井川蒸溜所 フローラ2024改めて呑むとやっぱり若い。長熟ボトルを呑んだ後だと余計にニューポッド感がある。ブラームスは最初のピアノ協奏曲を若冠25歳で完成させた。その頃の彼は良き先輩であるシューマンが逝去したことの喪失感とその未亡人クララに人知れず恋心を抱いてしまった苦悩とを心に抱いていた。この1番のピアノ協奏曲第二楽章での係留音を伴った美しいゼクエンツは果たして誰を想って書いたものなのだろうか。若さは決してマイナスではない。経験していないからこそ思い悩み、迷い、苦しみそうした諸々は歳を追うごとにやがて消えてゆくのだ。そして、それはそれで決して単純でも薄っぺらくもない。音楽もウイスキーもそうした『時』をほぼ永遠に封じ込めているのかもしれない。