

一次創作のイラストや小説をメインに(イラスト小説の子や世界を題材にした音楽等を作るはおk!)みてみてする場所です!
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楽しく創作しようぜ!

歌を口ずさむ男
「歩き方」
白い煙が空の水色と混ざり合って消えた。
再び舞った煙は独特な少し苦いかおりと共に、遠く見える山よりも遥かに遠く見える入道雲の輪郭をぼやけさせた。
「兄ちゃん、盆帰りかい?」
煙の出所のおっちゃんが口を開いた。
「うっす。岩手の遠野の方に」
俺はフィリップモリスの箱を指でなぞり、取り出したタバコに火をつける。
「そうか。どっからきたんだ、兄ちゃんは」
「神奈川の方からっす。長いドライブっすよほんとに」
おっちゃんは俺に視線をチラリと寄越した。
「そらまた遠いところから来たな。金もバカにならんだろう」
溜めた煙を肺の奥に押しやり、一つ煙と一緒に息を吐く。
「まったくですよ。大体1万とちょいっすね。毎年こっちに帰ってくる時にゃ、財布との相談事が止まらんっすわ」
「そこまでして帰ってくるもんなのかね、盆ってのは。20代にゃそれなりにキツイ出費だろうに」
俺は少し驚いてみた。
「よく俺が20代ってわかりましたね」
「若ぇもんがよく言うよ。俺らみたいなおっさんと兄ちゃんたちじゃすぐ見分けがつくからな。」
驚いてみたことに関しては見透かされていたようだ。
「盆になったら親のもとに帰る、か。独り立ちしてこのかた、帰省なんざしたことなかったなぁ、そういや。」
「親はどこに住んでるんすか?」
おっちゃんは吸い込んだ煙を一拍肺に溜めて、一気に吐き出した。
「おふくろが青森の方に住んどった」
「青森っすか」
「今はもうおてんとさまのところにいっちまったがな。五年前くらいだったか」
「…そら申し訳ないこと聞きましたわ」
おっちゃんと俺は二人して深く煙を吐いた。
少しの沈黙が流れたのちに口を開いたのはおっちゃんだった。
「親孝行なんざてんでしてこなかったが、逝かれちまうと思うところはあったな。兄ちゃんみたいな盆帰りもしたことはなかったしな。ってこれはさっき言ったか」
そう言ったおっちゃんの口角は心なしか少し上がって見えた。
「人はことあるごとに未来を見たがる。俺も昔はそうだった。だがな、親が死んで気が変わった。」
おっちゃんは緩やかな手つきで灰皿に灰を落とす。
「人はみんな死ぬ。だから未来なんざ見たって仕方がねえってな結局は行き着く先は同じなんだ。俺だって数年後には干からびてそこらへんで伸びてるかもしれねぇ」
「んなこと言って、まだだいぶ先の話になりそうっすけどね」
俺は少しニヤッとして答えた。
おっちゃんは笑った。
「ハッ、まだわからねぇぞ?なんなら兄ちゃんも数年後には伸びてたりしてな。…だがまあ、最近になって昔親父に言われた言葉がわかった気がする」
おっちゃんは煙草に口をつけ、吸い切っていることに気づくと少し顔をしかめ、新しい煙草を取り出した。
「まあ人としては当たり前だがな。他人様に迷惑をかけなきゃいい、やりたいことを全力でやれ、ってな。最近まで俺はやりたいことがなんなのかわからなかったが、やっと見つけられたんだ」
そう言っておっちゃんは左手を振ってみせた。その薬指についてるのは銀のリングだった。
「女の子っすか?」
「ああ、そろそろ結婚する予定だ」
「そりゃめでたいじゃないっすか。てこたぁ、親に報告しにでも行くんすか?これから」
おっちゃんはニカっと笑った。
「ああ、親父とお袋に礼を言うついでにな。面と向かって言えなかったことだけが心残りだが、俺は確かに親父の言った通りのやりたいことを見つけた」
俺は偶然会った若者にここまで話すおっちゃんが物珍しく見えた。普通はない。絶対にない。だが今おっちゃんと話しているこの現実は本物なのだ。
人生というのはどこで何と、誰と出会うか本当にわからない。
「感動的な墓参りになりそうじゃないっすか」
そろそろ俺の煙草も火が消える。フィリップモリスはそもそも持ちがいい方ではない。煙草を吸い切るということは、喫煙所での話の終わりを指す。
心惜しいところではあるが仕方ない。こいつはフィリップモリスの中でもちょっと重い黒箱だから、二本目を吸うと喉がイガイガしてしまう。
「感動的か、確かにな。葬式の日にしか顔を出さなかった愚息が五年ぶりに帰ってくるわけだしな」
「親なら大歓迎っすよ。俺は親になったことないんで知らないっすけど」
ニヤッとした俺を横目で見ながらおっちゃんもニヤッとする。男二人で独特な雰囲気を醸し出しているが、俺にとっては心地いい。
とか思っている間に俺の煙草の火が消えた。
「ほな、吸い切ったんで俺は戻りますわ」
「おう、安全運転で行くんだぞ」
「おっちゃんの方こそ、事故らんといてくださいよ。親が上から泣いてまうんで、雨降られたら困るっすからね」
俺は喫煙所から出て空を見た。空は綺麗な水色をしてるくせに、アスファルトが照り返す太陽の暑さは俺の肌を焼いた。
喫煙所から出る時、おっちゃんはは笑っていた。
「誰と出会うかわからんもんだなぁ、ほんま。」
独り言が口から漏れた。
空の奥に幼い子供の顔が透けて見える。
あの子ははどうやら、一人で道を選ぶ力を手に入れたようだ。
ふとそんなことが頭に浮かんで消えた。遠くで微かに、ありがとうと聞こえた気がした。うっすら空に浮かんだあの顔は、見覚えがあるようでいまいちピンと来なかった。

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少しまだ設定が終わっていないので終わり次第また投稿させていただきます!
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