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サディステレス

サディステレス

【8】
秘密の部屋へ

舞台を終え、控室に戻ると足が震えていることに気づいた。
緊張で力が抜けたのかと思ったけれど、違った。
全身が心地よい余韻に包まれ、まるで夢の中を歩いているようだった。

「……すごかった」
小さな声が漏れた。

先輩が静かに微笑む。
「どうだった?」

「最初は怖かったのに……
でも、見られるたびに安心して、どんどん幸せになって……
もう一度やりたいって、心から思いました」
その言葉を口にした瞬間、自分がもう完全に虜になっているのを悟った。

「やっぱりね」
先輩は頷き、少しだけ声を潜めた。
「実はね……この倶楽部には、もうひとつ特別なお部屋があるの。
本当は上級者しか入れないんだけど……あなたなら、素質がありそうだし特別に招待してあげる」

耳元でそう囁かれると、胸が熱くなる。
素質――その言葉に、なぜか誇らしさを覚えた。

「……見てみたいです」
勇気を振り絞って答えると、先輩は満足そうに微笑んだ。

案内された扉をくぐると目の前に広がったのは異世界のような空間だった。
高い天井から落ちる柔らかな光。
壁際に並ぶ木馬や十字架、磨かれた革の鞭や美しい仮面。
それらはただの道具ではなく、まるで美術館に展示された作品のように荘厳な存在感を放っていた。
(怖い……でも、なんて綺麗……)
私は立ち尽くし、息を呑んだ!

「ここが、この倶楽部の“もう一つの顔”」
隣で先輩が静かに語り始める。
「実はね……私はこの部屋の“住人”なの。
もう少し遅い時間になると、選ばれた参加者たちが集まってくる。
そして、この部屋にあるすべての道具を使って頂き、私が彼らをおもてなしするの」

私は驚いて先輩を見つめた。
普段は凛としたOLの先輩が……ここでは舞台に立ち、参加者全員から何かをされておもてなしする側の存在だというのか。

「怖がらなくていいわ。これはただの遊びじゃない。
ここで行われることはすべて“表現”であり、“儀式”であり、ひとつの芸術なの」

先輩の声は澄み切っていて、誇りに満ちていた。

「次はね……ここで私の全てを見て欲しいの」

先輩がこちらに振り返り、真っ直ぐに私を見つめた。

「舞台で縛られるあなたも美しかった。
でも今度は、この部屋で“私”が作品になる番。
あなたには、そのすべてを見届けてほしい」

胸が熱くなり、呼吸が浅くなる。
普段の職場では決して見せない、先輩のもうひとつの顔。
その姿を目撃できるのは、選ばれた人だけ。
(見たい……。
先輩が、この部屋でどう輝くのか。
どうやって、この数々の道具で何をされどんな姿を晒し、作品になるのか――)
怖さよりも強い期待が、体の奥から溢れ出す。

私は震える声で答えた。
「……はい。
次は、先輩を見させてください」

先輩の瞳に柔らかな光が宿り、満足げに微笑む。
「いい子ね。じゃあ……今夜、特別に見せてあげる」

その言葉とともに、この秘密の部屋が持つ本当の意味――
そして先輩の真実の姿を、私はもうすぐ目撃するのだと悟った。
胸は不安よりも期待で震えていた。
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