※この作品は“後編”です!ぜひ前編からお読みください。《合作作品》@モ! ×あお「キノコタウン•クロニクル(後編)」「キノコタウンが観光で大きくなったのは……表向きだったんだな」「私は弟を助ける機会をうかがいながら……人間の欲望を見てきた」ケンイチは、ゆっくりと彼女の方を向いた。「……君、名前は?」少女は少し考えたあと、静かに言った。「リナ」その名を呼ぶと、不思議と胸の奥があたたかくなった。リナもまた、同じ感覚を抱いていた。不安も恐れも、すこしだけ溶けていくような――心の波長が重なる瞬間だった。「リナ、君はジョーと……外に出るんだ。僕が道を開く」「でも、それじゃ……あなたが!」リナの声が震える。「人間は、弱い生き物だ。でも、弱いままでも……いいと思う」ケンイチは小さく笑った。「僕は、それを残したいんだ」警告灯が赤く点滅し、空気が震え始める。「ジョー、リナを頼んだ!」リナは泣きながらケンイチの腕をつかんだ。「行かないで! 一緒に来て!」ケンイチはその手を、そっと外す。「リナ……君に、空を取り戻してほしい」一瞬、二人の手が重なった。光の粒が、二人のあいだに舞い落ちる。時間が止まったような静寂のなかで、ケンイチは微笑んだ。「──さよなら」光が弾け、制御装置が破壊される。外へとつながる道が開かれ、リナとジョーの姿は空の向こうへ消えていった。――夜が明け、銀色の殻は静かにしぼみ、ただの石のようになった。風が通り抜けるたび、かすかに光が滲む。それが誰の記憶なのか、もう誰にもわからない。町は目を覚まし、いつもの朝がはじまる。ただひとつ、空のどこかで、微かな音が響いた。それは、名前を持たぬ祈りのようだった。ーーーー「つまり、どういうこと?」ケンイチくんは口についたケチャップを紙ナプキンでぬぐい、それを丸めた。「だからさ、許せねえってことよ!」怒声を帯びた涼やかな声だった。白いワンピースを着たリナは、Mと刻印された紙コップの中のシェイクをストローで吸い上げていた。口元にはマスタードがついていた。その横にはジョージ・クルーニーがフライドポテトを摘んでいた。ジョージ・クルーニーの隣には、白面の美少年が恥ずかしそうに座っていたそこはキアラ市にあるバーガーショップ。その一角でハンバーグとポテトとシェイクを飲む4人がいた。ギャラリーがこの4人をして、遠巻きにわいわいしている。「あそこにいるのはジョージ・クルーニーじゃない!?」「横に天使のコスプレの女の子もいる」「その横は子役かな?普通の少年がいる」「もう1人男装の女の子が居る。綺麗な子だな」「、、、。ケンイチくん。今、聞こえてきた男装の女の子って我の事かなもし?」白面の美少年が小声でケンイチくんに話しかける。一人称が我は珍しいと思いつつ、ケンイチくんはこう言った「もしそうなると、普通の少年ってのは僕か」ケンイチくんは少し面白くなさそうに言った。ジョージ・クルーニーは卓上の新しい紙包みを鷲掴みにして、丁寧に開き、中のハンバーガーにかぶり付いた。「俺は気にしてないよ」リナは穢れなき灰色の瞳を真顔のジョージに差し向けて言った。「私が気にするってんだよ!」リナは心を開くと姉御肌の江戸っ子のように話す女性だった。ケンイチくんもそれに加わった「僕もギャラリーに注目されるのは恥ずかしいな」リナは右手でケンイチくんの肩を叩いた「そうじゃないっての!」白面の美少年は頬を赤く染め、消え入るように言った。「我も恥ずかしい」リナは、「弟よ!お前もか!?」ジュリアスシーザーの今際の際のような事を言った。ジョージは言った。「俺は慣れてる」衆目監視の目には、を省略してジョージは言った。リナは穢れなき瞳を怒らせてジョージを見た「お前も、、、。お前たち何聞いてたんだ!」よこせとばかりに、リナはジョージの手からハンバーガーを略奪し、一口食べられたハンバーガーをガブリと噛み付いた。ジョージは一瞬目をむいて抗議しただけで、卓上の新しいチーズバーガーを手に取り、黙ってこれを食べた。「キノコタウンの幹部どもが気に入らないの、私は!」リナは大声で言った。ギャラリーたちが一瞬静かになる。リナはその視線に気がつくと、にっこり笑ってギャラリーに手を振る。そして小声になり言った。「弟にやったことも気に入らないし、あの3人が不老不死になってるのも気に入らない。現在進行形で俄然気に入らない!」ジョージは正面を見ながらチーズバーガーを齧り齧り言った。「3人って、町長と副町長と神主のことだろ?」「そう!」怒気をはらんでいたものの、リナは簡単に返事した。白面の美少年は身を乗り出して、ジョージ・クルーニー越しにリナに話しかける。絹のような髪の毛がさらりと流れる。「姉様、我はこの通り元気だし、我らがいなくなったら、あいつらにできることなんて、何もないとおもうぞよ」リナは唇を尖らせた「あんた、散々拷問されて、血と涙を搾り取られただろう?」ジョージはピクリと震え、突然チーズバーガーを齧るのをやめた。リナはジョージが今の言葉を感じるところがあったのだろうと少し微笑んだ。リナはジョージの中の義憤に期待していた。ジョージはチーズバーガーを見つめながらこう言った。「ピクルスが入ってる」思惑から大きく外れたリナは目を瞑りワナワナ震えながら俯いた。「それ僕のチーズバーガーじゃない?」ケンイチくんは、自分のトレイの中のチーズバーガーの紙包を解き、バンズを剥がしてみた。果たしてそこには乗ってるべきピクルスがなかった。「そっちが僕のだ」とケンイチくんは言った。ジョージはうんうんと頷いて、半分になった手元のチーズバーガーをケンイチくんのトレイに乗せ、ケンイチくんの解体されたチーズバーがを復元して、つまりバンズを戻して、自分のトレイへと乗せた。「それはないんじゃないの?」ケンイチくんは、自分のトレイに残された半分食べられたチーズバーガーを睨み、語尾をあげて文句を言った。「俺は気にしないよ」ジョージは真顔のまま、新品になったチーズバーガーをモグモグしていた。横に居る弟はコロコロ笑った。「おい!」と、リナが言う。「気にしろよ!」リナが左手でジョージの肩を揺すった。「どっち?」ゆらゆら揺すぶられながらジョージは尋ねた。リナは優しく微笑んでこれに答える。「それは、もちろんハンバーガーのことよ。半分食べたハンバーガーをケンイチくんに渡して、自分は新品のハンバーガーを取っちゃうなんて酷いわ、、、。ってそんなわけあるか!」リナは紙ナプキンを丸めて、トレイに叩きつけた。ジョージは真顔だがちょっと背中を弓なりに反らした。「過去だよ、弟が虐待された過去!ジョージ!お前も私とあのキノコの中でずっとみてきただろう!?」ジョージは目を瞑って頷いた。「そっちね」弟は白魚のような手を伸ばし、チキンナゲットを口へと運んだ「姉様、これはとても美味しい。我は気に入った」とうとう、リナは激怒した。不甲斐ない男たちを導いてやらねばならぬと決意した。「お前らもうマックのことは忘れろ!こっからはあのキノコタウンの幹部たちに立ち向かう復讐譚だよ!」ジョージはナプキンで口を拭うとこんなことを言った。「リナは人間の欲望を見続けていたし、弟は吊るし切りをされるアンコウのように悲惨な拷問をされていた。2人とも怒らない方が嘘だよな」リナは、急に物分かりが良くなったジョージの態度に目を丸くした。弟は黒とうとうとした瞳を差し向け、長いまつ毛のまま、アンコウのとは何かをケンイチくんに尋ねた。ケンイチくんはすまないが知らないとリナの弟へ答えた。「我も、」弟は夢見るような唇を動かした。「我も、あの者たちは、我の羽をもぎ、足を折り、血と涙を搾り取った者たちは、許すことはできぬ」リナは片眉を上げた。弟もまた急に物分かりが良くなったことに感じ入り、また言葉の内容にも感じ入ったため、眉だけで返答し、口は沈黙を貫いていた。ケンイチくんもボソリと呟いた。「キノコタウン出身の僕からしたら、町長達は家族同然だけど、家族同然だからこそ許しては行けない事がある。」「お前たち、、、。」リナは目を潤ませていた。「やっとわかってくれたんだな」***「目には目を、歯には歯を――それでいいのか?」ジョージ・クルーニーが、先ほどとはまるで違う静かな声でつぶやいた。「リアムはこんな目にあったんだよ!おまけに、不老不死の力も手に入れて…。黙ってられる訳ないじゃない!」リナは叫んだ。「パp……ジョーは悔しくないの?」「パp?」ケンイチがすかさずツッコむ。「あー、えっと、うーん。もういっか! あのね、私たちの“パパ”なの。追放したのに心配で、こっそりついてきちゃった(笑)。完全に親バカだよね(笑)」リナは苦笑しながら、「ジョージ・クルーニーの顔がすっごく好きだったみたいで…」と付け足す。「だから、作者さんはだいぶジョージ・クルーニーに苦しめられてたみたいだけど、偽物だから安心して(笑)。あ、でも一応、神様なんだよ(笑)」「えぇぇぇぇーーっ!?」ケンイチが絶叫する。「今までのは何だったの!? 演技?」とジョーを見やると、彼は素知らぬ顔でポテトをちびちび食べていた。「ってか、神様なら、不老不死の力を奪えないの?」ケンイチが半ば冗談のように言う。ジョーはポテトを口に運ぶ手を止め、ふっと遠くを見た。「不老不死は――神の罰なんだ。永遠に“死ねない”ことこそ、最大の業(カルマ)だよ。」ジョーは微かに笑った。「……そう思わんかね?」#欲望の果て#カルマ#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル