物語「オズミの泉とふしぎな結界」ととととととと――。土の上をかけぬけるような、リズムのある足音が響いていました。それはモンスターが逃げる音でした。うしろからは、こわいこわい人形が、ぎこちなくも、まっすぐに、こちらへと迫ってきています。その目は感情を持たないはずなのに、どういうわけか、見つめられると心がざわざわして、体の奥が凍りつくようでした。「やっぱりこわいよな……あれ。」モンスターは震えながらも、必死に足を動かしました。「よ、予想外だけど……いまのうちに!」人形の気配がすこし遠ざかったそのすきに、モンスターはふと空を見上げました。わあ……。ひさしぶりの太陽が顔を出していました。暗い森の中を抜け、ひらけた草原に立つと、風がやさしく体をなでていきます。モンスターは立ち止まり、ぐうーっと背伸びをしました。「ふう……。 よし、行くぞ! オズミの泉!」彼には目指す場所がありました。泉にたどり着けば、きっと望んでいた答えが見つかると信じていたのです。しかし。バンッ!!!「ぐえっ!」見えない壁に思いきりぶつかって、モンスターは尻もちをつきました。目の前には何もありません。けれど、たしかにそこに「何か」が立ちはだかっています。「……そうか。これは結界だな。」泉を守るための見えない壁。行く手をふさぐ、試練のようなもの。「えーい、いちいちめんどくせー!」モンスターはぼやきながらも、負けじと立ち上がりました。「こんなものはな、どうにかすれば抜けられるんだ!」ゴンッ!ゴンゴンッ!角をぶつけ、肩をぶつけ、全身で体あたりを繰り返します。何度やっても、壁はぴくりとも動きません。「そんな無茶をして……」と、すぐ横を吹き抜ける風がつぶやいたように聞こえました。けれどモンスターは止まりません。「だったら、高さを変えて――!」ぴょーん!モンスターは大きく跳ね上がり、勢いをつけて結界に体あたりしました。ドンッ!!!衝撃で大地がゆれ、空に白い光がひとすじ走りました。そして、ほんのわずかですが、目の前に小さな光のすきまがあらわれました。「おお……やっぱり! あきらめなきゃ、道はひらけるんだ!」モンスターは息を切らしながら、もう一度背伸びをしました。太陽は彼を照らし、草原はやさしく包み込みます。そして――「これで最後だっ!」ゴンッ!!!全力でぶつかった瞬間、バリリリリリッ!!!見えない壁は砕け散り、まぶしい光が一面にひろがりました。そこには――澄みきった青色をたたえる「オズミの泉」が、静かに広がっていたのです。モンスターはひと息つきました。「ふう……。 やっと来られた。 あの人形も、結界も……ぜんぶ試練だったんだな。」胸の奥に、力強い鼓動が生まれていました。こわさを知りながら、それでも前へ進もうとする勇気。それが彼をここまで連れてきたのです。🌊✨ おしまい ✨🌊