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アメジスト
読書記録です。
「日本」とは何か
網野善彦 著
講談社学術文庫
「日本」は決して単一民族の国家ではなく、東日本と西日本は決して均質の国家ではなく、稲作中心社会ですらなかったということを、学術的に明らかにしようとしている内容となっています。
689年の浄御原令もしくは701年の大宝律令を持って「日本」の建国、天皇制度の成立とし、それ以前は倭国、倭王と呼ぶのが妥当であるというのは賛同します。
建国記念の日も架空の人物である神武天皇が即位したとされる2/11で本当に妥当がどうかというのも考えさせられました。
日の丸、君が代についても軍国主義の色がついていた歴史があるということは忘れてはいけないなと思いました。
鎌倉や江戸も源頼朝や徳川家康がいきなりつくった町ではなく、それ以前から海の交通の要衝として発展していた町であるという歴史があるということは勉強になりました。
第4章においては、百姓は農民だけではない、漁村もあり、瑞穂の国とは別の側面もある。
漁業を生業とする人々、廻船業、山間部の杣人(そまびと)や炭焼きの民、それから、養蚕業、商業、手工業者などがいて、年貢もコメだけではないという多様性のある国であるということを浮き彫りにして、瑞穂の国であるということを強調することは、本来、日本が持っている多様性が見えなくなる危険性があるということを論じています。
日本を天皇を中心とする国であると考えるのは、天皇が新嘗祭に代表される行事によって、「稲作文化」を中心に統べるということを強調することから、多文化共生に反する危険性があると思いました。
本書のタイトルである「日本」とは何かということを、あえて定義をするのは危険なことなのかもしれません。
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アメジスト
読書記録です
幻影の明治
名もなき人びとの肖像
渡辺京二 著
平凡社ライブラリー
第1章で明治時代の負の側面
貧民窟や明治時代の刑事司法の強圧的で残忍であることが述べられているのが良かったです
第2章では下層民だからこその気概
あたしどもは天下国家の問題とは何の関わりもなく生きて来たし、これからもいきてみせますよという、一寸の虫の気概
そびえたつ政治や文化の構築物に対する基層の民の自立性
天下国家のレベルと関わりなく自立した生活圏に生きているのが、基層的民衆の本質なのである
ということが述べられており、痛快です
第3章
江戸時代と明治時代の最大の相違点
江戸時代においては
統治者以外の民衆はおのれの生活圏で一生を終えて、国家的大事にかかわる必要がなく、不本意にもかかわらねばならぬときは天災のごとくやりすごすだけである
幕末の日本人大衆は、馬関戦争では外国軍隊の弾丸運びに協力して、それが売国の所業だなどとはまったく考えていなかった
戊辰戦争で会津藩が官軍に攻められたとき、会津の百姓は官軍に傭われて平気の平左だった
天下国家は統治者階級の問題で、民衆の関知するところではなかったのだ
明治時代においては
国民は国家的大事にすべて有責として自覚的にかかわることが求められた
日清・日露の役で無理やり朝鮮半島を日本の支配下に置く必要があったのか
国家のために大勢の国民が犠牲になったことについて大義はあったのか
ということについて考えさせられました
第4章
士族反乱というのは
大久保利通を中心とする政府中枢の横暴のもと、何回も政変が起きて、追いやられた人々がもう一度、御一新をやり直せと立ち上がったものである
それは、農民の伝統的な支配者不信と通底していた
士族の特権回復のためという通説だけではない、官という泥棒に対して一矢報いるためという大義もあったということを感じました
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アメジスト
読書記録です
イザベラ・バードの旅
『日本奥地紀行』を読む
宮本常一 著
講談社学術文庫
明治11年の関東・東北・北海道南部を旅したイザベラ・バードの著作を通じて、今は亡き古えの日本を感じ、また、イザベラ・バードのキリスト教的博愛精神に感謝の念を感じる内容となっています
東北やアイヌの方々が初めて出会った異人さんがイザベラ・バードだったのは、とても幸運なことだったと思います
行く先々で、手持ちの薬で子供たちの皮膚病を治したのは、キリスト教的博愛精神と西洋医学の面目躍如ですね
江戸しぐさという存在しないものをでっち上げ、古えの日本は偉大だったということを強調する危険思想を打倒するために、読まれるべき本だと思います
昔の日本人の身なりは汚かったということは、現代の日本人として知っておくべきだと感じました
昔の日本人は替えの着替える服を持っていなかったので、ノミがたくさんいて、皮膚病を患っている人がとても多かったのです
ねぶた祭りの起源は、ノミによる寝不足解消を祈願することでした
旅行中の女性がかぶる傘には白い布がついていますが、あれは虫除けだそうです
そもそも農村部にはお風呂がありませんでした
とても貧しい世界があったということは知ってくべきことだと思います
同行者の通訳の伊藤がアイヌに対して犬呼ばわりする差別は、現代の日本における顕著な排外主義に通じる根深さを感じました
対して、イザベラ・バードは病気のアイヌの女性に対して自分が持っている薬を与えたりなどして、献身的に尽くしました
イザベラ・バードがみせたヒューマニスティックな態度こそが、日本人に決定的に欠けているところです
歴史は繰り返すといいますが、最近の日本は社会情勢が急激に不安定化し、100年前の惨劇を再び繰り返そうとしているかのような勢いです
今こそ、真摯に歴史に学ぶ態度が求められます
警察官が市民に対してとても横柄なのは、明治における警察官の起源が士族階級だったからだそうです
先日もTVにおいて、自転車が歩道を走っただけで取り締まりをしているのをみました
自転車通行レーンもつくらないくせに、自転車が歩道を走ったら取りしまるぞというのは、酷い弱いものいじめだと思います
警察の日の丸親方的な体質、市民を締め付けようとする体質に憤慨を覚えます
本書を通じて、外国人の目を通じて、日本を客観的に見る態度というのが大切なことだと思いました
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アメジスト
読書記録です。
キリスト教の本質
「不在の神」はいかにして生まれたか
加藤隆 著
NHK出版新書
前半部に関してはユダヤ教の歴史の概観を見渡すことができるのでいいと思います。
ただ後半部の比較文明論を披露して、西洋は支配する者、される者の二重構造になっている一方で、日本は和の文化だといって日本上げしているのは、老害の症状が出てしまった感じがして残念です。
比較文明論的にいえば、西洋は神と共に生きて人々を信頼してチャリティー文化が盛んな一方で、日本は、目に見えるお金や富を信用する文化で、金持ちは守銭奴でチャリティー文化は低調と言うこともできるのではないでしょうか。
日本の場合は、神という支えがなく、無条件の愛というのを信頼することができないから、自己信頼や他者信頼というのを醸成しにくく、実際の物やお金あるいは仕事上の関係で信用する条件付きの愛を構築するのが精一杯だから、心の病が国民病になっているとも考えられるのではないでしょうか。
イエス様を見習いたいという信頼感を持っている西洋人に対して、日本人は信頼感を持てる存在を持ちにくいというみかたもできるかもしれません。
日本の宗教を遠ざける文化が実は日本人を構造的に不幸にしている、日本人が幸せを感じにくい精神性にしているというパースペクティブまで持つというのが、比較文明論を論じる真摯な態度なのではないかと思いました。
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