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アクア−Devil

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《もういちどの丘と、風のメガネ》
—長い絵本風物語—

小さな森のふもとに、コロンという子ウサギが住んでいました。
ふわふわの耳が左右にぴょこんと揺れ、走ると影が二つに見えるくらい元気な子です。
けれどその元気さのせいで、よく慌てたり、うっかりしたりしてしまうのでした。

ある日の朝、コロンは大好きなベリータルトを買いに、森の小道をほいほい歩いていました。
「今日は落とさないようにしなくちゃ」と思っていたのに、
リスの兄弟が突然横から「おはよー!」と飛び出してきたものだから、
コロンはびっくりして、手がすべってしまいました。

タルトはふわりと空へ浮き、くるりと回って、地面にぽすん。
ベリーの甘い香りが広がり、形はすっかりつぶれてしまいました。
コロンは耳をしゅんと下げてつぶやきました。
「また同じことをやっちゃった……。もう、どうしてなんだろう。」

そのときでした。
森の奥から、ポロン……ポロン……と古い鐘の音が聞こえてきました。
風にのったその音は、まるでコロンの心にそっと触れるようでした。

「あれは……“もういちどの丘”の鐘の音だよ。」
近くにいたモモンガのおばあさんが、優しく教えてくれました。
「落ち込んだときに行くといい。悔やむ気持ちを、未来の力に変えてくれる場所なんだよ。」

コロンは少し迷いましたが、つぶれたタルトをそっと抱えて、丘への細い道を登っていきました。
道は長くて足は痛くなりましたが、鐘の音が背中を押してくれるようでした。

丘のてっぺんには、小さな古い塔が立っていました。
扉はぎーっと音を立てて開き、中は薄明かりで静かでした。
すると、部屋の中心に小さな光の粒が集まり、ふわっと一匹の妖精が現れました。

「ようこそ、コロン。」
妖精は風のように柔らかい声で言いました。
「落としてしまったタルトは戻らないけれど、同じことで悔やまないように、
これからのコロンを変えることはできるよ。」

コロンが耳をぴくりと動かすと、妖精は小さな道具を差し出しました。
それは丸いレンズがついた、小さな“そっと見るメガネ”でした。

「急ぐ時こそ一度だけ周りを見てごらん。
ほんの少し気をつけるだけで、未来はやさしく変わるんだ。」

コロンはメガネを大事に抱えて塔を出ました。
すると、風がメガネのレンズをふわっと撫で、森がいつもより少しだけ輝いて見えました。

帰り道、コロンはいつものように急いで走り出そうとしましたが、そこで一度立ち止まりました。
深呼吸をして、周りをぐるりと見渡します。
すると、小道の向こうからまたリスの兄弟が走ってくるのが見えました。
「ふふん、今日はちゃんと見えたよ。」
コロンは笑って道の端に避け、タルトの包みを胸にぎゅっと抱えました。

それからというもの、コロンはどんな時でも、
“急ぐ前に、ちょっとだけ立ち止まる”ことを忘れなくなりました。
森の仲間たちも、そんなコロンの変化に気づき、
「落ち着いたね」「なんだか頼もしいね」と声をかけてくれるようになりました。

同じ失敗を繰り返さないように気をつけることは、
コロンにとって魔法じゃなくても、大切な力になっていったのです。

丘をふり返ると、塔の窓がきらりと光りました。
まるで妖精が「よくやってるよ」と微笑んでいるようでした。

コロンは胸を張って歩き出しました。
「悔やむだけで終わらせない。ちゃんと気をつければ、ぼくの未来は変えられるんだ。」

そう言いながら、森の中をぽこぽこと軽やかに帰っていきました。

コロンの一日は、悔やむ代わりに、少しずつ強さを増していったのです。
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あやまれどうするつ森

あやまれどうするつ森

ベリータルトがいっちばんうまいねん
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もも

もも

🥧3種のベリータルト🥧

今週もお疲れ様でした。

#今日の1枚

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