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読書記録です。
謎の平安前期
-桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年
榎村寛之 著
中公新書
専門的な内容を含んでいますが、9~10世紀の歴史の流れをつかめる好著です。
奈良時代に確立した、全国の土地を国有として、生産者に配って税収を上げる支配体制は、9世紀以降、国府が支配する国衙領と呼ばれる地域に限られる支配体制に変わっていった。
それ以外の地域は、地元の有力者が開拓した土地を大貴族や寺社に寄進した荘園となり、税を払わないという二重構造に変わっていく。
しかし彼ら荘園領主層もまた、大貴族や寺院に収入の一部を上納し、献物をして地位や名誉を得て、京で官位を得ていたことから、その収益も京へ回収されていった。
その意味で京と地方を結ぶ回路はより多様になり、物や人の動きはより活発になった。
新田の開発によって資産を増やした領主は、その資産を活用するために京に送る。
そして、物流の求心性が高まったことで、その核である京の消費文化が盛んになり、奈良時代より贅沢な王朝文化が花開いた。
8世紀には男性に伍して国家を支えていた女官たちのシステムはしだいに解体
↓
10世紀後半には、天皇と摂関家のお后候補として育てられた姫との結婚は、その実家になる摂関家有力者の争いとなる
かつてなら女官を目指せたような能力の高い女性たちは、女御や斎王の女房となる
↓
王朝時代の女性文学が華やかに発展したのは、女性が活躍できる場が少なくなり、サロンに集められて、本名もわからない活動をするようになったからである
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読書記録です
藤原公任
天下無双の歌人
小町谷照彦 著
角川ソフィア文庫
百人一首の
滝の音は絶えて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ
で著名な藤原公任の生涯を描いた本となっています
いわゆる「三舟の才」、漢詩、管絃、和歌いずれにも堪能で、当代随一の文化人です
祖父も父も関白太政大臣である華麗なる家系ですが、当人は藤原道長という希代の政治家に出世を阻まれ、極官は正二位権大納言でした
家柄の良さや頭の良さもあり、かなり虚栄心が高かったというエピソードがあり、道長の賛美者となり文化面では第一人者になったのも、自信家で楽天的な性格ゆえなんでしょうね
p18~21では、公任と清少納言の歌のやりとりが紹介されており、一条朝は王朝文化の黄金時代である聖代なんだなということが伝わってきます
公任は政治家としては道長の賛美者として生きたが、道長も風流文雅の道で采配をふるう公任を第一級の文化人として重用しました
平安の民が味わえる良書です
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読書しました。
百人一首
-編纂がひらく小宇宙
田渕句美子 著
岩波新書
『百人一首』に興味があったので、本書を読みました。
『百人一首』は実は藤原定家が編纂したものではなく、定家が編纂した『百人秀歌』を定本として、後世の人間が編纂して、おそらく南北朝時代の頃に成立したものであるというのが、詳しく考察されていて勉強になりました。
『百人一首』には『百人秀歌』にはない、後鳥羽院と順徳院の御製が加えられていること、歌の配列順も入れ替わっていること、その意味についても考察されており、研究書として読みごたえがある内容となっています。国文学的に解析されている内容なので、難解ですが、和歌のレトリックはこういうことなのかと勉強になります。
『百人一首』というのは、平安期皇統の始祖である天智天皇から始まって、悲劇の帝王である後鳥羽院と順徳院で終わるという、王朝文化の栄枯盛衰を語ったものであり、王朝文化の森羅万象を奏でたものであるというのがわかりました。
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