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あお🫧
何も言わずに蝉が鳴く。夏が心に踏み込んでくる。
机の上には、飲みかけのコーヒー。
微かな香りが、過ぎてゆく時間だけを教えてくれる。
夏の暑さが、こんな心ごと全部、焼き尽くしてくれたらいいのに。
居間のカーテンが、ゆっくりと膨らんで、しぼんで、また膨らむ。
風があるのに涼しくない。熱を運ぶ、名ばかりの風。
まるで、もう届かない言葉のようだった。
あの星空を、
並んで見上げたあの夏を、私はまだ忘れられない。
汗も笑いも、全部、もう過去形になってしまったのに。
つかのま、涼菓を口にふくむ。
じゅわりと溶ける冷たさが、やけに甘くて切ない。
あなたを思い出すたびに、言葉にできなかった想いが溢れそうになる。
いくつもの太陽が、まぶたの裏に焼きついている。
あなたを知らなかった頃の私は、
水たまりに映る空ばかり見ていた。
いまはただ、あなたが映らない場所ばかり探している。
夏の朝が、どうしても苦手になった。
最後に見た横顔と、あの言葉が、夏空に溶けて残っている。
風が吹いても、忘れられない痛みがある。
きっと、まだ心が手放せていないのだ。
冷たくなったコーヒーの入ったカップを持ちながら、ただ、窓辺に座る。
夏はいつも、懐かしさのかたちをしてやってくる。
そして決まって、あなたを連れてくる。
ガラス越しの世界が、少しゆれている。
陽炎かもしれないし、心の温度かもしれない。
思い出は、
風鈴の音のように、心の中で鳴り続ける。
昨日と同じようで、少しだけ違う今日。
焼けた地面、草いきれの匂いが、なぜか心を落ち着かせてくれる。
あなたのいない世界で、“今”の匂いに包まれて、ようやく諦めて少し呼吸ができる。
旅に出ようか、それともこの部屋にこもろうか。
どちらを選んでも、夏は等しく、あなたの記憶を連れてくる。
あついあついなつがきた。
#あついあついなつがきた
#ことばりうむ納涼詩会
#夏のあいうえお作文2025

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