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きつね

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#花彩命の庭

少女が一歩踏み出すと、森は静かに息を吹き返した。

足元の苔は淡く光り、まるで星屑を踏んでいるみたいだった。木々の間を流れる光は、朝露のようにきらめきながら揺れている。風が通るたび、葉ずれの音ではなく、澄んだ鈴のような音が響いた。

「……ここ、なにか変……」

少女がそうつぶやいた瞬間、光の粒が集まり、目の前に小さな生き物の形を作った。
透き通る羽を持つ、光の精霊だった。

「やっと来たね、森の“呼び声”に応えたひと」

精霊の声は、直接心に響く不思議な音だった。

少女は戸惑いながらも、胸の奥が温かくなるのを感じた。怖さよりも、懐かしさの方が強かった。

「この森……私を呼んだの?」

「うん。森は今、弱ってる」

精霊は羽を伏せて言った。
光の森は、もともと“願い”から生まれた場所だったという。人の希望や祈りが力となって、この森を輝かせていた。でも、時が経つにつれて、人々は願うことを忘れ、森の光も少しずつ失われていった。

「だから、君を選んだ」

「私を……?」

少女は無意識に、胸のペンダントに触れた。
それは昔、誰かにもらった覚えのある、小さな光る石のついたペンダントだった。

精霊は、そっと微笑むように光を揺らした。

「それは“光の種”。君の中の願いと共鳴するもの」

ペンダントがやさしく輝き始め、森の奥へと光の道がのびていく。

「進んで。森の中心へ」

少女はごくりと息を飲み、光の道に足を踏み出した。

不思議と迷いはなかった。

胸の奥で、なにかが目を覚ましたような気がしたから。
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