創作小説【祝福】第3話遠くの山間に、太陽が挟まれている。陽の光が、本日の勤めを終えようとしていた。読本を担ぎ、独り寂しく夕陽を背に歩いていると、後ろから聞き馴染みのある溌剌とした声が聞こえてきた。「マサル!途中まで一緒に帰ろう!」シゲルだ。まったく、なぜコイツはどんな時も元気なのだろうか。「シゲルか。なんだよ、なにか用なのか?」少し不機嫌に、そう答えた。「まぁそう言うなよ。おいおい、まさかさっきの事を引きずってるのか?悪かったよ。あんなにもタコみたいに、真っ赤な顔で膨れるとは思わんかったからよ!はっはっは!」なんなんだこいつは!本当に反省をしているのか?まったく憎たらしいヤツだ。「ところでよ、マサル。」数秒前とは打って変わって、神妙な顔つきでシゲルが呼びかけた。「今朝の新聞記事を読んだか?」急にどうしたのだろう。「いや、この頃立て込んでいてね。この頃あまり新聞が読めていない。それがどうかしたのかい?」そういえば今朝の新聞は、お父が読んで、そのまま処分していたっけな。「そうか、いやいいんだ。そんなことより、マサル。お前は人生の最期をどうやって過ごしたい?」本当に急にどうしたのだろう。今日のシゲルはどこかおかしい。「人生の最期か、そんなの考えたこと無かったな。そうだな、ありきたりだが、子や孫に囲まれて、眠りにつくように死を迎えたい。」すると、昼間の時のようにシゲルは笑った。「っぷはは!なんだよ普通じゃねぇか!そうか、そうだよなぁ、ははっ。」相変わらずうるさいのであるが、昼間のような憎たらしさは感じず、どこか物憂げな様子だった。「相変わらず馬鹿にしやがって。そんなに笑うような事でもないだろ?そういうお前はどうなんだよ?」そう言ってシゲルの方を見ると、彼の姿が無かった。消えた、どこに行った?少し焦って周りを見渡す。キョロキョロと首を振り、後ろを振り返ると、シゲルが夕陽を背に佇んでいた。「おいシゲル、急に止まるなよ、どうしたんだ?」目を細めてオレはシゲルにそう問いかけると、彼は少し間を置いて応えた。「ああすまない。」そして改めて、彼は息を吸い、話し出した。「俺はな、俺の最期は____」オォォォォォォォォォォォォォォォォンすると突然、サイレンが鳴り響く⬇️⬇️