共感で繋がるSNS
人気
yjk☁️

yjk☁️

『殄鎖畏(てんさい)』


とあるところに「鬼」と呼ばれた少年がいたらしい。
鬼と呼ばれてはいるものの、見るからに育ちの良さと品位を感じることができる。
不思議なものだ。グラウンドで砂まみれになりながら鬼ごっこをしていても、ドッジボールで無双して調子にのっていても――その品性が失われることはない。

無邪気な少年時代から、競争社会の入り口に立つ青年時代の狭間で、彼は運動も勉学においても非凡な才を発揮した。
周囲の中には、彼を「異常」と畏怖する者もいた。
それは、親も教師も例外ではなかった。
彼は特別なことは何もしない。ただ彼としてそこに在るだけ。なにも犯すことなく、ただそこで目を開き、耳を立て、鼻をすする……
ただそれだけのことなのに、周囲にとっては存在そのものが「圧」となった。

「わたしはあなたが怖い」

高校に入学してしばらく経った頃、担任の教師からそう言われたそうだ。
彼の中では、対話をしていただけだ。
ただ、素直に思ったことを言っていただけだ。
無論、暴言などは吐いていない。

「あなたと話していると、暴かれた気分になる」

誰かがそう言った。

「勘弁してください……」

誰かがそう言った。

「あなたにそんな人間らしい心があったなんてね」

誰かがそう言った。

そこで、少年は初めて自覚した。
自分の存在そのものが、誰かの不利益になっていることに――

本当は、彼は自制していた。
当たり前である。
彼は年頃の思春期の、普通の少年である。
感情は荒波のごとく内面を渦巻いている。
ぶちまけたい衝動を、何度も飲み込んできた。

少年は感じていた。

「誰も自分を尊重してくれない……
存在を認めてもらえない」

だが、すぐに答えを出す。

「いや、そもそも自分なんて認めてもらう必要などない。
俺は、今たしかに感じている。
この感性こそが俺を俺たらしめる。
その感覚を共有することなどできない。
これは、俺のための俺だけのものだ。

要は、周囲には見せるべき部分だけ見せていればいいのだ。
それで上手く回せる。」

それが、彼の結論だった。

本当は、彼は誰よりも知っていた。
思考は鎖なのだと。
己の存在を現世に受容させるための――

鎖を断つことは、破滅を意味する。

「さぁ、はじめようか。」

Hello world ♪


※ モ!さんの投稿作品『旗を立てる』から着想を得ました♪

#夜露死苦フェス
#当て字でことばあそび
#ことばりうむの星
#音楽をソッと置いておく人
#鎖ブンブンしたい人
GRAVITY

Hello,world!

BUMP OF CHICKEN

夜露死苦フェス 〜当て字でことばあそび〜
夜露死苦フェス 〜当て字でことばあそび〜
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY
GRAVITY30
関連検索ワード