『カードの森の約束』―――昔むかし、カードの森と呼ばれる不思議な場所がありました。そこでは風がひと吹きするたびに、きらりと光るカードが空を舞い、葉っぱのようにひらひらと舞い降りてきました。そのカードには、火を操る竜や、時間を止める鳥、涙で花を咲かせる少女――いろんな世界の力が宿っていました。森の子どもたちは、そのカードを集めて遊ぶのが大好き。でも、それはただの遊びではありません。「カードの森のルール」――それは、ひとつのカードを賭けて勝負するということ。勝った者は相手のカードを手に入れ、負けた者は静かにカードを差し出す。ある日、小さな村の少年ルオが森にやってきました。彼の手には、たった一枚のカード。それは父がくれた「光の精霊リュミナ」のカードでした。ルオは森で出会った少女・ミラに挑まれました。「あなたのカード、きっと強いんでしょ? 一度、勝負しようよ!」ルオは少し迷いました。――負けたら、このカードを失う。でも、逃げたらいつまでも臆病のままだ。そして、カードが森の光に照らされ、勝負が始まりました。ミラのカードは「闇の狼フェル」。黒い霧のように広がり、光をのみこんでいく。けれどルオは、カードにそっと声をかけました。「リュミナ、僕を信じて。僕も君を信じる。」光がぱあっとあたりに広がり、二人のカードは天に浮かびました。闇と光が交わり、ぶつかり、やがて静かに消えていきます。勝負のあと、風が止みました。勝ったのは――ルオでした。ミラは少し涙をこらえて、笑いました。「負けちゃった。でも、きれいだったね。」ルオはカードを受け取らずに、彼女に言いました。「カードは取り合うものじゃない。僕らの物語を、つなぐものだよ。」その夜、森の上の星たちが光りました。風がふたたび吹き抜け、空に新しいカードが舞い上がります。――それは、ルオとミラのカード。“信じあう心”が描かれた、世界でたった一枚のカードでした。おしまい。