【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第二章第十七話:二つの顔、崩れゆく均衡【 あきっくすルーム / 昼下がり 】 直売会の興奮冷めやらぬルームでは、今日も賑やかなログが続いていた。「昨日の余韻でまだ元気いっぱい!みんな大好き!」 特に、きびの弾けるような明るさは、会場の太陽そのものだった。 しかし、その眩しいログを眺めながら、あきっくすの胸には、昨夜現れた「カナタ」の冷ややかな言葉が、まるで残響のように響いていた。(……安っぽい善意、か) きびの言葉とカナタの声。その二つが、あきっくすの中で奇妙に連動し始める。きびの「みんな大好き」という言葉の裏に、カナタが言った「裏で何を考えているか分からない」という棘が、小さな針のように刺さるのを感じた。【 ぽちの「空白」とテスターの洞察 】 その日の午後、ようやくぽちからルームに連絡が入る。『ごめんなさい、みんな! 急に体調崩しちゃって、直売会行けなかったんです……』 いつもの元気な「わん!」もない、申し訳なさそうなメッセージ。(体調不良……? でも、カナタは『来られなくなる事情がある』って言ってたよな……) あきっくすは、ルームを静かに見守るテスターに、こっそりDMを送った。『テスターさん、少しご相談したいことが……昨日、「カナタ」という人物がルームに現れました。そして今日、ぽちさんの欠席について、まるで事情を知っているかのような発言を……何か、関係があると思いますか?』 テスターからの返信は、数秒後だった。『……興味深いですね、あきっくすさん。このルームに「異物」が紛れ込んだ、ということですか。そして、その異物が、欠席したメンバーの心情にまで踏み込んでいる、と。単なる偶然で済ませるには、少しばかり出来すぎている気がします。』 その丁寧な言葉遣いの中には、いつもの冷静沈着な響きがあった。『あきっくすさん、今は焦る必要はありません。その「カナタ」という人物が何を求めているのか、もう少し注視しておきましょう。ルームのホストとして、あなたが冷静である限り、崩れない均衡もあるはずですから。』 テスターの理知的で落ち着いた助言に、あきっくすは深く息を吐き、背筋を伸ばした。これは、ただのメンバー間の交流ではない。もっと深い場所で、何かが動き出している——。【 まぁずの独り相撲と、ゆかりの献身 】 一方、会津のまぁずは、直売会の成功の余韻に浸ることもできずにいた。(きびからの『またね!』……あれが、壁なのか?) 直売会後、勇気を出して送ったメッセージへの、きびからの完璧すぎる「仲間」としての返信。その温度差に、俺の心は完全に囚われていた。 そんな中、ゆかりからDMが届く。『まぁずさん、昨日の疲れは出ていませんか? 無理はしないでくださいね。お米の発送リスト、こちらで整理しておきましたから。ご不明な点があれば、いつでもどうぞ』 完璧なサポート。俺が今一番求めている、ビジネスパートナーとしての安心感と、人としての温かさ。(ゆかりさん……本当に、俺にはもったいないくらい、良くしてくれてる) 頭では分かっているのに。俺の心は、ゆかりのメッセージの隅々まで、きびの面影を探してしまう。この不器用な「俺」の苦悩に、まぁずは深くため息をついた。【 カナタからの「招待状」 】 深夜。あきっくすが一人、ルームのログを整理していると、スマートフォンが小さく震えた。 送信元は、やはり「カナタ」。DMだ。『あきっくすさん。気づいてるんでしょ? 昼間に見せる「太陽」の裏側には、誰にも見せられない夜があるってこと。』『あのキラキラした笑顔が、どれだけ深い闇を覆い隠しているか……』『本当の「彼女」に、会ってみる?』 挑発的な、そしてどこか冷徹なカナタの言葉。あきっくすは、返信できないまま、そのメッセージをただ見つめていた。 ルームの均衡が、静かに、そして確実に崩れ始めていた。(つづく)#連続GRAVITY小説 #第17話#カナタってだれ? #読んだらいいねが欲しい人です笑 #storysong