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哲

#その3
#その1からお読みください
次の夜から僕は泣かなくなった。
部屋で転んでストーブの夜間の熱湯を足に被り大火傷を負ったと、ともちゃんは話してくれた。
歳は一つ下。
やっとベッドから出る許可がおりて、部屋の中はある程度自由に、部屋の外は看護師の付き添いがあれば出歩けるようになったと言う。
もちろん怪我なので食事の制限は無いからお見舞いのお菓子を沢山持っていた。
せっかくもらったけどまだ食べちゃいけないんだと話すと少し寂しそうな顔をして、毎晩泣いてること知っていたと、何か食べてるところを見てないからきっとお腹が減ってるんだと思ったらしい。
ともちゃんが足繁く僕のベッドに話に来てくれたので寂しさが紛れた。
僕は自分の病気のこと、原因もキチンと先生が話してくれたから知っていたけど虐められていた事が恥ずかしくてとても言えず、スイカを食べすぎてお腹を壊したんだと嘘をついた。
後から親に聞いたが実は全部親同士の話でバレていたらしく、もちろん、ともちゃんにもそれは伝わっていて「優しくしてあげなさい」とともちゃんはお母さんから言われていたらしい。
入院から10日ほどすぎた頃には本の数粒お米の入った重湯と、かすかに匂いがする程度の味噌汁の上澄みが食事に出されるようになった。
#つづく
GRAVITY
GRAVITY1
哲

#その2
#その1からお読みください
部屋は6人部屋で、僕のベッドは入り口から1番遠い窓際。左側のふたつのベッドには真ん中に1年生くらいの男の子、その隣に4年生の男の子。
向かい側は真ん中が空いていて両隣が女の子、みんな年下だった。
女の子のベッド側の壁は1面ガラス張りで、その向こうはナースステーション。常に看護師がいた。
病状とその原因を知ってか知らずか、看護師も女医もみんなとても親切で優しかったことを今でも覚えている。
入院して数日、その夜も声を殺して泣いていると、誰かが布団の中に手を入れた感触があった。
少しして泣き止んだ僕が手が入ったと思われるあたりにそっと手を伸ばすと、そこにはクッキーがふたつ。
絶食中の僕にそんなものを、しかも夜中にくれる大人は絶対に居ない。
布団から顔を出し当たりを見渡すと、向かい側のベッド。足のやけどで入院していたひとつ年下の女の子がナースステーションの明かりの中ニコッと笑い軽く手を振ったのが見えた。
#つづく
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