細胞培養系を用いた毒性試験では、MP/NPが細胞に及ぼす影響が詳細に解析されている。粒子径が細胞の構造に近接するナノスケールでは、細胞膜の機能障害、リソソーム(細胞内小器官)の損傷、ミトコンドリア機能の低下を介した活性酸素種(ROS)の過剰産生が認められ、これがDNA損傷やアポトーシス(細胞死)につながる。特に懸念されるのは、免疫系への影響である。MPは、マクロファージなどの免疫細胞に貪食され、炎症誘発性のサイトカイン(情報伝達物質)を過剰に放出し、持続的な慢性炎症状態を引き起こす。この慢性炎症は、組織の線維化、動脈硬化、および自己免疫疾患の発症・進行を促進する要因となり得る。さらに、腸管におけるMPの存在は、腸内細菌叢(マイクロバイオーム)の多様性やバランスを変化させ、腸管バリア機能の低下、いわゆる「リーキーガット」現象を招き、全身性の炎症や代謝疾患に間接的に寄与する可能性も指摘され、研究が進められている。