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アッチャー

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掌編・不純情小説【舐めた野郎だ】後編
#note より

二人の結婚が決まった頃、俺は瑞穂に案内されて、リッキーのバーに行った。瑞穂はこの人が結婚相手だと、俺を彼に紹介した。この時俺は、リッキーの礼儀正しさに好感を持った。そしてカクテルを彼に作ってもらったが、瑞穂に促されて、長居はせずにカズの店に移った。

結婚後、瑞穂は会社を辞めて俺の事務所を手伝うようになった。
ある日突然、リッキーが事務所を訪ねてきた。当然俺は、資産運用の相談に来たのだと思った。
ところが、彼を出迎えた瑞穂の目は怒りの色を帯びている。
リッキーは事務所の中に入ってきて、応接セットのソファに腰をおろした。ひと通り事務所の中を眺めて、俺に笑顔を見せた。俺は彼の態度に苛立たしさを感じながら

「ご用は?」

と問うた。彼は口をひらいた。

「融資の相談に乗ってくれると、瑞穂さんから聞いたものですから」

「ちがうわ。そういう仕事ではないって言ったはずよ」

瑞穂が口を挟んだ。事前に彼から瑞穂に問い合わせがあったのだろうか?
俺は資産運用の専門家、つまり投資の案内はするが、金貸しではない。そのことを説明すると

「えー、そうだったんですね。すみません、勘違いしてました」

リッキーはにやけ顔のまま、事務所を出ていった。帰り際に一度振り返ったが、瑞穂は奥に引っ込んでいた。

今夜カズの話を聞いて、瑞穂が以前つき合っていた妻子ある男がリッキーだということを俺は確信した。

手放した女の夫がどんな事務所を構えているか覗きに来たのだろうか?
それとも、瑞穂はオレの女だったんだと、俺に仄めかして優越感を味わうために来たのだろうか。
あのゲス野郎。舐めた奴だ。
                 (了)
©️2024九竜なな也
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