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アッチャー
最終話 ステキな男
那覇空港はバカンスを終えた観光客で混み合っていた。待ち合わせに指定されたカフェで冷たいものを飲んでいると、少し遅れて依子がやってきた。依子は笑顔を崩さず、昨夜の急な予定変更をふたりに詫びた。
依子は何かを探るように圭司の顔をじっと見つめ、それから視線を淳子に向けた。淳子は依子に軽く首を横に振って見せた。その途端、姉妹は同時にプッと吹き出し、キャハハと高い笑い声をあげた。いったい何事かと圭司はふたりの顔を交互に見た。
「あたしの勝ちってことよね」
親指を立てて拳を握り、依子は満面の笑顔でガッポーズを見せた。
「ねえ、まけてよ」
淳子は悔しげに口を尖らせて、圭司を睨んだ。イタズラっぽい笑みがまじっている。
「そうね。あたしの方がよく知ってるんだから、半額でいいよ」
淳子は千円札を5枚数えて依子に突き出した。
「なに?何か賭けでもしてたの?」
圭司は、説明を求めた。
「ごめんね。昨日の夜、急に思いついてさ。圭司くんがペンションで淳子に手を出すかどうか、賭けてたの。手を出さない方に、あたしは賭けたわけ。だからあたしの勝ち」
顔が真っ赤に熱くなるのが、圭司は自分でもわかった。
依子は屈託のない笑顔のまま、淳子から勝ち取った5枚の千円札を、扇のようにひらひらとあおって見せた。
手荷物検査場の前まできて、依子は圭司の手を取り握手をした。
「圭司くん、今回はありがとう。いい夏休みを過ごせたわ。
…圭司くんはやっぱり変わらない。キミはステキな男だよ」
依子の手に力が入った。淳子も目を細めて微笑んでいる。
検査機を通り抜ける前に、淳子が振り向いて手を振った。
「また来るから。今度は三人でゆっくりしようね」
圭司は笑顔を作って手を振り返した。
ふたりが搭乗口へ向かう雑踏に消えていくのを見届けてから、歩きだした。
「なんちゅう姉妹だ。もう勘弁してくれよ」
ジーンズのポケットに突っ込んだものが嵩張って邪魔になっているのを思い出し、それを素早くゴミ箱に捨てて、圭司は空港ロビーの出口に向かった。
(おわり)
©️2024九竜なな也
最後まで読んでくださりありがとうございました。

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