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メーアさん
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タマザラシちゃんです。存在が癒し
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自認ゲイのファンボ


オレンジ
回答数 31>>

やぎ
「禁煙」
煙草をやめたきっかけは、白い猫だった。
ある朝、アパートの階段でその猫が僕の前に座り込み、じっと僕の胸ポケットを見つめた。まるで中身を知っているみたいに。
そのポケットには、いつも煙草が入っていた。コーヒーと同じくらい、当たり前の存在だった。僕は猫をどかそうとしたが、猫は動かなかった。その代わり、ひどく静かな声で言った。少なくとも僕には、そう聞こえた。
「それ、もう要らないでしょう」
猫はそれ以上何も言わず、姿を消した。煙草は残った。でも、火をつける理由が見つからなかった。
禁煙を始めてから、世界の隙間が目につくようになった。五分の空白、手持ち無沙汰な指、夜の長さ。煙に変換されていた時間が、元の形を取り戻したようだった。
三日目の夜、夢の中で猫が再び現れた。今度は空き瓶の中から出てきた。瓶のラベルには何も書かれていない。ただ、ふたが外れていた。
「外に出た力は、もう戻らない」
猫はそう言って、尻尾を振った。
一週間後、僕はまだ吸っていない。特別な達成感はない。ただ、世界が少し広くなった気がする。
煙草は瓶の中の魔法だったのだろう。外に出た今、僕は自分の手で、その後始末をしている。それだけの話だ。

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