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大介

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#詩的散文 #断章形式
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『静けさの残響』

第三章:「音のない喪失」

夢が、
遠ざかっていったあと、
時は、静かに積もっていた。

午後の光は、
あの日と同じように、
庭の石を照らしていたけれど、
咲いていたはずの花の影も、
もう、そこにはなかった。

わたしたちは、
手にしたはずのものが、
指先から、こぼれ落ち、
薄れていくのを、ただ、見ていた。

こぼれ落ちた夢の残響は、
夕暮れの空気のなかで、
ひとしずくの静けさとなって、
静かに、消えていった。

そして、
その静けさだけが、
ただひとつ、
手に残るぬくもりのように──
今もなお、
わたしのなかに、
息づいている。


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大介

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『静けさの残響』

第二章:「記憶の綾」

あの夢の話をしたとき、
あなたは、
屋根の色を語った。

わたしは、
揺れるもののそよぎに身をゆだねていたけれど、
あなたは、
風の冷たさだけを残した。

あれは、
同じ夢だった──
そう、ふたりは思っていた。

けれども、
その夢のなかのまどろみが、
ふたりを──
すれ違わせていた。



夢は、
絵のなかで言葉を失ったまま、
そこにあった。

その沈黙は、
見つめるたびに、
かつての彩りを忘れながら、
すこしずつ、
別の絵を描いていた。


それは、もう──
ふたりの絵ではなかった。


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『静けさの残響』 

第一章:「夢のかたち」

午後の光のなかで──
わたしたちは、
同じ夢を見ていたような、
そんな気配に包まれていた。

それは、
遠くの庭先で、
咲いていたはずの花、
風にほどけた布、
指先に触れかけた記憶の縁。

けれども、
それがほんとうに同じ夢だったのか──
もう、誰にも、確かめようがなかった。

ただ、
その淋しげな錯覚のなかで、
わたしたちは、
目を伏せたままの微笑で交わした約束を、
そっと手にしたような気がしていた。

そしてそれは、
暮れゆく日のなかで、
誰にも届かぬ、
過ぎ去った一片の想いのように、
いまも、どこかで、
ひっそりと、漂っている。


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daisuke107

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『せめて、忘れぬように──』

  《回想録》 〜彼女と私との日々〜



あの夏の日から、
風の音がどこか遠くなった気がする。
午後の光のなかで、ふと縁側に腰をおろすと、白いカーテンがふくらみ、肩を撫でてゆく。
そのたびに、私は目を細めて、
あの日の彼女を思い出す。



たしか、
あのときもこんな風だった。
彼女はひとり、縁側に座っていた。
風がカーテンを揺らし、
それが肩にふれるたび、
彼女は遠くを見つめていた。
「……いつかと、同じ匂いがする──」
そうつぶやいたあと、言葉は続かなかった。
記憶は、思い出そうとするほどに、
夢のなかで読んだ、雨に濡れた手紙のように、言葉はにじんでいった。

 

私はそっと、彼女の隣に座った。
風の音だけが、ふたりのあいだにあった。
それは、
もう戻らない時間だった。
あの午後の光も、あの声の調子も。
失われたものは、綴られることなく、
ただ、胸の奥で、風のように鳴っていた。

 

彼女は、ふと笑って言った。
「ねえ、あのとき──私たち、何を話していたのかな…」
私は答えられなかった。
言葉は、もうそこにはなかった。
ただ、静寂だけが、やさしく私たちを包んでいた。

 

いま、私は立ち止まっている。
なぞるのではなく、喪失のなかに、
ひとつの祈りを置くために。
もう戻らぬものたちのために。

 

そして、
彼女が見つめていた、
あの遠い景色を思いながら、
私はそっと目を閉じる。
風のなかに、かすかに残る
あのときの気配の名残を、
せめて、忘れぬように──



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