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寝る前に読みたいお話展

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そう𖤣𖥧𖥣。

そう𖤣𖥧𖥣。

欠けても愛しいおさら【書き直し】

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夜の台所で、
お気に入りのお皿を洗っていた。

つるんと指がすべって、
白いお皿が床に落ちる。

カラン、と音がして、
ひとつぶんだけ、かけてしまった。

あああ……って思ったけど、
ふしぎと、そこまで悲しくはなかった。

何度も使って、何度も洗って、
いっぱい思い出をのせてきたからだろうか。

その小さな欠けは、
なぜか「よくここまで一緒にいたね」って
言ってくれてるようにも思えた。

テーブルに戻すと、
かけたところだけ光って見えた。

まるで、まちがえて咲いた花みたいに。

だから今日は、
そのお皿に、あたたかいスープをそっとのせた。

欠けたままでも、
ちゃんと使える。

欠けたからこそ、
ちょっとだけ、愛おしい。

#寝る前に読みたいお話
#そうの思考整理
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そう𖤣𖥧𖥣。

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『よるのポケット』


ねえ、しってる?

夜になると、見えないポケットができるんだ。

おへその下、ちょっと奥のほう。
触れないけれど、たしかにある場所。

“よるのポケット”っていうんだよ。


そこにはね、
今日のことが、こっそり入っていくの。


言いそびれた「ありがとう」
がまんしちゃった「やだ」
ほんとは怖かったけど、強がって笑ったあの瞬間。


やさしくなれなかった日。
なにをしても上手くいかなかった午後。

その全部が、
しずかに、まあるく、
ポケットに落ちていく。


だから夜って、
ちょっとだけ胸がきゅうってなるのかもしれない。


でも大丈夫。

よるのポケットは、
「ダメなもの」をしまう場所じゃない。

“今のままのきみ”を、
そのまま受けとめてくれる場所。

くしゃくしゃのまま、
折りたたまれた気持ちたちが、
そこで静かに息をしてる。

 

君が寝るころには、
ポケットはすこしふくらんでいて、

「つらかったね」も

「うれしかったね」も

なにもかもが、そこにいる。

#そうの思考整理
#つづく
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夜の川は

何も聞かず
何も急がず
ただ静かに、光を揺らしていた

この世界には

音のないやさしさが
ちゃんとある

あなたが気づかなくても
あなたが眠ったあとでも

#おやすみの話
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――ねえ、気づいてる?

おとなたちも、
そのポケットに気づいてることがあるんだよ。

でも、あえて言わない。

「言わなくても、わかることもある」って、
知ってるから。


もしきみが話したくなったら、
そのときはちゃんと、聞いてくれる。

でも、話さなくても
ちゃんと見守ってくれる。

それがね、
“だいじに思ってる”ってことなんだ。


そしてね――
あしたになると、
ポケットの中は少し変わってる。

重たかった気持ちが、
かるい羽になってたり。

ごちゃごちゃのまま入れた思いが、
ちいさな手紙になってたり。


きっと、ねむってる間に
心の奥で、何かが折りなおしてくれてるんだ。


だから、今夜はそのままでいい。
ぎゅうっとふくらんだポケットのまま、
やわらかい毛布にくるまって、
ただ、目をとじて。

 

大丈夫。

ポケットは、きみの味方。
おとなは、そっととなり。

 

おやすみ。
ポケットも、今夜は一緒に眠ります。

 

――あしたの朝、
すこしだけ軽くなってるポケットを、
きみが笑ってそっと撫でられますように。

#そうの思考整理
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『行きたい場所が、見つからない夜に』

ーーー

行きたいところなんて、ないんだよな

そう思う日がある。
未来が、ぼんやりしてる。

どこに向かえばいいのか分からなくなる。

でも、それは悪いことじゃない。
霧がかかるのは、山道を歩く人なら当たり前のこと。

そんなときは、少し歩くのをやめてもいい。
無理に探さず、まずは自分に問いかけてみよう。

たとえば――

最近、何かを見て笑ったのはいつだろう?
誰かの言葉で、少しでも心が動いたことは?
子どもの頃に好きだったことって、なんだっけ?

答えがすぐに出なくてもいい。

こうして問いを立てること自体が、もう“動き”だから。

止まってるようで、内側ではちゃんと、心の地図を描いてる。

行き先が見つからないなら、方向じゃなく“気配”から始めてもいい。

「ちょっとだけ心地いいほう」

「なんか気になるほう」

「思い出せないけど、気になる言葉が浮かんだ方向」

それだけでも、選んでみていい。

その先で、ふいに“行きたい場所”が見えてくる日もある。

だから、今日の夜はひとつだけ

「どこに行きたい?」じゃなくて、
「何をしてみたい?」でもなくて、

ただ静かにこう尋ねてみよう。


「いま、少しだけ呼ばれている気がする方は?」


僕の場合は冷蔵庫だと思う🍙


#そうの思考整理


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『楽しいことは、未来の道標』

目標があると、人は歩ける。

たとえそれが小さなこと――明日、あれを食べたいとか、ここへ行きたいとか。

そんな“たのしいこと”でも、それはちゃんと道になる。

たとえば人生を山道にたとえてみよう。
でこぼこで、登ったと思えば滑り落ちて、道が見えなくなることだってある。

それでも先に“行きたい場所”があれば、足は動く。
つまずいたら、歩き方を変えればいい。
重たい荷物をおろしてもいいし、時には思いきって寄り道したってかまわない。

飛んでもいい。
止まって星を見上げてもいい。

人生に正解のルートはなくて、ただ一歩ずつ、自分のかたちで登っていくしかないんだ。

その一歩の先に、“たのしみ”があると思えること。
それだけで、不思議と少し元気になる。

明日が、見えない真っ暗じゃなくなる。

だから、眠る前に――

たのしいことを考えてみても、いいと思う。
それは甘えじゃなくて、ちゃんとした「登る理由」になる。

そしてまた、明日を登っていけるかもね。

#そうの思考整理
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【おさら】

洗いものの途中で
お気に入りのお皿が、静かに欠けた。

ちょっとショックで、
そして、少し笑った。

カラン、って音がして、
三日月みたいなかけらがひとつ。

たぶん、
ずっと使ってたからこそ、
その欠け方も、悪くなかった。

テーブルに戻したら、
割れたけど、味のある素敵なお皿になってた。
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『第四の王 ― ○○汁』

はじまりは塩だった。

人が最初に手にした【力】
腐敗を防ぎ、血と汗を舐め、命の味を決める白き結晶。

それを操った初代の王は、塩蔵と乾物の時代を築いた。

次に現れたのは火。

焼き、煮て、炒め、揚げる。
熱はうま味を呼び、国境を越えて伝播する。
火の王は、鉄の王冠を戴き、厨房の覇者と謳われた。

三番目の王は脂。

肉汁、バター、クリーム、マヨネーズ。
それはすべてを滑らせ、すべてを病ませ、そして人を虜にする。
魅惑と破滅の双子を宿す、第三の支配者。

そして。
第四の王は――名を持たなかった。

だが、人々は恐れを込めてこう呼んだ。

“味噌汁”

ただの汁、ではなかった。

それは、無限の引力を秘めた沈黙。

出汁という深淵。
具という侵略。
味噌という錬成。

味噌汁は、時を問わず現れた。

朝には温かく、夜には沁みる。
弱き者には癒しを、
強き者には膝をつかせた。

餓えた者を迎え、疲れた者に再起を与える。

だが、支配とは優しさではない。
それは“依存”という形で進行する。

やがて世界は気づく。
なにもかも、味噌汁を中心に回っていたことを。

パンの国すら、彼を模した“スープ”をつくり、
ラーメンすら、彼の出汁を真似て膝を屈した。

食卓の端に座しながら、
すべてを制していた者。

それが、第四の王――味噌汁である。

そして僕はさっき
その魔王に、ネギを散らし、豆腐を沈め、

熱々のまま――

おいしくいただきました。

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