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おっちょこバイクの星

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日記

十月八日、午後三時ごろ。僕は犀川のほとりで、秋という実に曖昧なテーマを相手に、コスモスへカメラを向けていた。

五十枚ほど撮ったところで、成果より先に疲労が現れた。手応えがない。そう認めるのは癪だったので、僕は「今日は光が悪かった」と、光のせいにしながら家路についた。

帰宅しても、撮った画像を現像する気にはなれなかった。テレビをつけ、番組を見ているのか時間を捨てているのか、自分でも判然としないままソファに沈んだ。

どうにも消化不良だった。

ぼんやりしているうち、不意に思い出した。今日は流星群ではなかったか。星空を背にコスモスを撮れば、少なくとも昼間よりは物語になる。運がよければ、流れ星まで写り込むかもしれない。



コスモスといえば夢の平スキー場だ。朝方には霧も下りる。星空、コスモス、朝霧。並べてみると、名作の材料はもう揃っているように思えた。

僕はスマートフォンを取り出し、AIに翌日の夜明け前のコンディションを尋ねた。

返ってきた答えは、霧の発生する可能性が高く、夢の平スキー場での撮影には最適、というものだった。

思った通りだ。人は、自分の思いつきを肯定してくれる相手を信用しがちである。たとえそれがAIでも。僕はすぐに準備を整え、ソリオで富山へ向かった。



午後七時ごろ。本命は夜明け前だから、まだ早い。そこでクロスランドおやべに立ち寄り、タワーと星空の共演に挑んだ。予想はしていたが、タワーは遠慮というものを知らないほど明るく、星はことごとく存在感を奪われた。

とはいえ、これは前座だ。失敗しても傷は浅い。僕は気楽にタワーを撮り続けた。

午後八時ごろに切り上げ、コンビニで補給を済ませてから、夢の平へ向かった。

途中、小動物が闇から飛び出してきた。僕は急ブレーキを踏み、どうにか衝突を免れた。それからは、必要以上に慎重になった。山道の暗がりすべてが、次の飛び出し候補に見えた。

やがて夢の平の駐車場に到着した。そして、僕は愕然とした。入場口が閉ざされていたのである。

そういえば、AIに撮影条件は聞いたが、入場できるかどうかは聞いていない。僕の確認不足である。理屈ではわかっていたが、感情は理屈ほど行儀がよくない。「入場口、夜間は閉まっていたぞ」するとAIは即座に答えた。「申し訳ありません。ご指摘の通り、夢の平スキー場は午前九時まで閉鎖中です」その腰の低さが、かえって鼻についた。

九時では朝霧など晴れている。夜空でもない。諦めて帰るしかないか。

そう思いながら、僕はスマートフォンで「霧・夜空」と検索した。すると、雲海に囲まれた巨大な鳥居の写真が現れた。知っている。弥彦神社の大鳥居だ。夜明け前に撮れば、幻想的な一枚になるに違いない。この時点で、旅の目的がコスモスだったことを、僕はきれいに忘れていた。

しかしテーマは秋だ。朝霧もまた秋らしい。そう考えれば、これは脱線ではなく発展である。言い訳は、早い段階で用意しておくに限る。



僕は再びAIを開き、弥彦村の明朝のコンディションを尋ねた。

答えは、夢の平のときと同じだった。「最適です」。その一言が、今度こそ僕を正しい場所へ導くように思えた。

僕は検索画像を示して撮影場所を尋ね、そこまでのナビゲーションも任せた。そして、示されたルートのまま弥彦村へ向かった。



午前一時ごろ、現地付近に到着した。撮影場所へ向かうのは午前四時と決め、それまで麓の風呂屋に宿を取った。

午前四時。僕は撮影場所へ向けて出発した。道は濃い霧に覆われ、視界は悪い。撮影には願ってもない条件だが、運転には願い下げの条件である。昨夜の小動物を思い出し、僕は恐る恐るアクセルを踏んだ。

午前四時四十五分、山頂レストランのパノラマ展望台に到着した。眼下は一面の霧。さらに奥には、黒い山影が浮かんでいる。アルプス山脈だろうか。

肝心の大鳥居は、まだ見えない。霧が少しずつ下がれば、やがて姿を現すのだろう。

真っ暗な山中では、ときおり獣らしき物音がした。怖くないと言えば嘘になる。それでも、恐怖より期待のほうがわずかに勝っていた。

時間が進むにつれ、世界は黒から白へ、ゆっくりと輪郭を取り戻していった。

それでも大鳥居は見えない。星空が消えるほうが先になりそうだった。ならば、雲海に包まれた鳥居へ朝日が差す瞬間を撮ればいい。計画の変更を敗北と呼ばないのが、趣味を長く続けるコツである。

……おかしい。まだ見えない。霧は少し晴れてきた。なのに、鳥居らしき影はどこにもない。僕は目を凝らした。ん?

そこでようやく、決定的な事実に気づいた。眼下に広がっているのは山間の街ではない。海だ。日本海だ。そして奥の黒い影は、アルプス山脈などではなく、佐渡島だった。

やられた。大鳥居は山の反対側にある。僕は機材をソリオへ投げ込むように片づけ、山を下り始めた。反対側へ登り直す時間はない。「この場所、反対側じゃないか」僕はAIに打ち込んだ。

AIは答えた。「大変申し訳ございません。その通りです。パノラマ展望台は日本海を望む——」説明は続いていたが、もう読む気にはなれなかった。

ふざけるな。画像の撮影場所を聞いた結果が、山の反対側では取り返しがつかない。空はもう明るい。僕は計画をさらに変更し、麓から霧の中の風景を撮ることにした。

大急ぎでダウンヒル。ナビに二十分と表示された道を、僕は七分で下った。土屋圭市のAE86より速かった——と、そのときの僕は本気で思っていた。もちろん、誰にも証明はできない。

AIは「今回は長時間の移動と貴重なお時間を無駄にしてしまい、申し訳ございませんでした」と謝った。やはり、その腰の低さが鼻についた。

結局、僕は麓まで下り、霧にも雲海にも包まれていない、ごく普通の大鳥居と神社を撮った。それから蕎麦を食べて帰った。コスモスを撮るために家を出た旅の結末としては、ずいぶん遠くまで来たものだと思う。

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アイ🐔🦑

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久々のバイク。暗くなると寒い
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ごりらひでおう

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