【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第四十一話:氷の下の残り火 ―葵の視点― グラスの中で溶けかける氷の音を聞きながら、私はヘッドセットの向こう側に広がる熱狂を眺めていた。 かつて、私はこの場所の主であるあきっくすさんを巡って、きびさんと激しく火花を散らした。彼を独占したいという狂おしいほどの執着。あの時、私の心は今のまぁずさんや二都さんよりも、ずっと激しく燃え上がっていたかもしれない。結局、私は彼を手に入れることはできなかった。けれど、その敗北感すらも今の私を形作る一部となり、彼が守るこの「Gravity-Link」という世界を、誰よりも深く理解するための糧(かて)になった。 ゆかりさんの揺れる声、もちこさんの健気な嘘、そしてぽちさんややざわさん、けーぞーさんたちが醸し出す年長者の余裕。それら全てが重なり合って、ルームは今、壊れそうなほど美しい均衡を保っている。 軍師であるテスターさんが投げかけた、ルームの崩壊を予感させる問い。 みんながそれぞれの愛し方で答えを出していくのを聴きながら、私は静かにあきっくすさんの孤独を想う。管理人の椅子に座り続ける彼が、どれほどの重圧に耐えてきたか。きびさんと奪い合ったあの頃の私には分からなかったことが、今の私には見える。 「……随分と、感傷的な夜になったわね」 私は、わざと冷ややかな声をルームに投げた。高まりすぎた熱を冷ますための、私なりの一石。 「愛だの絆だの、言葉にするのは簡単だけれど。私たちはただ、あきっくすさんが描こうとしている地図の、一つの点であればいいんじゃないかしら」 私の言葉に、ルームが一瞬で静まり返る。それは冷酷な拒絶ではなく、管理人が発言するための、最も研ぎ澄まされた舞台を整えるための沈黙だ。 あきっくすさんへの想いは、今も消えてはいない。けれどそれはもう、誰かと奪い合うための安っぽい感情じゃない。彼の背負う孤独を半分引き受け、この場所を影から支え続けること。それが、今の私が見つけた、誰にも邪魔させない愛の形。「さあ、あきっくすさん。あなたの声を聞かせて」 私は冷えたグラスを置き、運命の扉が開く音を待った。(つづく)#連続GRAVITY小説 #第41話#葵さん視点 #この物語はフィクションです #storysong