共感で繋がるSNS

人気

関連検索ワード

新着

琥珀

琥珀

天の川レイヴやりたすぎる
GRAVITY
GRAVITY8
ブケファラス

ブケファラス

#今でも続けている趣味
アウトドア
レイヴ
子供と遊ぶ
GRAVITY
GRAVITY2
天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第三十三話 前編

最初は、壁を登って越えればいいと思っていた。
でも、乗り越えるにはあまりにも高すぎた。
空の遥か彼方まで伸びた壁は、城砦のそれよりもずっと堅固で、ずっと高かった。
だからその壁につけられるにはあまりにも小さすぎる門を通り抜けるしかなかった。
人一人が通れる程度の門だ。
けれど誰一人その門を通り抜けることは出来なかった。
その拳は全てを斬り伏せる剣であったから。
その拳は遍くを砕き伏せる槌であったから。
その拳は悉くを貫き伏せる槍であったから。
傍に転がる、自分達を殺すためだけに作られた鉄球なんて安物の包丁だ。
誰かが言った。
「あそこに行っても死ぬだけだ。迂回しよう」
けれどそんなこと、出来るわけが無かった。
あの壁は既に自分達を包囲していたから。
結局、鬼門に挑むしか道は無かった。
飛びかかる魔性の群れに拳が突き出されれば、巻き起こった風は衝撃波という刃となって他者を巻き込み、殺戮の限りを尽くしていった。
「くそ!後方援護はどうなってる!奴の動きを止めさせろ!」
群れをまとめていた者がそう言うと、側近が恐る恐る口を開く。
「あの壁が現れた際、巻き込まれて……」
全滅した、と。

ルーヴェリア達と別れ、王都から馬を飛ば…すより走った方が早かったので、クレストは文字通り走って戦線を見渡せる位置に到着した。
ヘルベ湖、ア・ヤ湖の合間を抜け、いまやもぬけの殻と化したカルシャ村から索敵魔術を行使する。
敵の進軍は発見された位置よりあまり動いていないように思えた。
陽動のための軍、そして平坦になったテフヌト族領を徒歩で進軍すると考えれば機動力はそこまで重視されなかったのだろう。
陣形は円、中心に少しばかり大きな魔力反応があることから、あれらを指揮している者は中心にいる。
だが進軍方向は前方であるが故、接敵した際を案じてか後方に支援魔術に優れた植魔と吸血鬼達を置いたらしい。
欠けてはいるが、まだ使い物になる程度の短剣を戦力として見ているあたり、魔王はそれなりに慈悲深いのかもしれない。
さて、敵の陣形等が分かれば後はやる事をやるだけだ。
クレスト「マルス団長のお力、少しばかりお借りしますぞ」
にっと笑った老騎士は、持ちうる魔力を大きく消耗させながら、敵から身を守るためではなく、敵を殺すための砦を文字通り顕現させた。
クレスト「空間把握、指定」
敵陣の後方を潰しながら、包囲できる位置に。
クレスト「存在固定、城砦概念付与」
敵がゲートを開いて逃げることも出来ないように、その存在を人間界に固定する。
そして大地に、堅牢な砦の意味を持たせた。
果てしなく高い壁、抜け出す余地など持たせない石造りの地下牢、生きながらえさせるのではなく、飼い殺すための牢獄。
出口は、自分が立つこの場所だけにして。
クレスト「建立せよ!否生の砦」
魔族らのいるヤ・クルヌ村付近の地面が大きく揺れた。
ただの地震だと思っていたが、すぐ真横に雷が落ちたのではないかと錯覚するような音が轟いたと思えば、地面が盛り上がり、高く聳える崖のように自分達を囲い込んでいた。
10万の軍勢を、囲い込んでいたのだ。
困惑した矢先、出口らしきところに人間が一人だけ立っていることに気が付いた。
その人間は肩に担いでいた鉄球を地面に転がして仁王立ちしている。
クレスト「人の言葉が通じるのならば、貴様ら魔族に教示しよう。私を倒すことだけが、この場所から抜け出す唯一の道だ」
相手はたった一人。
恐れるものなんて何もない。
1匹の魔獣が飛び出してその首に噛みつこうとした瞬間。
その魔獣は頭部から全身が弾けた。
弾けた後に、パン!という乾いた音が聞こえてくる。
自分達なら飛んで抜け出せるだろうと考えた吸血鬼が空を目指すが、どこまで飛んでも壁は目の前から途切れることはなく。
囲われているために迂回するという道も塞がれ、何故かゲートも開けない。
動揺した魔族の群れがとった行動は、一斉突撃だった。
拳が剣撃となって同胞を八つに斬り裂く。
拳が鉄槌となって仲間を千々に粉砕する。
拳が真槍となって味方を無数に刺し貫く。
たかが人間一人の繰り出す拳に、10万が圧倒されていった。
その数を半分以下に減らすことに、何分かかっただろう。
人間が到達するべきではない境地にまで磨き上げられた一撃は、ただ一度繰り出されるだけで数百、数千を虐殺した。
そうして一度退却できるところまで退却し、後方部隊は既に全滅していることを聞かされたのだ。
どうしろというのか。
武に人生を捧げて人間を辞めた悪魔のような輩相手に、自分達はなす術もなく殺される他に道はないのか。
焦燥感と屈辱に身を震わせる将に、聴き慣れた声が響いた。
それは魔界に住む者なら誰もが頭を垂れ、地に伏し、姿を見ることすら許されないような高みに座す方の声だ。
『諦念は死後に噛み締めよ。彼奴は魔力で身体能力を上げているだけに過ぎない。お前達はゲートを通れぬが、送る方は別であろう。彼奴の魔力が尽きるまで、百千萬の兵を送り続けよう。恨み言は冥土に辿り着いた彼奴の魂にでも吐いてやれ』
ああ、我が王よ。
そのお力を我らの勝利の為に振るわれるのか。
あの悪魔が倒れれば、我らが死せどもそれは勝利となるのですね。
なんと非情かつ合理的で、しかし存分に奮い立たされる言葉なのだろう。
今やこの身は焦燥感や屈辱などという小さなものに震えてなどいない。
目の前にある死という運命に武者震いしているのだ。
否、狂ってしまっただけなのかもしれないが。
そうして正気を失ったように、魔族の群れはクレストへと襲いかかった。
上空にゲートが開き、無数の魔物達が牢獄へと放り込まれる。
表すならば波。幾重にも連なり呑み込まんとする荒波のようだと人は言うだろう。
しかしクレストからしてみれば、雑魚が鯨の口に自ら飛び込むようなものでしかなかった。
群れを率いていたものでさえ、少しばかり珍しい餌に過ぎないような存在。
荒波を拳一つで堰き止めてしまった。
どれだけ高い波であろうと、どれだけ強い衝撃であろうと、その拳は全てを屍へと変貌させ、死を撒き散らして山へと変えてしまう。

イレディア「あの小童が、ここまで強くなろうとはな」
目的を果たした魔王が鏡を通してその光景を見、感嘆の言葉を漏らす。
対して横に立つ魔女は不愉快極まりなさそうな顔をしていた。
サーシャ「目的は終えたのだから、これ以上仲間を殺す必要はないんじゃないの」
鋭い声に動じることもなく、魔王は首を横に振る。
イレディア「いや、あれが死ぬまで送り続けるさ」
サーシャ「馬鹿じゃないの?死体が増えるだけでしょ。もうノクスだって死んでるのに、意味ないじゃない。なんなら私が出て殺しに行ってもいいのよ」
間髪入れず、すぐにでも殺しに行きそうな魔女を魔王は制止した。
イレディア「それでは意味がない、サーシャ。魔術は封じろ。手出しはするな」
硬い沈黙が両者に流れる間にも、魔族の血は絶えず流れ続けている。
もはや山となった死体が流れを相殺して勢いすら殺されていた。
クレストの体は敵が視界から消え去るまで延々と繰り出され続ける。
決して折れない剣、その破壊力は言うまでもない。
さて、送り出した仲間の数はいくつだったか。
とうに百万は超えているはずだが、老騎士に疲れは見えない。
時が夕刻を過ぎても、緩むことはなかった。
イレディアは一度ゲートを閉じる。
サーシャ「………どうするの、あの死体の山の後始末」
イレディア「…………とりあえず後で燃やしてやろう。あの砦は一度入れば死んでも魔界には戻れない場所だからな」
魔女の嘆息を最後に、会話は途切れた。

魔族がこれ以上出現せず、ゲートが閉じられたのを確認したクレストは、ふうと息を吐いた。
とん、という着地音を背後で聞いて振り返ると、鎧も服も破れて腹部が丸見えのルーヴェリアが立っていた。
クレスト「…師よ、私はどこに目をやれば良いのですかな?」
ルーヴェリア「こちらの台詞ですクレスト…その屍は10万どころの騒ぎではないように思えますが…」
クレストはとりあえず自分の持っていたマントを裂いてルーヴェリアの腹部に巻きながら答えた。
クレスト「マルス団長の城砦顕現を使わせていただいたところ、盗み見していた輩がゲートを開きましてな。数で押せば倒せると思ったようです。数十倍は破裂しましたかな」
流石の怪物と呼ばれたルーヴェリアも、これは青ざめものである。
ルーヴェリア「…拳で?」
クレスト「拳で」
末恐ろしい。怒らせないようにしよう。
心の中でうんうんと頷きつつ、ルーヴェリアも戦果を報告する。
ルーヴェリア「こちらはノクスとレイヴを、後、恐らく彼方側の切り札と呼べるような魔物……確か、ロストとか呼ばれていましたね。それらを討ち取ってきました」
クレスト「流石ですな」
マントを巻き終えたクレストは誇らしげに微笑んでいる。
こうしていると、昔を思い出す。
いつの日だったかはルーヴェリアの片腕が飛んでいたのをなんとか鎧で隠したり、潰れた目が周囲の人間の目に触れぬよう包帯を巻いてやったりと苦労したものだ。
下半身が丸々吹き飛んでいた時はどう誤魔化そうか頭を悩ませ、結果的に食糧を運ぶための籠に押し込めたこともあったか。
クレスト「…懐かしいですな」
ぽつりと呟くクレストに首を傾げながらもサフラニアの方面を見る。
じき夜になるが、何の伝令も飛んでこないということは、アドニスの戦線も好調なのだろう。
特に急ぐことはないと判断したクレストが、場に似つかわしくない言葉を吐いた。
クレスト「食事は摂られましたかな?」
ルーヴェリア「あ、そういえばまだでした」
砦の中で火を焚こうとし、しかし辺りは血塗れ。
乾いたものなんて見当たらず火種になるものがない。
どうしたものかと周囲を見渡していた時、ルーヴェリアのいた方から嫌な音が聞こえた。
こう、ガリガリと何かを噛むような……そう、咀嚼音だ。
クレスト「師い!?」
青ざめるクレストが見たのは、その辺に転がった何かの魔族の破片に齧り付くルーヴェリアだった。
ルーヴェリア「…この肉塊、恐らく元は吸血鬼ですね。血の味が濃い。こっちは割と筋肉質で……魔獣、ですかね?」
うむ、そのような方法で元が何の魔物だったかを当てないでいただきたい。
粉々になった魔物の肉塊で神経衰弱をしないでくだされ。
ではなく。
クレスト「せめて火を通してくだされっ!」
そも食用の魔族は出回らなくなって久しいうえ、その体に毒を宿している魔族だって存在するのだ。
不用心に口にして良いわけがない。
ルーヴェリア「確かに、火を通せばクレストも食べられますね」
あ、なんか嫌な予感がする。
クレストはすぐさま防御体制をとった。
刹那、砦内で見事な爆発音を起こしながらルーヴェリアの火炎魔術が"暴走"した。
クレスト「…元から荒野であるのに、更に焼け野原にして如何なさるおつもりで…」
やはり調理は苦手だ。
ほとんどの肉が炭になってしまった。
クレストが心労と頭痛で暫し俯いていることなど意にも介さず、ルーヴェリアはとりあえず炭を払えば食べられそうな肉片を見つけてクレストに差し出した。
ルーヴェリア「感触的に熊型の魔獣の肉です。火は間違いなく通っているので安心して食べられますよ」
そうではないのです師よ…加減というものを覚えてくだされ……何年生きていらっしゃるのか……。
クレスト「ははは…有り難く頂きましょう…」
ああ、ディゼン団長。
せめて貴方が我が師にお茶を淹れる程度の魔力に抑えられるよう鍛えてくだされば、今も残っていた自然が多かったでしょう…。
更に言えば、騎士団の厨房が爆発したり団長専用の個室が吹き飛んだりして国庫に大打撃を与え、当時の宰相が胃薬を毎日倍量飲むことも無かったでしょうな…。
苦くもあり、温かくもあり、そんな空気は魔術を通じて送り届けられた伝令の声に破られた。
GRAVITY
GRAVITY1
天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
【おまけ】ある日の▓▓▓▓ 14

魔界中層の半分を占める海の中に栄えた種族が居た。
魚の頭に人間の胴、人魚の尾を持つ水棲の魔族で、種族名はグランレーン。
太古からあったわけではなく、単純にグランガチとセイレーンの間に生まれた種族だった。
ある日、人間と似た頭を持つ子供が生まれた。
今ならば隔世遺伝と分かるが、当時は誰もその言葉を知らない。
子供の親はかつてこの海を荒廃させたとされる天使セラフィムから名を取り、セラフィナと名付けた。
そして奴隷よりも酷い扱いで彼女を虐げた。
父親が言う。一族の恥晒しと。
母親が言う。あんたなんかいらないと。
出ていけ、出ていけ、今すぐ出ていけ。
毎日そう言われて家の外に追い出された。
勿論助けてくれる者なんかいない。
セラフィナはとうとう棲家を離れ、遠く遠く離れた場所へと泳ぎ去った。
どこまで行っても、闇しかない。
一族の頭に揺れていた灯りを恋しく思いながら、少しでも明るいところへと海上を目指した。
海藻を少しずつ食べながら、ひもじさを抱えて。
しかし幼子が一人彷徨うには世界が広すぎた。
朦朧とする意識の中で見つめた空は、まんまるな赤いお月様がきらきらとしていた。
こんな景色を眺めながら死ねるなら、悪くないとさえ思った。
でもそれは叶わなかった。
「ノクス、舟を止めろ」
誰か、女の人の声がする。
「死にかけじゃないか。拾うの?素材にしていい?」
無邪気そうな男の人の声に、女の人が何か言ってる。
「殺してどうすんだよ、流れ的に助けるだろうが」
気の強そうな、少し怖い男の人の声。
でも助けるって…?
セラフィナの意識はそこで途絶えた。

次に目が覚めた時、私は自分がまだ生きていることに驚いた。
小舟の上に横たわって揺れている。
月の位置的に今は朝だろうが、何があったのだろう。
いつだったか岩肌で切ってしまった腕には包帯が巻かれていた。
「起きたか。よしよし」
人間?の女の人が私を見てうんうんと頷いている。
セラフィナ「あなたは?」
イレディア「私か?イレディアだ。あっちの羽のついた生意気なのがレイヴ、そこでうたた寝してる呑気な奴はノクスだ」
自己紹介なんてされたのは初めてだ。
戸惑いながら自分も名乗る。
セラフィナ「あ、と…。グランレーンのセラフィナ…です」
イレディアは首を傾げた。
グランレーンの住処はここよりもっともっと遠い。セラフィナを拾った場所なんて更に遥か彼方だ。
イレディア「妙だな…何かに襲われて逃げてきたのか?」
セラフィナは声を震わせながらことの経緯を話し始めた。
聞き終える頃にはイレディア達の顔はグールのような形相になっていた。
イレディア「ノクス、まずはここからやろう」
ノクス「大賛成だね。海魔の屍人化してみたかったし、いい材料になりそうだ」
レイヴ「ま、弱きを救うは神の意志だしな」
困惑する私を他所に、3人は魔術を使って舟を走らせた。
住処が近づくごとに浴びせられた罵声が頭の中を木霊する。
そんな私を、イレディアは抱きしめてくれた。
イレディア「大丈夫。お前を虐げる奴は誰一人として居なくなる。私達がお前を守ってやるから、何も心配することはない」
優しく落ち着いた声に、心が温かくなって、嬉しくて、涙が滲んだ。
それからものの数十分だ。
海上をビチビチと跳ね回る同族達の姿を見たのは。
どんな魔術か知らないが、海中に逃げることができないようにされたうえ、火で炙られてる。
見知った顔もいくつかあるが、親の姿はどこにもなかった。
イレディア「大丈夫か?見ているのが辛いなら…」
セラフィナ「大丈夫です…」
言いながらも本当は心苦しかった。
でもきっと誰かは生き残っていて、都ではないどこかで暮らしているだろうから。
私の居場所はそこにはないのなら。
セラフィナ「あの…私……ついていっても、いいですか」
イレディアは不思議そうな顔をする。
イレディア「元よりそのつもりだが?」
そっか。良かった。
私はほっとして空を見上げた。
まんまるなお月様がきらきらとしている。
こんな綺麗な景色を眺めながら、幸せに生きていけるなら、それはとても嬉しい。
GRAVITY
GRAVITY
天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第三十二話 後編

「お姉ちゃん!」
突如鼓膜が感じ取った懐かしい声に、つい動きが止まってしまった。
ルーヴェリア「アリー…」
かつて村が滅んだ時に死んでしまった、大切な妹アリューシアの声だ。
「もう頑張らなくていいのよ」
「お前は十分やったじゃないか」
母マリアベルと、父ライゼスの声もする。
喋っているのは、目の前のこの骸骨だ。
ルーヴェリア「ノクスの死霊術か、よくもこんな下劣な真似を…!」
怒りを孕むその声とは対照に、体は微動だに出来なかった。
マリアベル「またそんなに傷だらけになって、私をどれほど心配させたら気が済むのかしら」
ああ、近くの山で小型の魔獣相手に立ち向かい、ボロボロになって帰ってきた日にも同じことを言われていた。
ライゼス「俺に似て力持ちなのはいいんだがなぁ、無茶苦茶なことをするところは誰に似たんだか」
困り果て、やれやれと首を振っていた様が目の前に浮かんでくる。
でもこれは、ノクスによってつくられた偽物の筈で…。
アリューシア「ねえお姉ちゃん、騎士団に入ったってことは、離れ離れになっちゃうよね?ね、寂しいから3日に1回はお手紙ほしいな!」
違う。偽物なら、こんなこと言わない。
明らかに、あの時交わした約束で、一言一句違わないところを鑑みるに、この骸骨に宿っているのは間違いなく私の家族だ。
あの時守ることのできなかった、家族たち。
鞘を握る手が降りる。
糸に巻かれた腕だけで宙吊りにされたまま、だが振り解くことが出来ない。
だって私は謝らなくてはいけない。
守れなかったことを。
死なせてしまったことを。
ルーヴェリアが口を開きかけた時、言葉を発することも許さないというように、骸骨達が話しかけてくる。
アリューシア「ねえお姉ちゃん、私が倒れてきた棚の下で泣いていた時、どうして助けに来てくれなかったの?」
マリアベル「何のために私達家族の反対を押し切ってまで騎士団に入ったのかしら?」
ライゼス「妻やアリーが死んだのは、魔族に太刀打ちできなかった俺の力不足だったのか?」
違う。違う違う違う違う。
ルーヴェリア「お父さんの力不足なわけがない!村の動けない人の分もって沢山魔獣を倒してたのはお父さんだって、私知ってる。本当に力不足だったのは、私、で…」
助けられなかったあの日の記憶が蘇る。
業火に包まれた村、思うように動いてくれない体、せせら嗤う魔女の声、助けてと響いた、妹の…。
微かに動くこともしなくなったのを好奇と見たのか、蜘蛛の糸はルーヴェリアを六つ並んだ頭部の上にぶら下げた。
それぞれの頭が各方向に伸び、裂けた中央部からワームのような口が覗く。
その様を、ルーヴェリアが見ることは出来ない。
あの日の景色が、瞼の裏に染み付いて離れないあの光景が今眼前に広がっている。
ごめんなさい。
守れなくてごめんなさい。
力不足でごめんなさい。
本当に守らなくてはいけなかった貴方達を、家族を殺してしまってごめんなさい。
私が至らなかったから。
私が弱かったから。
私が…。
体が餌を待つワームの口にゆっくりと降ろされていく。
そんなルーヴェリアの耳に、いつかの仲間達の声が響いた。
ディゼン「また下向きやがって、ケツ引っ叩くぞ」
コルセリカ「そんな過去があったから、今こうして強くなったんでしょ?」
マルス「あーあ、国を守って欲しいって言った俺の意思は継いでくれないのかぁ…」
冥界の門から次々と現れる魂を、ノクスは制御できずにいた。
閉じた筈だ、彼奴の家族の魂を呼び出した後、閉じた筈だ。
なのに何故開いている!?
ノクス「閉じろ、閉じろって!」
何度魔力を注いでも、門は閉じかかるが僅かに開いたままだ。
まるで誰かが必死にそれを押し返しているように。
テオ「おいおいあんたら、それだけでいいんすか!?もっと声かけてやってくださいよ!」
あれは、先日死んだルーヴェリアの仲間の一人だ。
あれが門を閉じるのを遮っているのか。
ノクス「救われることのない魂よ、我が意に従い彼の者を封ぜよ!」
悪霊達が一斉にテオの周りに群れるのを、白い霊魂が蹴散らしていく。
ナギ「邪魔なんかさせねえぞ!俺の師匠にあんな顔させたお前ら魔族を、俺の精霊様も許さないって言ってるからなぁ!」
陽光のような光は彼方此方を駆け巡って悪霊達を消し去っていく。
クワイア「師匠、背中ガラ空きじゃないですか」
この子は50年前共に戦った、クレストの妹だ。
そして、一人の魂がルーヴェリアを背中から抱きしめた。
ソーリャ「ルーヴェ、貴女が私みたいに過去に縛られているのは知ってる。その苦しみがどんなものかも、私は知ってる。でも今守らないといけない人達が貴女を待ってるのよ」
閉じかかっていたルーヴェリアの意識がはっきりとする。
──大丈夫、意思を継ぐ限り独りで戦わせはしない。
温かな声が聞こえる。
ワームの口が閉じる寸前、ルーヴェリアは鞘で喉粘膜を思い切り突き、反射的に自分を吐き出させた。
そうだ、私は独りじゃない。
意志を継いで戦うことで自分にしか出来ない葬送とすると決めたあの日から。
この魔装具達を身に付けると決めたあの日から。
私は独りで戦っているわけじゃない!
腕に絡む蜘蛛の糸を引きちぎり、ロストの頭部を蹴飛ばして地面に転がる剣を取る。
マリアベル「皆さん!間に合って何よりです!」
ライゼス「ギリギリ時間稼ぎ出来たな!」
アリューシア「酷いこと言ってごめんねお姉ちゃん!私たちでこいつの動きを止めるから、思いっきりやっちゃって!」
ルーヴェリアは強く頷いて剣を正眼に構える。
ノクス「クソ!どうなってるんだ!」
テオ「教えてやるよクソ野郎」
驚いて振り返るノクスの頬を、テオの霊魂がぶん殴る。
不意を突かれたのもあって尻餅をつくノクスを見下ろしながら、テオは簡単に説明した。
テオ「あんたからの呼びかけがあった時、ルーヴェリア様が障害になってるからどうにかしたいんだろうってすぐに分かった。だからあの人の家族捕まえて、ありったけの酷い言葉を浴びせてあんたの思惑通りに動くよう伝えたんだ。その間に、俺が歴史書で見た名前の人たちをかき集めて、門が閉じる前に外に出したってわけだ」
死者の魂に意思があるってのは知ってるだろうに。肝心なとこでヘマしたな、と笑うテオにノクスはわなわなと震えながら掴み掛かる。
ノクス「お前だって未練があるから応えたくせに!」
その手は軽々と振り払われた。
テオ「あ?あー、まあ王女様残してきちまったからな…そりゃ心残りだよ。他の人たちも、永遠の時間を生きることになるルーヴェリア様が"心配"だったから応えたんだ。恨み辛みばかりが未練じゃねえよ」
ロストの両腕が自身の胸元にある髑髏を掻きむしるような動きをする。
恐らく中に入った霊魂が暴れ回って妨害し、制御不能に陥らせているのだろう。
自分に向かって炎や氷の息を吐き出し、何とかして追い出そうと必死だ。
その度に自分が傷ついていることにすら気が付かずに。
ルーヴェリア「…私が言うべきなのは、謝罪ではありませんね」
ふっと笑ったルーヴェリアが地を蹴った。
ルーヴェリア「対象認識、概念具現化、斬撃術式展開…」
揺らめく大地。
──百裂き!!
行手を阻む百足の胴の継ぎ目に合わせて無数の斬撃が放たれ、文字通り百に砕かれる。
概念具現化とは、言葉に宿る意味がそのまま具現化される術式だ。
自分にかけられた呪いを解くために必死に魔術の研究をするうちに出来るようになった副産物ではあるが、強力な術である。
ロストは骸骨含め頭部が九つ。恐らくそれぞれが元は一体の魔物だったのだろう。
内二つは停戦交渉の際、魔王に付き従っていた宰相だから間違いない。
魔族に慈悲をかけるつもりも、情が湧くこともないが、死して尚こんな姿にされ侮辱されるのは、僅かではあるが哀れに思う。
故に。
ルーヴェリア「砕破!」
頭部に向けて具現化の術式を使い砕き伏せる。
尚も此方に向かってくるのは、やはり核というものが存在しないからだろう。
だが、頭を潰したおかげか奴の体は再生しなくなった。
今ならば。
地面、空中問わず縦横無尽に駆け巡り、爪を、腕を、毒牙を剥き出しにする蛇達を、内に潜むワームを、全てを切り裂きばらけさせる。
そしてありったけの魔力を込めて世界を断絶させている壁の天井をぶち破った。
ノクス「は!?」
使われたのは既に死んだ魔物だろう。
なら行先は冥界に他ならない。
ルーヴェリア「地獄より燃え立つ劫火よ、哀れな魂の拠り所を焼き尽くし、その魂を冥界へと誘い給へ!」
力技でこじ開けられた天井から爆炎の柱が降り注ぎ、ロストの身を焦がし、燃やし、灰燼に帰していく。
誰もが思わず目を閉じるような光が辺りを照らす。
ゆっくりと目を開く頃には、世界を隔絶する壁は消え失せ、いつもの景色が戻ってきた。
自分を助けてくれた霊魂達の姿はもう無い。
ルーヴェリア「皆さん…有難うございます」
夕焼け空に呟くと、地に膝をついて呆然としているノクスの元へと歩いていく。
ノクス「そんな…あり得ない…こんな…」
壁が破られたことも、死霊術を極めた自分を差し置いて冥界や地獄の門を開かれたことも、受け入れ難かった。
これじゃ、どんな顔して向こうでレイヴに会えばいいか分からない。
ルーヴェリア「…人間に似た姿にもなれたんだな。まあいい……私の家族に苦労をかけさせた罰だ。精々苦しみながら死ね」
冷淡な声色が具現化する。
ノクスの体はあり得ない方向に何度も何度も捻じ曲がり続けるが、不死者の特性でその程度なら治ってしまう。
じっくりと聖なる光に身を侵されながら、ノクスは声にならない声を木霊させる。
殺してくれと叫んでいるようにも聞こえなくはないが、そんな慈悲など持ち合わせてはいない。
ゆっくりと、確実に死に至っていく魔物を背に、夕焼け空の向こう側を眺めた。
他の戦線はどうなったのだろう。
此方は思っていたより時間がかかってしまったので、当初の予定より作戦時間は大きく遅れていることになる。
ルーヴェリアは急いでクレストの元へと向かうのだった。
GRAVITY
GRAVITY5
天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
第三十二話 前編

ロストの攻撃をかわしながら、ルーヴェリアはその動力源がどこにあるのかを探っていた。
魔力的な反応は奴の体から感じることができない、ということは動力源は魔力ではない。
ならば、魔族が持ちうる核というものも奴にはないということで…。
その思考を遮るように紅槍が視界を掠める。
ルーヴェリア「邪魔だ」
真っ直ぐに向かってくるそれは、軸はブレておりただこちらに突っ込んでくることしか考えていないような動きで、まるで正気を失ったかのようだ。
軽く弾いただけで少し遠くに生えていた木に衝突して血反吐を吐いている。
そんな状態で向かって来られても戦いの支障にすらならないが、目の前を横切る蠅のように煩わしいのは確かだ。
ロストの右腕が爪による斬撃を放ち、ルーヴェリアの剣がそれをいなすのを見つめながら、正確にはそちらの方を見ながら、レイヴは立ち上がる。
目の前に広がる光景は、雲の地面と輝く青空。
取り囲まれている自分と、擁護してくれる神の姿。
罪状は人間を魔族に売ったこと、つまり人身売買。本来守護するべき人間を魔族に売ることは言わずとも理解は出来るだろうが重罪だ。
神は、主は、俺がそんなことをするはずが無いと弁明してくれた。
検察側が確かに見たと言う者が居ると言う。
レイヴ「何かの間違いだ!主の意に反することなんて俺が出来るわけないだろ!」
ロストの下半身による殴打を蹴りで撃ち返したルーヴェリアの視界に、また紅色の軌跡が迫る。
何か様子が変だ。こちらに向かってくるのに、こちらを捉えてはいない。
まあ、関係なく斬るだけだが。
レイヴの胸元に鈍い痛みが走る。
検察側が言った。
「では、皆が口を揃えて嘘をついていると言うのか?」と。
レイヴ「そんなことは無いと信じたい…!大切な仲間だぞ!?だが俺は決して主の意に叛くようなことはしない!」
神「彼は誰よりも私を愛し、人を愛する忠実な僕だ。何かの間違いではないのかね」
弁護側も、レイヴくらいの背丈で同じだけの翼の数を持つ者は他にも沢山居るし、人違いの可能性は否定できないのではないかと言ってくれた。
それでも、堕天の判決が覆ることは無かった。
神「…どうか、私を許してほしい。私はお前を信じている」
レイヴ「最後の、最後の慈悲を与えてはくださいませんか…!」
まだ此処にいたい、あなたの傍で、大切な仲間達と共に天界を支えたいと縋り付く。
ルーヴェリア「…もう意識も無いでしょうに」
ロストに対し結界術は効果があるのか、物理に特化させれば盾くらいにはなるようだ。
それを利用して、地に伏せて尚立ち上がろうとするレイヴの頭のあたりに立つと、その心臓目掛けて背中から剣を突き立てた。
神「…すまない」
ああ、あなたがそんな顔をするから。
いっそのこと、怒りに満ちた顔で、声で罵ってくれれば、この心も白い翼と共に砕け散っただろうに。
俺の愛する神よ、俺の崇敬する神よ。
堕天し、行き場のなかった俺を救ってくれた人の恩に報いるために俺は人間を殺した。
でも、せめて天に召されあなたの腕に抱かれて眠ることを祈っていたんだ。
俺は、招いてもらえないだろうけれど。
イレディア、お前の力にはなれたのかな。
結局、何もできないまま、俺は死ぬのか…。
レイヴの全身をひび割れが駆け抜けていく。
先から内側へとかけて。
それが心臓に到達したとき、彼は粉微塵になって二度と再生することはなかった。
ロストが魔術壁に阻まれるのをどうにかしようと障壁を何度も殴りつける様を見て、知能が低いことを確認したルーヴェリアが剣を構え直したとき、全身を包み込むような怖気が走った。
空間が浮き上がるような感覚が一瞬だけ、でも確実に今自分がいるこの場所は、自分の知る世界ではないと理解する。
結界に取り込まれたというより、世界から自分達だけ切り離されたような、大地も空も、陽炎のように揺らめいている。
ルーヴェリア「界域断絶……」
世界と世界を隔離して別の次元としてしまう、ある意味魔術の極地の一つだ。
見慣れない男がロストの向こう側に立っている。
青白い肌、落ち窪んだ瞳、痩せこけ骨ばった頬、伸びるに任せたのを適当に切ったような白髪…だが、外套に見覚えがある。
ルーヴェリア「まさか、ノクスか…?」
答えに至って一瞬唖然とした隙を突かれ、障壁を体当たりでぶち壊してきたロストの体が直撃する。
咄嗟の防御も間に合わず、世界と世界を断絶する壁に叩きつけられてしまった。
鎧がなければ内臓までやられていただろう衝撃が駆け巡ったかと思えば、自分の腹部を壁から突出してきた何かが貫いてきた。
痛みは若干感じるが、不老不死の呪いのおかげか致命傷になることはない。
そのおかげか本人の元からの性格なのか、現状を冷静に分析する。
この隔壁には意思があり、それはルーヴェリアに向けられた敵意で、操っているのはノクス本人。
壁に近付くのは得策ではないかもしれない。
隔壁を蹴って前進しながら剣を構え直し、この空間を支配しているノクスの元へ駆け寄ろうとするも、ロストが立ち塞がってそれを阻止する。
ルーヴェリア「こちらからどうにかしなくてはいけない、ということか」
肉薄してくる百足の尾を両断し、切れ目に刃を突き刺してロストの下半身を切り開いていく。
上半身の方に痛がる様子が見られず、自分の下半身を斬りながら向かってくるルーヴェリアに爪を振り下ろした。
やっとのことで通した剣を抜いて弾くわけにはいかないため、ガントレットで防いだ。
衝撃で地面の陽炎が一際大きく揺れる。
肩口の蜘蛛から糸が吐き出され、片腕に巻き付いたそれはとんでもない力でルーヴェリアを引っ張った。
身体能力向上の魔術をかけていなくとも人間離れした力を持つ彼女でさえ、抗うことができず引き摺られるのだ。
渋々剣から手を離して突き刺さったままの状態にしておき、腰のベルトから鞘を抜いて引っ張られるままに任せ近付くことを選んだ。
頭部の一つが炎の息を吐きかけてくるのを魔術で跳ね返しながら、胸元についた三つの骸骨のうち真ん中を狙って鞘を振り下ろす。
が、その鞘が骸骨に届くことはなかった。
世界が断絶されたおかげで、ルーヴェリアの魔力によって封じられていた冥界の門にも手が届くようになったノクスはお得意の死霊術が使えることを重畳に思っている。
ノクス「開け、天冥の門…」
この術のことで、レイヴとよく喧嘩していた。
死者の安らぎを邪魔するな、と。
だがノクスは知っている。
自分の術はあくまで生きていた世界に戻りたくはないかを問いかけ、その問いに頷いた者だけが門を通ってこちら側へ現れることを。
ノクス「未練たらたらであの世に留まるより、余程いいと思うけどな、僕は」
呼び出したいくつかの霊魂がロストの骸骨に吸い込まれていく。
GRAVITY
GRAVITY3
天月 兎

天月 兎

サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで
【おまけ】ある日の▓▓▓▓ 13

魔界の上層と中層は、巨大な山で隔たれており、これを登って初めて上層に辿り着く。
山の麓で切り立った崖のような様相を呈しているそれを見上げて、イレディアがため息をついた。
イレディア「これ、登るのか」
身体強化程度なら出来るがそれでもこれを登るのは流石にキツイものがある。
背後から同じように崖を見つめるノクスも同じ顔をしていた。
セラフィナ「この浜辺を迂回すれば、少しなだらかなところがあったと思います…お母さん達を探してる時に、見かけた気がして…」
おずおずと提言するセラフィナの頭を撫でてイレディアは微笑んだ。
イレディア「でかしたぞセラフィナ、労力は少なく済む方が絶対いいからな」
ノクス「決まりだね」
レイヴ「え、飛んだ方が早くね?」
イレディア「じゃお前だけ一人で飛んでけ」
にっと笑ったイレディアがレイヴを蹴飛ばすと、ゴム毬のように跳ねていき、崖に生えていた木に引っかかる。
レイヴ「え!?ちょ、高い高い!怖い!てかお尻も痛い!降ろしてー!我が主よ助けてー!」
イレディア「行くぞ〜」
レイヴの叫びを完璧に無視して歩き出したイレディアの足が、また何かを蹴飛ばした。
ぷよんとしたそれは「いでっ」と言ってコロコロと地面を転がっていく。
イレディア「スライム?」
セラフィナ「この辺に居るのは珍しいです…」
イレディア「逸れたのか?」
悪い悪い、と言いながら拾ってやると、スライムは瞳を潤ませてプルプルと震えていた。
いや、元からそういう生き物ではあるが。
「やめて!痛いことしないで!僕ちゃんと言うこときくから!」
イレディアが落ち着いた声でそんなことはしないと宥めること十数分。
スライムはやっとまともに会話ができるようになった。
ミュルクス「僕、スライムのミュルクス。仲間たちから肝試しに、あの崖を登るように言われて……でも、落っこちちゃって…それで…置いていかれちゃって…」
なんだか既視感を覚えてセラフィナを見やれば、セラフィナも同じ気持ちらしい。
イレディア「そんなことがいつもあったのか」
ミュルクス「う、うん……僕、まだまだ力は足りないけど、他の魔族に擬態することができるんだ。それは他の仲間にはできないことで、それで、その……いじめ、られてて…」
イレディアはふむ、と考えた。
これから玉座争奪戦という激戦区に向かうことを考えると、安定していないとはいえ他の種族に擬態できる能力は戦力になる。
イレディア「お前が良ければうちの一員にならないか?」
ミュルクス「え、なんで?どこにいくの?」
イレディアは空の彼方を見やって力強く言った。
イレディア「玉座だ」
この人ならきっと僕を虐めないだろう。
ちょっと変わった仲間達も居るみたいだけど、少なくとも今までのような酷い扱いは受けないはず。
そう思ったから、僕はイレディア様についていくことにしたんだよ。
GRAVITY
GRAVITY2
ゴロリ

ゴロリ

なぜバウトのコロナイズ・レイヴは2回必要なのか
GRAVITY
GRAVITY6
もっとみる

おすすめのクリエーター

関連ハッシュタグ