通勤途中、知らない駅で迷子になるサラリーマンの話

06:00に目が覚めました。
そして歯を磨き前日にはアイロンがけしたスーツを気分良く羽織って玄関を出ました。

そこに知らない駅のホームを繋ぐ連絡通路があったのです。

振り返ると玄関の扉だけ残して、連絡通路の延長でした。
連絡通路の窓ガラスから覗く空は薄暗く、
ホームの電光掲示板に
「準急西武新宿行き　18:35」と書いてあるのを見て、恐ろしくなり一度玄関の鍵を開けて家に戻りました。
家の壁掛け時計は27日08:02分でした。

混乱した私は玄関の扉をもう一度開くと、
緩い坂に秋の葉が吹かれて冬に至る前触れの匂い、
キンモクセイの香りがしました。

私は玄関の扉に鍵をして、スーツを掛けてもう一度鼻炎薬を飲んで布団に倒れ込みました。
深呼吸しながら自然に目を閉じてみました。
「なんだこれは」と。
目を開けて上半身だけ起こして部屋の左右を見渡しましたが、
自分のいつもの部屋です。
ただ掛けていないはずの布団が温かく、
自身が根巻き姿であるのを見て、
慌てて時計を見ると27日の06:00時。
「妙にリアルな夢だったな」と思いながら2時間掛けてスーツを着て玄関の扉を開くと、
不快な臭いがする真夏の渋谷駅前だったのです。
私は心底恐怖しましたが、同時にまだ夢の範疇なんだと安堵もしました。
行けるものなら行ってみたかった渋谷ですから、
お財布の中身を見て、18万円と自分名義の普段使っている擦り切れ傷のある緑のクレジットカードがある。

「どうせ夢だし、服でも買うか。」と渋谷に乗り出したところで目が覚めました。

私は駅と思われる夕方のホームのベンチに、スーツで横になっていました。
「コレじゃあ植木等の歌だよ」と思って起き上がると、
シームレスに自分の部屋になりました。
夕方近い27日の16:34分。
「完全に遅刻した！」と思って立ち上がり急いで会社に連絡しようとスマートフォンを立ち上げたところ、
そこには夕方の自分の部屋が第三者視点のゲームの様に映っていました。
「オーマイ…」
とまだ夢なんじゃないか？
「本当は遅刻どころか無断欠勤という事態にはなっていないじゃないだろうか」
私はスマホに自分を映している大元のドローンがあるのかと振り返ったり寝そべったりしましたがそこには実家の団地の畳でした。

55回ほどこの様な事を繰り返したのち本当に目が覚めました。