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アクア−Devil

アクア−Devil

モンスターが、じーっと置物を凝視している。
その置物とは、じつにいかめしい親父の像。
木製の顔はひび割れ、漆喰の目はまるで現世を見下すかのように、虚空を睨んでいる。

「……人形のフリしてんのか?」
モンスターの片方が、かすれた声でつぶやく。
「ば、バレてる……?」と、もう片方が震える。
いや、親父の像は動いてなどいない。
だが、その存在感が、まるで生きているかのようだ。

「やばいですよ、バレちゃいますよ……」
「我のがんぜんに、世にも奇妙な人形、あり同士よ……」
誰の声か、頭の中に響く。
まるで、親父の像そのものが語っているかのよう。

すると、空から金色の光が差し込み、
「きょうらいせり! いかにも御意、持っていくべし!」
と、天の声が轟く。

モンスターたちは、ぎょっとして互いを見つめ、
やがて、重々しくうなずいた。

「我の心中……これ、使える……」
と、ひとりが呟き、
「よし、運べ!」と、もうひとりが号令をかける。

彼らは親父の像に鎖を巻きつけ、
「うおおお、重いぞ!」
「ずっずっ、同士よ、がんばれ!」
「何じゃこりゃ、めちゃ重いぞ!」

木像は意外にもずっしりと質量を持ち、
階段を下りるたびに、床がきしむ。
モンスターの足取りはふらつき、汗が滴る。

「この像……ただの置物じゃねえ……魂が宿っとる……」
「うるせ! 黙って引け!」

やがて、地下室の鉄扉の前までたどり着く。
バタン! と、音を立てて扉が開き、
彼らは像を闇の中へと引きずり込んだ。

扉が閉まる。
静寂が戻る。

だが、ほんの一瞬——
鉄扉の隙間から、
親父の像が、ぎろりとこちらを睨んだ気がした。

……いや、気のせいだ。
きっと。
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モンスターが、じーっと置物を凝視している。