酒臭いじいちゃん、オフィスを徘徊

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まる

2024/05/30

職場の同僚じいちゃんがヨタヨタと歩いている。

『大丈夫ですか？』と聞くと、
「ふぅい～～～…」と変な息を吐く。

うっわ！

くっさ。

酒臭っさ！

『二日酔いですか』
「仕事なんだよォ！！」

もう何言ってんだこの人。

「おれの大切な仕事なんだよぉ」

話を聞くと、祭りの準備らしい。
そういえば来月は祭りがある。

シンママさんと「たこ焼きの屋台が来るんですよ」なんて笑っていたが、
じいちゃん達に「屋台はメインじゃねえ！」と怒鳴られた日が記憶に新しい。

「祭りの準備で忙しくてよぉ
　これが飲まずにいられるかってんだ」

ヤケ酒だろうか。

「前夜祭と当日と後夜祭とするんだ」
『前夜祭？』

祭りは再来週。まだまだ先じゃないか。
というか前夜祭や後夜祭なんて聞いたことがない。

「おれ達だけが前祝いと打ち上げをやってんだよ！！」

それただの飲み会やってるだけじゃん。

「この辺には飲み屋がねえだろ？」
『無いですね』

我が地元には飲み屋がほぼ無い。

車で30分ほど運転すれば飲み屋がある場所まで行けるが…
それはつまり誰か（ほとんどの場合は家族が）運転手をしなければ飲めない。

「だから誰かの家で飲まなきゃならねえ」
『確かに誰かの家なら運転手がいなくてもいいですね』

「誰の家でよ？」
『誰って…』

「いつも組長の家でやってたんだがよ
　組長の奥さんが腰やっちまったから無理なんだ」

組長て、どんな役職だよ。
ヤ〇ザかよ。
（やばそうなので深くは触れないことにした）

「代わりに飲み会の出来る家を探してるんだがよ、
　みんなに断られちまったのよ。
　どの家もかかぁが反対するんだ」

そりゃそうだ。
誰だって、家でそんな飲み会は嫌に決まってる。

ただでさえ酔っぱらいがたむろするには嫌なのに、
熱燗したり、おつまみを要求されるのが目に見えている。

「だから飲み会が出来そうな家を毎一軒ずつ回ってんだ」
『はぁ？』

「一軒ずつ、近所の良さそうな家でかる～～く酒を飲む。
　前夜祭とかで使えそうな会場かどうか見極める」

はぁああ？？？

「だから前夜祭のための前準備で、最近毎日飲み歩いてんだなぁこれが」

うっわ…
おっそろしい…
【突撃！隣の晩ごはん】的な地獄じゃん…

「これが大切な仕事なわけよ。
　地域の祭りを根絶やしには出来ねえのさ」

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