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現実を

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インドなんだけどバングラみを感じることがある
上手く言えないのがもどかしい
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ハサン

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私たちは並んで花火を見ていた。

けれど、僕が本当に見ていたのは花火じゃない——むしろ、あかりだったと言った方が正しいだろう。

あの子を見れば見るほど、不思議な気持ちになる。女の子って、こんなにも特別になれるのか? こんなにも異質で、特別に。


彼女は淡い水色の浴衣を着ていた。まるで着物のように見える。

帯を締めて、足元には木の下駄。

その歩き方には、どこか自然なリズムがあって、つい目が奪われてしまう。


ふと、心に切なさがよぎる。

ああ、もし今日、彼女の手首にバングルがあり、手にメヘンディの色がのり、目元には淡いカージャルがあったなら——

まるでバングラの女性のように見えただろうな。


でも、どんな飾りもなく、彼女はすでに美しい。

ちょうどバングラの女性がサリーをまとうときに見せる美しさのように、

日本の女性もまた浴衣や着物を纏うときに、その美しさを見せる。

あかりは、その証明そのものだった。


日本に来て二年が過ぎた。

この間、一度も花火大会には行かなかった。

今日だって、きっと来なかったと思う。

でも、あかりが無理やり誘ってくれた。


あの子の意地っ張りなところ、

無邪気さ、

そして少し風変わりなところ——

全部が、僕をここに連れてきた。


正直、彼女は少し変わっている。少しおかしな子だ。

だけど、その変わり者の中に、澄んだ美しさがある。


いつも明るくて、元気いっぱいで、

周りにいるだけで、空気が軽くなるような存在。

無口で、無表情で、いつも無関心そうな僕を、

こんなにも自然に受け入れてくれるなんて、驚きだ。


僕はいつも、自分の影と話していた。

誰とも関わらず、心の奥に閉じこもっていた。

でも、あかりは——

そんな僕を光の中に引っ張り出してくれた。


彼女は、本当に特別な存在。

たぶん、あかりだからこそ、できること。

誰にもできないことを、彼女は自然にやってのける。


女の子は黒くて長い髪のとき、一番美しいと思う。

そこには不思議な魔力が潜んでいるから。

あかりの黒髪は、まるで夜空のように——

深くて、神秘的で、そして心を奪う。


風が吹くたび、その髪が揺れて、音のない旋律を奏でるように思える。

そのきらめきに目を奪われ、視線を外すのが難しくなる。


あかり——まるで動く詩のようだ。

その笑顔には、悲しみを忘れさせる魔法があり、

その眼差しには、心を静かに包み込む力がある。


落ち着きがないように見えて、でも騒がしくはない。

まるで人生をなでるそよ風のよう。

下駄の音は音楽のない旋律、

風に揺れる浴衣のひだは、バングラの女性のサリーの端のように美しい。


彼女はただ自分の世界にいるだけじゃない。

僕の世界にも、ちゃんと引き込んでくれる。


その存在には、

言葉や装いでは語れない自然な優しさがある。

何もしていないのに、すべてがうまくいっている。

美しくて、心地よくて、称賛したくなる。


彼女を好きにならずにいるなんて、

それはきっと、不自然なことだ。


今日の花火大会では、あかりが自分の手で弁当を作ってきてくれた。

その気遣いと、丁寧さ。

おにぎり、卵焼き、カレーライス、団子、いちご大福——

まだまだ他にもたくさん。


僕には馴染みのない食べ物ばかり。

食べたこともないものも多い。

でも分かってる。

一つ一つに、彼女の愛情が込められているってこと。


だから、食べないわけにはいかない。


僕たちは二人で、隅っこの場所に座っていた。

夜空に花火が咲き乱れ、

その前に並べられた、あかりの心のこもった料理。


明かりと影の間で、静かに話しながら、食べながら、

まるで世界の喧騒から遠く離れて、

僕とあかりだけの、小さくて穏やかな世界にいた。


ちょうどそのとき、

あかりは僕の手に七本のガーベラの花を渡した。

淡いピンク、白、オレンジが混ざった、美しいブーケ。


彼女が言った。

"ハサン"

---うん。

---"ガーベラの意味って知ってる?"


僕は首を横に振った。

彼女は少し笑って、こう言った。


---"ガーベラはね、“希望”の象徴なの。

それにね、七本のガーベラには、

“あなたに私の人生の一部になってほしい”って意味があるんだよ。"


僕は言葉を失った。


その瞬間、彼女の顔には少しの恥じらい、

少しの希望、そしてたくさんの勇気が見えた。


僕が彼女を見つめると、

あかりは少し照れくさそうに笑って、こう言った。


"花火の光は、今までにも見たことがあるけど…

でも今回は、なんだか特別なきらめきが見えた。

たぶんその理由は…ハサンの存在。"


彼女は目を伏せて、はにかんだ笑みを浮かべた。

僕は何も言えなかった。

ただ、彼女を見つめていた。


花火の光の中で、その顔が一層輝いて見えた。


あかり——君はきっと知らないだろうけど、

君自身が花火よりも大きな祭り、

静かな喜びの名前なんだ。


"あかり、君自身が花火だよ。"

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