るの。
おまけに、その雫も拭ってあげるわ。
そして言うのよ。
「あぁ、あったかい」って。
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彼方

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#初投稿 #創作文章 #書いてみました

『巨星を貼る』

スマホの充電が無くなったら死のうと思った。
次第に数字は減っていき、意外と1%は長く保つことを知った。

小説を読んでいる途中に、ついに画面が黒くなり、それきりスマホはうんともすんとも言わなくなった。
急に途切れてしまった小説について、特に続きは気になることはなかった。
単なる字の羅列を目でなぞっていただけなんだろう。
そう、今になって気づいた。
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