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保育の仕事に携わって約60年
この間 健常児以外にも
障害を持って生まれた子など
いろいろな子を預かってきました

しかし入園希望を
断ったことはありません
保育は命を預かる仕事です
常に命懸けで臨んできました

それだけに一人の人生が
花開いた時の喜びは
それまでの苦労を
忘れさせてくれるものです

私は一度 大声をあげて
泣いたことがあります

さくら保育園を
立ち上げて間もない頃
骨と皮だけのように
痩せこけた乳児をある事情で
預かることになりました

その乳児を私は
毎晩抱きしめて眠らせ
その子もまた私を
とても慕うようになりました

ところが 年長になった時
その子の父親が突然来て
連れて帰ったのです
親権がある以上
どうしようもありません

体が引き裂かれるようでした
グッと我慢したものの
ついに堪えきれなくなって
我が家に帰り 人知れず
大声で泣いたのです


その子が久々に園に
顔を出してくれたのは
中学生の時でした
以来 時々園を訪れては園児と
遊んでくれるようになりました

さらに時を経て成人した彼から
結婚するので主賓の席に
座ってほしいと連絡が入りました

私は喜んで出席し スピーチでは
私が大泣きした時の話をしました

彼は私の話を
神妙な表情で聞いていましたが
式が終わり皆を見送るや
私に駆けより抱きついて
泣きじゃくるのです

彼の奥さんも泣いていました
長年の胸のつかえが
取れたのに違いありません

いつまでも私の心に残る
さわやかな思い出の一つです

保育の60年を振り返る時
つくづく感じるのは
幼いうちから見るもの聞くもの
触れるものは最高のものを
提供したいという思いです

それは保育の環境だけに限らず
子どもたちに心からの
褒め言葉と最高の愛情を
注いであげることです

そうすれば その子の人生は
必ず豊かになることでしょう

#斎藤公子
#藤尾秀昭
#365人の人間学の教科書
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私はいま創業者の中で
一番興味があるというか
一番おもしろいと思っているのは
本田宗一郎さんですね

その本田さんと話をしたときに
伸びるベンチャーの経営者というのは
どういうタイプかと
聞いたことがあるんです

まず一つは
前へ前へと進む意欲があること

二つは 人の意見を
素直に聴くことができること

三つは
権限委譲が行われているかどうか

四つが
よきパートナーを持っていること

そういうものを持っている人は
伸びるといったんですね
私もそうだと思いますね

それは全部
本田さんがやったことですしね

創業というと革新性とか創造性
なにか派手なものを考えがちだが
そうではなく
大変地道なものなんだと思います

創業というと形のないところに
形を作り出すわけだから
最初は混とんとした
状態にあるのが普通です

それに創業というからには
一人ではできない

数の多少はあっても何人かの人間が
集まって何かをやるわけです

混とんとしたなかでそれをやる

だからリーダーには
ある程度のカリスマ性がないと
うまく引っ張っていけない

しかしこのカリスマ性というのは
神がかったものなどではなく
地道なものだと思うんです

先にあげた四項目を
着実にこなしていること
これがカリスマ性だと思うんです

それと会社はいつも
創業時の状態ではないわけです
変わっていく

それに応じて
創業者も変わっていかなければ
会社は伸びていかない

多くの経営者がこの変化の点で
失敗していますね

本田さんはこの変身を見事に
やってのけられた例だと思う

本田さんも創業時はカリスマだった
強烈なカリスマだったから
みんなついてきたんです
だがある時期から脱カリスマを
試みられて それに成功している

本田さんはホンダにとって
カリスマではなくなっている
これは見事だというほかはない

本田さんがカリスマから脱し
創業時に強力に引っ張ってきた
本田さんのカリスマ性から
解き放たれることで
ホンダは大きく伸びた

極端にいえば大企業の経営者は
統率力だけ持ってればいい

じゃその統率力とは
何かということになると
一つは先見性といいますか
大局をつかむ力

それからもう一つは
懐の深さだと思います

そういうものを持たないと
創業者としては大成しない
というのが結論です

#城山三郎
#365人の人間学の教科書
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私にとって見える世界が
失われたことは世界が失われた
ことに等しかった

ただただ ベッドの上に縮こまって
何も考えたくなかった

1年6ヵ月の間
私の巣ごもりは続いた

そんな生きているのか
死んでいるのか
わからないような私の魂を
呼び戻すきっかけとなったのは

かつて私が愛読していた雑誌に
ある評論家が
お書きになった 次の一文だった

"野球の試合にダブルヘッダーが
あるように
人生にもダブルヘッダーはある"

最初の試合で負けたからといって
悲観することはない

一回戦で素晴らしい試合ができた
のなら その試合が素晴らしかった
分だけ もし惨敗して悔しい思いを
したならば 悔しかった分だけ
二回戦にかければいい

その二回戦は それまでにどれだけ
ウォーミングアップをしてきたか
によって勝敗が決まってくる "


私の二回戦は
これから始まるのだと思った

一回戦とは違い 目の見えない私で
戦わなければいけない

だが この一年半というもの
二回戦を戦う準備をさせてもらった
もうウォーミングアップは十分だ

いてもたってもいられない気持ちで
東京都の福祉局に電話をかけ
ある心身障害者福祉センターを
紹介してもらった

目が見えなくなって 何から始めたら
いいのかわからない自分にとって
まず最初に必要なのは
一人で歩けるようになることと
点字を読めるようになること…
新しい人生を出発することになった

そうして私の二回戦の試合模様が
一冊の本にまとまった…
結婚し 子供を産み 盲導犬と共に
暮らす奮闘ぶりが描かれている

こうして
あの空白の一年半から
立ち直ってみて思うのは
生きる勇気を失わない限り
私たちはたいていの困難を
乗り越えていくことができる
ということである

不幸のどん底にいるときには
どこまでも奈落の底に落ちて
いくのではないかと思えてくる

だが それをこらえて
じっと痛みを耐えていれば
かならず明るい光は見えてくる

その一つひとつの困難を
乗り越えていくことが生きると
いうことなのではないかと思う

そして
一試合目がうまくいかなくても
人生にはときに
二試合目が巡ってくるのだ

そのためのウォーミングアップを
続けていくことこそが
次の一歩を踏み出すために
もっとも大切なことなのだと思う

#郡司ななえ
#365人の人間学の教科書
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少し損をして
毎日生きてごらんなさい

この間 会社を途中で辞めた方の
奥さんが相談に見えたんです

そのご主人はお好み焼屋さんを
始めており 話を聞いてみると
やっぱりご主人は儲けたいという
気持ちがとても強くあるんです

元々会社で幹部だったことと
理系の人だから 現実が解らず
人に与えることができない

少し 他の店よりも与えることを
やってごらんなさいと言うけど

"与えたら損をしてしまう"と言って
与える意味を解ろうとしない

"そんなことをしたら
店はどんどん赤字になってしまう
だからちょっとでもいいから
稼がないと…それが商売だ "
という考えが強いとのことです

だからお客様に喜んでもらうより
自分が儲けることが
優先してしまうのでしょう

それを感じとったお客さんは
どんどん少なくなりますね
だから経費ばかりかさんで
結果 毎日お客に対する不満で
怒り顔で店に立つので…

結局 店を閉めるかどうかという
ところまで来てしまっていると

こうなってくると もう生き方の
根本から間違いなんですね

人に与えることを先にしないで
人から先にもらおうとして
どうしてお客さんが
あなたの店に来ますか…

よその店より工夫があり
おいしくて値段も安かったら
それは来てくれるでしょう

しかし他店よりもまずくて
肉や海老も小さくって
100円高かったら来てくれません

お好み焼きが好きで好きで
お好み焼きを始めたのなら
食べてもらうことが
嬉しくてたまらないはずです

そんな安らぎを
お客さんに与えてくれる店であれば
人々は絶対来てくれるんです


ちなみに これは十何年か前に
小倉で始めた食べ物屋さんの話です

最初に私のところに来た時は
その人は やはり儲けたい儲けたいと
言っていました

ところが 一緒に断食したりして
"商売は一割損をして生きていく"
という生き方に還るならば
必ず繁栄する

という法則に納得を得たのです

その人は大きな海老等を他店よりも
たくさん盛るようにしたんです

その食べ物屋さんはとにかく
いつもお客さんが多くて その街で
一番の繁盛店と言わるように…

それでいて
拡大をしないことを心掛けていると

いろんな意味で
少し損をすることを覚えてゆくと
対立と競争から抜け出し
生きてゆくことが楽になりますね
 
#北川八郎
#365人の人間学の教科書
#致知
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