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『花彩命の庭』
— 色を失った姉と、色を拾い集める弟の季節 —
姉の真帆が突然仕事を辞め、部屋に閉じこもってしまったのは、
梅雨が明けて、夏の光が痛いほど強くなった頃だった。
弟の航平からすると、姉は誰よりも強くて明るい存在のはずだった。
なのに、その光がある日を境にふっと消えた。
電球が切れたように、音もなく。
姉は語らなかった。
何があったのか、なぜ仕事を辞めたのか、
なぜ朝に起きられなくなったのか。
ただ小さく、「何も色が見えなくなったの」とだけ呟いた。
“色”。
真帆は昔から、世界を色で表す癖があった。
人の気分を「向日葵色」とか「深い藍の午後みたい」とか言うし、
天気を「機嫌の悪い緑色」と形容したりもした。
航平にはよく分からなかったが、
姉にとって色は“心の温度”のようなものなのだと理解していた。
そんな姉が「色が見えない」と言う。
それは、心がどこかへ落ちてしまった証のように思えた。
医者に行くよう促しても、真帆は首を振った。
代わりに、昔話をひとつだけした。
「子どもの頃、庭で遊んだよね。
あの家の裏にあった、やけにいろんな花が咲いてた場所」
航平は覚えていた。
――祖母の家の裏にあった、小さな花畑。
正式な庭というには雑草が多く、
“森の端に色が溜まった場所”みたいだった。
祖母はあそこを「花彩命の庭」と呼んでいた。
「ねえ航平、もう一度……行けるかな」
その声は、まるで助けを求める子どものように弱かった。
航平は、夏休みを使って姉を祖母の家へ連れて行くことにした。
車を走らせる間、真帆はほとんど窓の外ばかり見ていた。
表情は乏しい。
けれど故郷の看板が近づくにつれ、
ほんのかすかに、呼吸が深くなっているのが分かった。
祖母の家に着いたのは午後。
蝉の声が濃く降り注ぎ、空気に湿った温度がまとわりつく。
庭は手入れされないまま、草が背丈を伸ばしていた。
それでも、奥へ進むと――
かつての花畑が、半ば朽ちながらも形を残していた。
ひょろりと伸びた茎。
色褪せた花弁。
倒れた柵。
それなのに、不思議と空気だけは柔らかく澄んでいた。
真帆はしゃがみこみ、土を撫でた。
「ここ……こんなに小さかったんだ」
その声には、懐かしさと痛みが入り混じっていた。
「昔は、ぜんぶがきれいな色で満ちてた。
朝露の音も、風の匂いも、ぜんぶ見えるみたいに感じてたのに。
今は……何ひとつ、色にならない」
航平は返す言葉がなかった。
無力さばかりが胸に広がる。
でも、そのとき母が言っていた言葉を思い出した。
「真帆は、色で人を感じる子。
だから色が見えなくなったら、世界が嘘みたいに感じるんだと思う」
航平は黙って、庭の端に立っていた。
ただ姉を見ていた。
すると――姉が声を漏らした。
「……航平。そこ、すこしだけ、色がある」
航平が立つ草の根本。
小さな花がひとつだけ、陽を浴びて揺れていた。
名前も分からない、雑草にも見える花。
だが、真帆にはその色が見えたらしい。
「淡い黄色……すごく薄いけど、確かに色がある」
その言葉だけで、航平は胸が熱くなった。
真帆はゆっくりと呼吸を整え、
花に触れるように指を伸ばした。
「ここ……“花彩命の庭”だったんだね。
おばあちゃんが言ってた意味、今になって分かる。
ここは、心が疲れた人の色を、そっと照らしてくれる場所だったんだ」
その日の午後、真帆は庭にずっと座っていた。
何もせず、何も言わず。
ただ風を感じ、土を撫で、花の音を聞いていた。
夕方、姉はぽつりと言った。
「航平、少しだけだけど……世界が色づき始めてる」
それは奇跡なんかじゃなかった。
ただ、姉の心がほんのわずかに“戻ってきた”という証だった。
色が戻るには時間がかかる。
でも、戻り始めたのなら、それでいい。
花彩命の庭は、たしかにまだ姉を照らしてくれていた。
帰り道、航平はふと思った。
――庭は消えていない。
人の中に、その人が忘れているだけで、
ちゃんと“色の源”は残っているのだと。
車の助手席で、真帆は眠っていた。
久しぶりに、静かで穏やかな寝息だった。
花彩命の庭は、いつだって遠くにはない。
心が疲れたときにだけ、静かに呼ばれる。
そんな場所なのだと、航平は初めて理解した。

紫苑/しおん🐈⬛
◆終章〖庭が閉じる前に〗
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ふいに、遠くで鳥の声がした。
空気が、少しだけ明るくなる。
藍色と墨色がまじっていた空に、
微かな光の線が差し込み始める。
「……朝?」
少女が顔を上げると、庭全体が、柔らかく光っていた。
夜明け前だけ存在するというこの庭は、
もうすぐ、入口を閉じようとしているのだろう。
その時だった。
庭のいちばん奥ーー先程まで一輪しか咲いていなかった場所に、
少女の背丈ほどもある大きな紫苑の花が咲いているのが見えた。
風もないのに、ゆっくり揺れている。
花びらの端に、誰かの涙がまだ残っているような、透明な光。
少女はふらふらと歩み寄った。
顔を近づけると、土の匂いと、どこか懐かしい毛並みの匂いがした。
振り返ろうとして、少女は気づく。
ーー黒猫が、いない。
さっきまで膝の上にいたはずなのに。
花々のあいだを自由に歩いていたはずなのに。
どこにも、姿が見えない。
「……行っちゃったの?」
胸がきゅっと締めつけられる。
けれど次の瞬間、頬に柔らかいものが触れた。
細い布の感触。
少女が手を伸ばすと、空中でふわりと揺れていた紫のリボンが、
そっとその手の中に落ちてきた。
さっきほどけたはずのリボン。
結び目はもうない。
けれど、真ん中あたりに、あの言葉の欠片の温度だけが残っている。
ーー私は私の最大の味方。
少女は、リボンを自分の手首に巻いた。
少しきつめに、でも苦しくないように。
ほどけてしまわないよう、指先でゆっくりと結び目をつくる。
それは、自分自身と結び直すリボンになった。
庭の入口の方から、光が強く差し込んでくる。
花々の輪郭が、少しずつ淡くなっていく。
少女は、最後にもう一度だけ振り返った。
紫苑の花の海。
その向こうで、黒い影が一瞬だけ揺れた気がする。
耳元で、かすかな音がした。
ーーまた迷ったら、おいで。
#花彩命の庭 #紫苑

紫苑

こちた

あこ
いつの間にか、同じ背丈に💦
来年は完全に身長越されるなぁ[やば][笑]


しろちゃん
背丈以上のツリーで飾り付けもしてみたよ🎄
久しぶりにクリスマスツリーの飾り付けして楽しかった🤣🌈
お客さん気づいて来てくれるといいなあ
営業さんの話のネタになるといいなあ

結杏

ꨄ︎結凪ꨄ🫧ྀི
花々の輝きに導かれるように、あなたは細い光の道を歩き出す。
空気はやさしく甘い香りをまとい、星の粒のような光がふわりと舞う。
歩くほどに、世界は深い青から金色へとゆっくり移り変わっていく。
✨ 道の先の光の中に立っていたのは──
そこにいるのは “人” というには儚く、
かといって “精霊” と呼ぶにはどこか温かさを持った存在。
背丈はあなたと同じくらい。
衣は光で編まれたように淡く揺らめき、
髪は花びらが風にそよぐようにさらりと流れていた。
瞳の奥には 四季の色 が見え、
まるで世界の移ろいをそのまま抱いているよう。
名前はない。
ただ、この庭では “あかりの守(もり)” と呼ばれている。
、、、、、、


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とくさん
47歳、オジサンの日記、他
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しろちゃん
\推しいっぱい夢いっぱい/
✧ジミンちゃん🐥✧アサヒ🤖
✧剣持刀也⚔️✧キヨ🐈⬛✧早川アキ🦊👌🏻
- - - - - - - - - - - - - - - - - ▼
✧お友達らぶなのでコメント多め。
✧大好きは🏷️に詰め込みました。(_ ..)_
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🦋奏岬🦋
趣味に没頭しとる26やたまーにヒトカラしとるから気軽に来なーね
ルシア𓆩 ♡ 𓆪奏岬
自分のファンマ𓆩✞ℜ𓆪これに決定( ゚д゚)クワッ
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みかん
はじめまして、よろしくお願いします。
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ぴや
食べるのとキレイな景色すきです
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