サフラン色の栄光──不滅より終焉を贈るまで【おまけ】継承の刻 1扉をノックする硬い音がする。室内に集まっていた騎士団長ら3人のうち、1人が「入りたまえ」と渋い声で返事をした。3人は先の戦いで第一騎士団長を失ったため、後任者が挨拶に来ると聞かされていた。戦中のためまともな授与式も行われておらず、顔を合わせるのは初めてである。後任になったのは、かの有名な不死身の騎士。どんな苛烈な戦場も、類稀なる剣と魔術の才能で魔族を圧倒し退けたと語られている騎士だ。一体どんな巨体を構えて来るのか…と思えば。失礼します、と落ち着き払った少女の声がして、その声におおよそ相応しい身なりの人物が入ってきた。ルーヴェリア「本日より第一騎士団長に任命されました。ルーヴェリア・シュヴィ・ヴィルヘルムと申します。戦場では主に単独で行動していた為、集団戦に於いてご迷惑をおかけする事と存じます。ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」礼儀正しく、それでいてどこか、これは何と言ったらいいのか。声に色も波も無い。一瞬呆気に取られかけたものの、気を取り直して各々自己紹介をした。ディゼン「第二騎士団長、ディゼン・グードルフェンだ」大柄な男性が一歩前に出てきた。次いで、首元のチョーカーが印象的な女性が。コルセリカ「第三騎士団長、コルセリカ・メゾニア・ラマシェティー」最後に、金色のペンダントを胸元で揺らす…恐らく少年?が。マルス「第四騎士団長、マルス・ガラングス。よろしく」ルーヴェリアは頭を深く下げつつ、ちらと執務机の上を見やる。置かれているヘルムは、大きさからしてディゼンのものか。ルーヴェリア「よろしくお願いします。こちら、私の経歴書になります」持っていた書面を差し出すと、真っ先にコルセリカがそれを受け取って読み始めた。コルセリカ「どれどれ〜?経歴は…11で騎士団入隊!?…それが去年!?てことは…今12!」マルス「俺より年下!?マジかよ…」これにはディゼンも驚きを隠せないでいる。ディゼン「ここはいつから託児所になったんだ…」その言葉を聞いてマルスがむっとする。マルス「おい、俺は確かに身長は低いがこれでも18だぞ。18。立派な大人だ」コルセリカ「まあまあ。可愛い団長ちゃんが増えたと思えば」コルセリカの悪戯っぽい笑みに食ってかかる様を、ルーヴェリアは波紋ひとつ無い水面のような瞳で眺めていた。これが、後に七年守衛戦争と呼ばれる激しい戦いを生き抜いた騎士達との邂逅であった。