名前を呼ぶ声｜闇バイトダメ・創作家の投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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闇バイトダメ・創作家

2025/10/27

名前を呼ぶ声

また通知音が鳴った。「グループに招待されました」見覚えのない名前のメッセージアプリグループ。誰かのいたずらかと思い、すぐに退出しようとしたそのとき、画面に現れた最初のメッセージに、指が止まった。「久しぶりだね。あのときのこと、覚えてる？」下の名前だった。しかも、SNSにも使っていない、家族とごく親しい人しか呼ばない呼び方。背筋がすっと冷たくなる。誰？誰が、なんで？グループには100人のメンバーがいた。アイコンは風景や動物、名前も偽名のようなものばかり。誰が誰なのか、まったくわからない。なのに、全員が既読をつけていく。誰も発言しないのに、誰かが見ている。見られている。「あのとき、駅前のあそこにいたよね」「あの店に行ってたよね」「まだあそこに行ってるの？」心臓が跳ねた。確かに、そんな日があった。でも誰にも話していない。日記にも書いていない。あれは、自分の中だけの記憶のはずだった。スマホを握る手が震える。誰かが、自分を見ていた？ずっと？監視されていた？グループを退出しようとするたびに、新しいメッセージが届く。「話したいだけなんだ」「あなたのこと、ずっと見てきた」「誤解しないで。これは“守るため”なんだよ」守る？誰から？何から？正体不明の人たちからの次々送られてくるメッセージでその夜はよく眠れなかった。スマホの電源を切っても、目を閉じるたびに、あのメッセージが浮かぶ。翌朝、駅のホームで、ふと視線を感じて振り返る。誰もいない。けれど、確かに“見られている”感覚だけが残る。怖くなりグループを退会した。その後なぜか、スマホが壊れてその時のことも忘れていた。今でも怖い出来事として思い出す。誰かに相談したくてもスマホも壊れて証拠が残っていない。「もしかして、思い込みでは？」そう言われるかもしれない。“統合失調症”という言葉が頭をよぎった。でも、違う。これは幻じゃない。あの名前、あの出来事、誰にも話していない。ネットで調べると、“集団ストーカー”という言葉が出てきた。陰謀論と一蹴されることもある。でも、似たような体験を語る人は少なくない。監視されている感覚、知られているはずのない情報、無言の圧力。それは病気の症状なのか、それとも、現実にある“何か”なのか。スマホを見つめながら、静かに思った。「もしこれが本当ににあることなら、何のために？」――もしこれが、ただの妄想だとしたら。なぜ、グループは実在したのか？なぜ、誰も知らないはずの名前や記憶が、そこにあったのか？病気なら、説明できるだろうか？それとも、私たちが見ないふりをしている“現実”が、そこにあるのだろうか。私は今も、彼らの正体が誰なのか、なんなのか、わからないままだ。ただひとつ、どうしても頭から離れない出来事がある。数年前、派遣バイトで知り合った人に「ご飯でも行きませんか」と誘われ、軽い気持ちで応じたことがあった。けれど、待ち合わせ場所に現れたその人は、食事の途中で突然、宗教の話を切り出した。宗教についての資料を差し出され、「あなたのためを思って」と言われた。私は丁寧に断った。けれど、あのときの違和感は、今も胸に残っている。あれは偶然だったのか？それとも、あの出会いが、今の“何か”とつながっているのか？あの人が、どこかで私の情報を渡したのではないか？そんな疑念が、じわじわと心を侵食してくる。気持ち悪い。吐き気がする。でも、確かめる術はない。ただ、ひとつだけ確かなのは、あれ以来、私は人を信じることが怖くなってしまった。