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『余白を纏う男(自称)』

黒の無地キャップに大きめの眼鏡。
トップスは黒のオーバーサイズT。
襟首にチラッと、手首にシャラッと、指先にキラッと。
さりげなく光るシルバー。
見る者が見れば「こいつ、わかってんな」と察せる、控えめな主張。

ボトムスはダークグレーのワイドパンツ。
足元は少し厚底のサンダル。
そこにベージュのトートが加わると、不思議と全体に軽さが宿る。

生来の小顔に通った鼻筋、やや広めの肩幅。
シャープな目元に、黒目の大きな瞳。
彼の視線はいつも、少し遠くにある何かを捉えようとしている。
その先に何があるのか——
つい、目で追ってしまう者もいるとかいないとか。

今、彼はとある商業施設の屋上。
ベンチに腰掛け、足を軽く開き、前屈みに肘を乗せる。
腕はだらりと垂れ、口は「ほげ〜」。
唇には、こまめに塗り直したリップクリームが重奏的な輝きを放っている。

彼は、“余白”を纏っている。

その余白に、
ある者は「呑気でいいなぁ」と憧れ、
ある者は「へぇ……」と好色の眼差しを向け、
ある者は何も言わずに通り過ぎ、
ある者は「お隣やだ」と恐れを呟く。

……最後のは、きっとアレだ。
いわゆる“ツンデレ”ってやつだ。
うん。

——今日も彼は、余白を愛している。

#ことばりうむ納涼詩会
#物語的自己演出
#余白
#自称
言葉で描く細密画 ~言葉のレンズが捉えるミクロの世界~
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