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🌰 絵本風物語

「コロロとどんぐりの森の授業」

秋のはじめ。
森の木々が、すこしずつ金色にそまっていく季節。

ちいさなリスのコロロは、朝からそわそわしていました。
木の枝の上から、地面に落ちるひとつぶのどんぐりを見つめながら。

「また、どんぐりの季節がきた……！」

コロロは、どんぐりがだいすきでした。
でも、去年の秋。
コロロは、まちがえてとてもにがいどんぐりを食べてしまい、
思わず顔をぐにゃーっとゆがめてしまったことがあったのです。

「どうしたら、おいしいどんぐりだけを見つけられるんだろう……？」

コロロは、両手をほっぺにあてて、しょんぼりしました。

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🍂 森の奥から聞こえた声

「こまっているのは、おまえさんかい？」

ふわりと落ち葉が揺れたかと思うと、
白いひげのフクロウ先生が、夜明けの光を受けながら現れました。

フクロウ先生は、森でいちばん物知りで、
木の葉のしげむ音からでも季節を読むことができると言われていました。

「どんぐりが見分けられなくて……」
とコロロが話すと、先生はやさしく目を細めました。

「そうかそうか。
森の実りには、ちゃんと理由と名前があるのじゃ。
しっかり見れば、ちゃんとわかるようになる。」

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🌾 森の中の授業がはじまります

ふたりは、森の大きなシイの木の根元にやってきました。

「まずはここじゃ。」
先生は、地面に落ちているどんぐりを1つ拾いました。

それは、つやつやして、ころんと丸いどんぐり。

「これはスダジイといって、
そのまま食べてもやさしい甘みがあって、おいしいどんぐりじゃ。」

先生は、くちばしで軽く殻を割り、
ちいさなかけらをコロロにわたしました。

コロロが食べると――
ほっぺがふんわりあったかくなるような、
やさしい木の実の味がしました。

「おいしい……！」

コロロは目を丸くしました。

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🍁 次の木の下へ

今度は、帽子がトゲトゲしたどんぐりが落ちている木へ行きました。

「これはアベマキ。
にがみが強いが、人間はゆっくり水にひたしてにがみをぬくんじゃ。」

「森の味は、ただ ‘たべられる’ か ‘たべられない’ かだけじゃない。
手間をかければ、ごちそうにもなる。」

コロロは、「ふむふむ」と両手を後ろで組みながら聞きました。
先生の言葉は、まるで木の風のように、するりと心に入っていきます。

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🐛 穴のあいたどんぐり

ふと、コロロは地面で小さな穴のあいたどんぐりを見つけました。

コロロはそれを拾い上げると、先生は静かに言いました。

「それはね、虫さんのおうちなんじゃ。
この森は、みんなで使ってるところ。
必要なものは必要なものへ。
だからそれは、そっと土に返してあげるのじゃ。」

コロロは、どんぐりを両手で包み込み、
やさしく土の上に返しました。

その仕草は、まるで森にありがとうを言うみたいでした。

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🌙 秋の夜がふけていく

その日の夕方。
コロロの木の家のまわりには、
つやつや丸いどんぐりがたくさん並びました。

「ぼく、もう迷わないよ。
森をちゃんと見て、森の声をきくよ。」

風が木々をゆらすと、
どこかでフクロウ先生の声がきこえた気がしました。

「知ることは、森と仲良くなることじゃ。」

月がのぼり、森は銀色の光につつまれました。
コロロは、そっと目を閉じました。

あしたも、いい秋になりますように。

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🌰 おしまい

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