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ほむ
家に帰るにもこんな状態じゃ……と男が思っていると、寺が見えた。
それは救いのように思えた。
男は転がり込むように娘を連れて、住職の家に向かい呼び鈴を鳴らす。
出てきた住職は娘の様子を見るなり、男を怒鳴りつけるように「何をやった!」と問う。
経緯を話すと住職は残念そうな顔をして、気休め程度にしかならんと言いつつ経を唱えて背中を叩いた。
住職は男に語った、娘に取り憑いたものを。
それはヤマノケという、女に取り付き、正気を失わせるものだった。
49日間そのままだったら、一生このまま。
そのまま帰れば女房にも憑いただろうと。
男は住職と共に電話で妻に説明をし、娘を預けることにした。一縷の望みに賭けて。
一週間経ったが、娘は未だに戻っていない。
さて、お話はこれにて終了でございます。
皆さまはこのお話を見聞きしてどう感じたのでしょうかね、私にはどうも一体の妖怪が脳裏を掠めましてね。
『一本だたら』
という妖怪をご存知でしょうかね?
一本の足を持ち、皿のような目を持つ妖怪と知られております。
この1本だたら、寒い時期、果ての20日に現れるとされておりましてね。
このヤマノケの話も元のお話ではどうも寒いらしく、寒さをしのぎながら、と描写があるんですな。
一本だたらは襲ったり襲わなかったり諸説ありましてな、しかし共通するのは一本足で変な歩き方をする所でしょうかね。
対処法は特にないとされております。
女人を嫌う山の神、一本だたらが混ざって産まれたのがヤマノケではないかな、と私は思っております。
テンソウメツ、は縳操滅ではないかなと私は考えております。
縛り、操り、一族を滅する、そういう呪物なのでは無いかなと思いながら初め読ませていただきました。
動くコトリバコなのでは無いかなと、そう考えると恐ろしいですな。
姦姦蛇螺(カンカンダラ)のように、朱に交われば赤くなるのやもしれません。
一本だたらも何か強い怨念に触れてそうなってしまったのかもしれませんね。
悪意が人を変化させることはよくあること、神や物の怪を変化させてもおかしくはありませぬ。
呪いとは恐ろしきもの、皆さまも呪われぬようにお気をつけてくださいませ。
では、今宵は長くなってしまいましたがこの辺で。
お疲れ様でございます。
ほむ
#ほむさんの怪談の楽しみかた続き
如何でしたか?
皆さまの知っている話でしたでしょうか?
ハーメルンの笛吹き男は書き手に寄って結末が変化いたしますゆえ、目が悪い子と耳が悪い子は連れていかれなかった等の結末がございます。
グリム兄弟等の作家の手に寄って変えられていったハーメルンの笛吹き男、正解は後ほどにして少し語っていきましょうかね。
それではまず、ハーメルンの笛吹き男の原典を語りましょう。実際に会った事を裏付ける記録を。
1284年、聖ヨハネとパウロの記念日
6月の26日
色とりどりの衣装で着飾った笛吹き男に
130人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され
コッペンの近くの処刑の場所でいなくなった
これが原典でございます。
ネズミも報酬も出てはきません。
ちなみにコッペンは丘を意味します。
学者達が調べても何も出てきませんでした、ネズミが話に出始めたのは1559年頃だそうです。
学者等は色々な説を立てました、舞踏病、十字軍、巡礼、溺死、疫病、戦死、そして移住。
現在の説では移住説が強く支持されております。
何故ならハーメルンの周りの村や町から様々な証拠がでてきたからでございます。
そしてその証拠から130名は両親も含めて、自らの意思でハーメルンを去って新しい住居を開拓する為に旅だったとされております。
その当時のハーメルンは相当な人口を抱えていたとも言われておりまする。
ハーメルンの子とは、ハーメルンで生まれ育った人達を指し、愛ゆえの深さから悲劇として記録に残したのでございましょう。
しかしながら、これも一説に過ぎないのでございます。真相は笛の音の中に潜み、ヴェーザー川のみぞ知るのです。
では、今宵の話はこれまで。
ハーメルンの子らに想いを馳せながら終わるといたしましょう。
今宵はじょるじんP様のハーメルンの悪夢を添えて、お疲れ様でございました。
ハーメルンの悪夢
ほむ
#ほむさんの怪談の楽しみかた続き
『ハーメルンの笛吹き男』
1284年、ハーメルンではネズミが多く発生していた。
そのせいで糞害がおき、小麦は齧られて町民は皆困っていた。
そこに一人の男がやってきた、色とりどりの服を着た目を引く男だ。
男は町民に言う「ネズミを一匹残らず退治してみせましょう、その代わりに報酬をいただきたい」と。
町民はそんなことは不可能だと思った。
男の言葉は信じず、碌に相手にするのも馬鹿馬鹿しいと「できるものなら報酬をやろう」と言った。
男はその言葉を聞くと笛に口をつけ、演奏を始めた。
そのまま男はハーメルンの大通りを歩く、するとーーどこからとも無くネズミの群れが現れて男について行く、それはさながらネズミのパレードのようであった。
男はそのまま歩き続ける、ハーメルンのネズミを連れて。
男はヴェーザー川に着いても歩みを止めず、川の中に入っていく。
すると、驚くことにネズミも一緒に川へと入っていくではないか。
全てのネズミがヴェーザー川に沈むと、男は町民に報酬を要求した。
しかし、町民は誰一人として男に報酬を支払わなかった。
そのことに男は激怒した。
「なら、お前達の大切なものを頂こう」
男はそう捨て台詞を吐くと、一旦はハーメルンから姿を消した。
翌日の6月26日の朝、男はハーメルンに現れる。
町民が教会にいる間に、ネズミを誘い出した時と同じように笛を奏でた。
すると、今度は町の少年少女、果ては青年までもが男の後を着いて行く。
130人のパレード、男の奏でる笛によって作られる子供たちを誘惑するパレード。
少年少女たちは男の後に続いて町を出て行く、そしてそのまま市外の山腹にある洞穴の中へと入っていった。
それから内側から岩で穴を塞がれ、笛吹き男も子供たちも、二度とは戻ってこなかったという。
ほむ
『ヤマノケ』
娘を連れてドライブに行った男がいた。
なんてことない山道を進み、ドライブインで昼食を摂る。よくある親子の休日。
男性というのは中々に少年心を捨てられないもので、冒険心と悪戯心を胸に娘の制止をからかいつつ車を獣道で走らせた。
車に無理を強いたせいか、はたまた山の神の癪に触れたのか、急にエンジンが止まってしまった。
これには娘も男も途方に暮れるしかない。
山の奥に入ったせいで電波は届かず、男には車の知識がないもんで直すに直せずいた。
仕方が無いのでその日は車中泊し、朝になったらドライブインまで山を下ることにした。
夜になり、娘は助手席で眠りについた。
男は眠れずに夜の山の静寂に耳を傾けていた、その時だった、不気味な音が聞こえた。
「テン……ソウ……メツ」
男はその音にゾッとしたが、気のせいだと思うことにして眠りに着こうとした。
その不気味な音は鳴り止まない、むしろ近づいているようだった。
男はたまらずに目を開けた。
外に何かがいるのがわかった。
白いのっぺりとして1本足の何かが、とん、とん、と飛ぶように近づいてくる。
両腕のようなものをめちゃくちゃに揺らしながら。
男は恐怖で叫びそうになったが、その時ふと思ったのだ。
『娘を起こしてはいけない』
男は叫ぶのはぐっと堪えて、その化け物が去るのを待った。不気味な音も続いている。
どうも車の脇を通っていくようだーー。
後ろを確認して、それから娘の眠る助手席を確認するとソレはいた。
顔がないと思ったがソレの顔は腹にあった。
ソレは恐ろしい顔でニタニタと笑っていた。
男は恐怖よりも、ソレが娘に近付いた怒りがフツフツと腹の中で湧いてきた。
"起こしてはいけない"その直感を忘れてソレに怒鳴りつけた。
「このやろう!」
するとソレは消えて、娘がビクリと飛び起きる。
娘を起こしてしまったと思い、男は謝ろうとしたが娘が口を開く。
「はいれたはいれたはいれたはいれた」
ヤバいと思い、男は無理にエンジンを起こす、するとあっさりとエンジンは掛かった。
娘はまだ呟いている。
人がいるところに行きたくて車を飛ばす、娘の呟きはいつの間にか「テン……ソウ……メツ」になっていた。
表情もいつもの娘の顔とは違っている。
ほむ
#一夜目
#ほむさんの怪談の楽しみかた
こんばんは。
最近何か一つ始めてみようかと思い、思い切って投稿させていただくことにいたしました。
今はデジタルの時代、ちとアナログに帰ってみようじゃないか。と思い、怪談をひとつをば、しかしながら書き手が気まぐれなものでね。
それに怪談をただ語るだけじゃあ面白くない。
ほむさんなりのエッセンスをね、混ぜたいと思っております。
この時点で「この書き方、語り方無理!」と感じたならお帰りを、この調子で続きますゆえ。
それでは一つ、私めに時間を下されば。
ほむさんはね、ネット老人でしてね。
2chや2chまとめブログ等を良く拝見していましてね。
AA(アスキーアート)オカルト板、だったか、そこで目にした文言が忘れられなくてですね。
「盲雨、盲雨、愛した男が帰ってこない」
めくらあめ、今の時期にピッタリの言葉ではありませんか。
風情無い言い方ならゲリラ豪雨でしょうかね。
梅雨独特の雨が降り出す前の蒸し焼けるような暑さ、雨風吹かれた時の人肌の恋しさ。
確か続きがあったような気がしますが……残念ながら強烈に残ったのはこの言葉のみでした。
しかしながら、今の時代、天気予報は正確で分単位で予測できるもの、雨風に吹かれる機会は今の時代ではほとんどありません。
しかし雨は昔も今も変わらぬもの、変わって行くのは人と時代背景のみでございますね。
男女の愛もその一つでございましょう。
ならば語る話は一つでしょうな。
『やろか水』
水辺の怪談はよくある物です。
日本の水辺の怪談での有名どころは河童、イワナ坊主、船幽霊、海坊主辺りでしょうかね。
近代都市伝説だとカシマさん(ひきこさん)の目撃情報が川辺でしたかね?
水と幽霊は相性が良いものです。
そして件のやろか水、愛知県に伝わる昔話、怪談となっておりましてね。
木曽川が舞台のお話となっております。
それでは、本題は次の投稿でどうぞ。
#ほむさんの怪談の楽しみかた続き で投稿いたしますね。
ほむ
#四夜目
はい、またお会い出来ましたね?
それはそれは嬉しゅうございます。
今回は私めの感想等を語りたいと思います。
友人の友達が見たものは何か、愛犬が見たものは何か、体験者と友人は分かりませんでした。
創作物だから分からないフリをした、であって欲しいお話でございますね。
私には一つ心当たりがありまする、怪談好きならご存知かもしれませんね。
『海難法師』
水難事故にあって亡くなった者だとされ、本来であればタライに乗って来て家々を覗いていくのだそう。
見れば同じ死に様を味わうことになるという。
その際に魔除として籠や笠、あるいは柊やトベラという植物を戸に飾るそうですね。
そしてその日は夜に出歩いては行けないとされています。
そして海難法師自体も昔話にございます。
伊豆大島でのお話で、寛永5年旧暦の一月二十四日のお話だそうな。
悪代官と25人の若者が出てくる話で、25人の若者は皆亡くなり怨念となったそうな。
その霊の名を日忌様と呼び、話の発祥地とされる伊豆大島の泉津地区にはこの日忌様の祠が祀られておられます。
神津島に限っては「二十五日様神事」として闇夜に神職が海からの来訪神を迎え、集落内・辻々の猿田彦神を巡拝する厳格な神事となっている、とWikipediaには載っております。
過去に見た日本昔ばなしやこの話を読んだ曖昧な記憶で語るのは良くないと思い、Wikipediaを拝見させていただきました。
しかしながら海とは怖いもの、見つけて欲しくて水死体の方から寄ってくることもあるそうな。
私は夜の海には行ったことがないので本当かどうかは分かりませぬ。
ですが、そうですね……海で死んだら、見つけて欲しくて生者に近付いて行ってしまうでしょうな。
海の中は寒そうです、皆さまもそうではありませんかな?
鰭が着いていれば、そうはならないかもしれませんな。
では、今宵の話はこれにて。
最後まで、ご清聴ありがとうございました。
お疲れ様でございます。
良き夜を過ごされますよう、祈っております。
ほむ
#怪談
#二夜目
#ほむさんの怪談の楽しみかた
こんばんは。
初めましての方も二度目の方も、今日も怪談を楽しめればな、と思い語ってまいります。
私めの怪談はね、ただ怪談を怖いと受け止めるだけでなく、深堀だったり考察なんかを交えつつ楽しんで行こうじゃあないかと。
癖の強い投稿なんでね、受け付けんという方はお帰りなさってくださいな。
前回は『やろか水』というね、少しマイナー所でしたのでね、次は有名どころでも語ろうじゃないかと思いましてね。
前は川の話でしたね、川と言えば夏の遊び場、夏の思い出と言えば山海川ですな。
私は海によく遊びに行ったものです、何せ住まいが山でしたので毎日がキャンプのよう。
山というのは神聖な場所でもあり、異界でもありましてね。土着宗教でも蛭子様(漂流物)とお山を神聖視するのはよくある話。
山は獣害や土砂崩れや険しい道が続くもんですから、女人禁制とした山もある程ですな。
嗚呼、姥捨山も有名所の一つでございますな。
そんな聖域と呪場が交わる場所に、怪談が無い訳がございません。
山を題材とした話が多い中、今宵の話を一つ選ばせていただきました。
では、前置きは終わりにして本題へ参りましょうか。
それでは、どうぞ聞いて行ってくださいな。
『ヤマノケ』
文字数制限を考慮して続きは#ほむさんの怪談の楽しみかた続き にて。
今回は本題が長いので投稿が三つになったら申し訳なく思いますが、お時間いただければ幸いです。
ほむ
『海から来るもの』
それは深夜のことだった。
犬の吠える声で目を覚ますと周囲が生臭い、愛犬を落ち着かせようとその方へと向くと異常なものを見た。
黒いモヤのような、なんとも形容しがたいものが海から這いずり出てきて民家の近くにいる。
いや、出てきていない。
まだ体は海に浸かっており、まるで大きな蛇か縄だ。
それがゆっくりと動きながら家を覗こうとしている。
愛犬の異常に友達も起き、その怪異を見た友達が叫んだ。
「おい!!早く車出せ!!!!」
友人もハッとしたが、怪異もピタリと動きを止める。そしてゆっくりとこちらを向こうとした。
その顔を見てはいけない。
直感が働いた友人は友達が言ったように車のエンジンを掛ける。
途中で愛犬の何かを詰まらせたような鳴き声がしたが、友人は振り向けなかった。
愛犬の異常だが、振り向いてはいけないという強い考えが頭を支配していた。
しかし友達は犬の異常に振り向いてしまう。
友人は気がつくと「おいバカ!絶対に振り向くな!!」と怒鳴りつけて前を向かせた。
それから必死に車を走らせた。
何とか二人と一匹は生きて帰れたものの、友達はあの日のことを聞くと情緒不安定になり、要領を得ない言葉を言う。
愛犬は狂ったように鳴き叫び、赤の他人にも噛み付くようになってしまった。
可哀想だったが、こうなってしまっては仕方がなく、愛犬には眠ってもらうことにした。
それから、二度と海には行かないと決めたのだという。
如何でしたか?
お話はこれにて終いでございます。
文字数制限の都合によりほむさんの感想は次の投稿になります。
興味があれば、またお会いしましょうね。
ほむ
#怪談
#三夜目
#ほむさんの怪談の楽しみかた
こんばんは。
今宵で三度目となります、ほむさんの怪談の楽しみかた。
三というのは昔話、宗教、神話、伝承でも重要な数字になっておりましてね。
二度あることは三度ある、仏の顔も三度まで、そんな諺から、八咫烏の様な神聖な生き物まで多岐に渡ります。
三は割り切れない数字であるからとよく言われておりますな。
縁起がいい、縁起物、それが三でございます。
そんな三夜目ですから、恐ろしい話よりは興味深い話をするのが良いのでは無いかなと思いましてね。
小話にて投稿させていただいておりました海外のね、お話をするのも新しい切っ掛けとなって宜しいのではないかなと。
それって怪談? とも思うかもしれませんね、でも世の中には人怖というジャンルもございますゆえ、怖い方には怖い話かもしれませんね。
最近の流行りですと人魚が話題ですな。
ヒラヒラと揺れる鰭がなんとも優雅で、魅了されてしまうのもわかるもの。
私も一度は更紗琉金に魅了されましたゆえ。
しかし、お話が語り継がれていく内に話に変化が出てくることを、噂に尾鰭が付くとも言いますね。
尾鰭がつき、元の形とは全く変わった海外のお話があることを皆さまはご存知でございましょうかね?
おそらく皆さま、一度は聞いたことがあるでしょう。とても有名で、実話だった童話。
人の噂も七十五日とは誰が言ったのでしょうかね?
今日まで日本で違う形で語られ続ける童話。
では、今宵のお話を語りましょうか。
『ハーメルンの笛吹き男』
続きはね、文字数制限を考慮して#ほむさんの怪談の楽しみかた続き で投稿させていただきます。
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